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完治していないにも関わらず出社を要求する「インフルエンザ・ハラスメント」。職場に感染を広げていく実態が明らかに。

2020.01.24

 2020年1月時点で、インフルエンザの流行はピークに差し掛かっている。そこで、医療法人社団SEC(東京都新宿区)は「2020:仕事とインフルエンザの認識調査」を実施した。

 本調査から、インフルエンザ感染への意識の低さが職場に感染を広げる実態が明らかになった。

■職場でインフルエンザが流行した経験のある人は約8割にも上る

■職場でインフルエンザが流行した経験のある人は約8割にも上る

 「職場でインフルエンザが流行した時の感染者はどれくらいいたか」と質問したところ、「特に流行したことはない」が47人(23%)、「職場の1割以下」が86人(43%)、「職場の2割ぐらい」が38人(19%)、「職場の3割ぐらい」が17人(8%)、「職場の5割ぐらい」が9人(5%)、「それ以上の感染者が出た」が3人(2%)という結果だった。

 多くの人が職場でインフルエンザが流行するという経験をしているようだ。

「一人インフルエンザになると順番にうつっていって、結局全員がかかった。(30代:女性)」「感染者から同心円状に感染が拡大した(40代:男性)」といった意見からも、少人数の感染から職場全体に感染が広がっていることがわかる。

■3割以上がインフルエンザの可能性があっても出社する

■3割以上がインフルエンザの可能性があっても出社する

 「インフルエンザかもしれないと感じた際に出社するか?」と質問をすると、「出社しない(病院に行く)」は132人(66%)、「症状が酷くない場合は出社する」が39人(19%)、「外せない仕事がある場合は出社する」が16人(8%)、「基本的に出社する(昼休みや仕事終わりで病院に行く人も含む)」は13人(7%)となり、意外にもインフルエンザの可能性があっても出社する人が多く、危機感の強い人と薄い人の二極化が顕著な結果となった。

 「体調が悪くなり早退。翌日回復し出勤したが、また時間が経つにつれ体調不良。もう1日同じことが起こり、病院に行ったらインフルエンザだった。(20代:女性)」「発熱が続き病院に行ったら既に治りかけのインフルエンザだった(40代:男性)」など本人は体調不良でも診断を受けず、知らず知らずのうちに感染を拡大させるケースも目立つ。

■気づかず完治前に出社している

■気づかず完治前に出社している

 「インフルエンザにかかったら何日会社を欠勤しますか?」と質問すると、「休まない」が3人(2%)、「1~2日」が12人(6%)、「3~4日」は41人(21%)、「5~6日」が45人(22%)、「それ以上」は2人(1%)となり、「医師の診断に従う」は97人(48%)となった。

 自己判断で出社する人が多く、およそ3割の人が「発症後5日を経過(学校保健安全法)」せずに出社していた。

 「熱が下がった直後すぐに出社し、社内でインフルエンザを流行させた人がいた。週替わりで誰かが休んでいて大変だった。(20代:女性)」「同僚がインフルエンザと診断されたのに、1日休んだだけで平気で出社してきた。席が向かい側だったのでとても嫌だった。(60代以上:女性)」など、たとえ仕事が立て込んでいるとしても、自己判断での出社は周りに迷惑をかけていることがあるようだ。

 また、会社の規定も出社禁止期間が短く設定されていることが多く、本人はルール通り休んでいるにも関わらず、感染拡大の原因となっているケースも見受けられた。

■責任のある立場の人は出社傾向。ただ感染意識の低い人は年齢や立場に関係ない。

■責任のある立場の人は出社傾向。ただ感染意識の低い人は年齢や立場に関係ない。

 「インフルエンザでも出社してくる人はいたか?またそれはどの立場の人か?」を質問すると、「いた」と回答した人は87人(43%)で、内訳を見ると、「社長(経営者)」が4人、「上司・先輩」が59人、「同僚」が45人、「後輩」が21人、「その他」は12人となり、「いない」と回答した人は113人(57%)だった。

 どのような立場であっても無理して出社する人がいることがわかった。中でも、部署やプロジェクトの責任者は、他の人に比べ無理にでも出社する傾向にあるようだ。

 「社長が『マスクを2枚か3枚重ねてつければインフルエンザを他人にうつすことはない』と出勤していた。(30代:女性)」「熱っぽいというので後輩を病院に行かせたら、インフルエンザだった!と会社に帰ってきて報告してきた。うつしてしまうという認識が無いと思った。(30代:女性)」などのように、立場だけでなく罹患後の対応について理解していないケースも見受けられる。

■無理に出社してくる〈無自覚ハラスメント〉

 会社側や周囲は休んでほしいと思っているのに、無理に出社してきて周りに迷惑をかけてしまう例を紹介する。

・納品前に、『休めないから』とインフルエンザにかかったディレクターが出社し、大勢の人が感染して欠勤者が続出。結果、納品も間に合わなくなってしまった。(30代:女性)
・同僚がインフルエンザにかかって出社してて辛そうな顔しながら仕事をしていた時、上司にものすごく怒られて帰らされていた。(30代:男性)
・上司が仕事中に受診してインフルエンザの診断を受けたのに、残務をずっとしていて、なかなか帰宅しなかった。(50代:女性)

■罹患中でも出社要請してくる〈強要ハラスメント〉

 体調不良で完治していないのに、会社や上司が無理にでも仕事をさせようとする例を紹介する。

・インフルエンザで高熱があったのに、人手不足で(資格者最低1人必置義務)出社するように言われ、出社したものの動けずに休憩室で横になっていたことがある。(30代:女性)
・インフルエンザの疑いがある時に、診断が出ることを恐れて病院に行かせてもらえなかった。(40代:男性)
・インフルエンザで休むと連絡してきた人のことを「普通は熱が無いなら出社するだろ」と影で言っているのを聞いてしまって以降すごく休み辛くなった。(30代:女性)

■医療法人社団SECの蓮池院長の解説

 「インフルエンザの感染経路はくしゃみや咳によって飛沫感染することがおもな原因。ワクチンを接種したからといって、100%かからなくなるわけではない。インフルエンザが流行する時期は、ちょうど仕事が繁忙期という人も多く、責任ある立場から『どうしても休めない』という人も多い。気持ちもよく理解できるが、罹患後は職場や人込みに行かないようにすべきだ。『発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(学校保健安全法)』とも言われているが、病状により異なるので、医師の判断を仰ぐといいだろう。予防接種以外では、うがい、手洗い、マスクの着用が予防となる。職場での感染を拡大させないためには、組織全体でインフルエンザに対しての共有認識を持ち、早期対応することが重要だ。」と、医療法人社団SECの蓮池院長は解説している。

■まとめ

 福利厚生充実の一環で、感染力の高いインフルエンザウイルスへの対策として、シーズン前の予防接種を推奨し、社員に費用の一部を補助するなど、インフルエンザ予防に力を入れている会社も増えている。また、一人ひとりがインフルエンザ感染について意識を高めることが、社内パンデミックを防ぐ一番のポイントになるようだ。

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