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100人100通りの働き方を目指す。サイボウズの、現場における障がい者支援と「アクセシビリティ」の取り組み

2020.01.23

 サイボウズ株式会社(本社:東京都中央区)は、20年以上に渡って日本人のワークスタイルの変化に寄り添い、ビジネスに必要な機能をまとめたグループウェアやクラウドサービスを提供している。一般的に「働き方改革」が注目される前の2005年から、同社は「働き方の多様化」に着手。離職率激減と売上増加を実現し、現在、働き方改革の成功企業の一社として注目されている。
 
 本記事では、働き方改革の最前線企業である同社の、グループウェアやクラウドサービスを活用した働き方改革の現状や導入事例について紹介する。

■「アクセシビリティ」とは?

 インターネットを利用するすべての人が年齢や身体的制約、利用環境などに関係なく自由にWebにアクセスできること、そしてコンテンツや機能を制限なく利用できること、そして、そのアクセス性を確保することを「Webアクセシビリティ」と言う。
 
 日本では2016年4月に「障害者差別解消法」という法律が施行され、Webサイトのアクセシビリティ対応が求められている一方、民間企業についてはあくまで努力義務となっているため、優先度が下がっている現状だ。

 しかし、同社では、アクセシビリティエキスパートの小林 大輔氏が中心となり、「チームワークあふれる社会を創る」という理想のもと、誰にでも使いやすい製品や、誰にとっても障害のない環境づくりに取り組んでいる。

■障がい者への共感と尊重が、100人100通りの働き方につながる

■障がい者への共感と尊重が、100人100通りの働き方につながる

 小林氏は2012年にサイボウズに入社し、プログラマーとしてキャリアをスタートした。2014年に弱視の社員による製品のユーザビリティテストを行ったところ、文字が薄すぎて見えず、アイコンに見えるものを勘でクリックするという現実を目の当たりにした。これは、自社のチームメンバーですら満足に製品を扱えていないという事実であり、「チームワークあふれる社会を創る」という同社の理想とは遠くかけ離れたものだった。

 そこで、小林氏は「障がい者のための対応」に取り組みはじめた。しかし一般的に、ハンディキャップを抱える方専用のデザインは、あくまで「特別対応」になってしまうため、ハンディを持たないユーザーにとってのメリットは少ない傾向にある。そのため、プロジェクト発足当初は、チームが一丸となって「アクセシビリティ」を実現するというよりは、どこかまとまりを欠いた取り組みになってしまっていた。

 しかし、一方で、障がい者だけではなく、置かれた状況や環境によっては誰にでも「使いづらさ」や「働きづらさ」といった問題は起こり得る。

 例えば、特に視力には問題を抱えていない人でも、利用端末や太陽光下の環境では、アプリケーションの操作に不自由さを感じるということは誰しも経験があるのではないだろうか。つまり、「社会で最も大きなミスマッチを経験している人」である障がい者のことを考えて、使いやすいデザインをつくることこそが、誰にとっても、いつでも、どこでも使いやすいデザインにつながるのだ。

 この気付きから、同社にとっての「アクセシビリティ」とは、障がい者や高齢者の方が製品やサービスを問題なく利用できるように「特別対応」をするのではなく、「アクセシビリティ(Accessibility)」の語源である「Access」+「Ability」という基本に立ち返り、「ユーザーがチームにアクセスできる能力」だと考えるようになった。すなわち、アクセシビリティを確保するということは、「チームに参加したい」というユーザーの願いを尊重し、より高いレベルで実現することなのだ。

■「Alexaスキルアワード2018」ファイナリストの杉崎 信清が入社

■「Alexaスキルアワード2018」ファイナリストの杉崎 信清が入社

 同社は、アクセシビリティへの取り組みを継続していく中で、障がい者の方の声を身近に取り入れていく必要性を感じた。この考えのもと、2020年4月には、筑波技術大学保健科学部情報システム学科を卒業予定の杉崎 信清氏がプログラマーとして入社予定だ。

 杉崎氏は、生まれたときから目が見えないが、パソコン画面の文字情報を合成音声で読み上げるソフトウェアを使い、高校生の頃からプログラミングを行っている。プログラミングのスキルを身につける中で、Amazonの音声サービスAmazon Alexaのスキル(第三者や個人が開発する拡張機能)として『ハノイの塔トレーニング』を開発。スキルの開発力を競うコンテスト「Alexaスキルアワード2018」ではファイナリストに選ばれた経歴を持つ。

 Alexaはクラウドベースの人工知能(AI)による音声認識プラットフォームで、話しかけることで音楽を再生したりニュースや天気の情報を得たりといったことができる。『ハノイの塔トレーニング』は、目で見たり手で動かしたりするのではなく、声のみで「ハノイの塔」のパズルを行うゲーム。ゲームの進行状況を頭で記憶しながら順序だてて進めなければならないという点で、新感覚の脳トレになることを狙ったもので、杉崎氏が日常生活を送る中、物の配置や順序を記憶する経験が生かされて開発された。

 杉崎氏は、アクセシビリティを向上することはユーザの選択肢を増やすことだと考え、使いづらさを解決するためのアプローチに精力的に取り組んでいきたいと考えているようだ。

■「アクセシビリティ」へのサイボウズの今後の取り組み

 「チームに入りたいと願うすべて方がチームにアクセスできる」ことを目指し、すべての開発者が当たり前のようにアクセシビリティの考えを製品に組み込む。そんな環境づくりをサイボウズでは推進していくようだ。

 kintoneやGaroonといったグループウェア製品でも、マウスが使いにくい人のためにアプリ管理画面の一部でキーボード操作を可能にしたり、色覚異常の人でも見やすいグラフデザインを導入するなど、日々バージョンアップを重ねていくとしている。

■まとめ

 障がいやハンディキャップを超え、誰もが利用しやすいWebサイトを作る「アクセシビリティ」。本質的な実現を目指すためには、実際に障がいを抱える人の声が必要とされるようだ。

 一方、企業が障がい者を雇用する上では、さまざまな課題が生じる可能性もある。障がい者への共感と尊重を示す企業が増えることで、それぞれの多様な働き方の実現に向け、一歩前進した社会が実現するのではないだろうか。

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