「企業不祥事と従業員エンゲージメントの関係」を調査 企業のコンプライアンス強化に必要なこととは
株式会社リンクアンドモチベーション(本社:東京都中央区、代表:小笹芳央)の研究機関モチベーションエンジニアリング研究所は、株式会社日本総合研究所と共同で「企業不祥事と従業員エンゲージメントの関係」に関する調査を実施した。
調査概要
■不祥事に関する企業体質評価の概要
日本総研では企業の不祥事を収集し、事案を5段階に分類・評価した上で、その件数や発生からの経過時間を考慮し、企業体質を「重篤」「管理」「注視」の3段階で評価。企業体質評価を「重篤=3」「管理=2」「注視=1」と数字に変換、分析を行った。
■エンプロイーエンゲージメントサーベイの概要
社会心理学を背景に、人が組織に帰属する要因をエンゲージメントファクターとして16領域に分類し、従業員が会社に「何をどの程度期待しているのか」「何にどの程度満足しているのか」の、2つの観点で質問。エンゲージメントファクターには、それぞれ4つ、計64の項目が設定されており、回答者はそれぞれの期待度と満足度を5段階で回答。また、総合満足度4項目(会社/仕事/上司/職場)についても回答しエンゲージメントスコア(ES)を算出する。
■分析対象
2015年1月から2019年5月にエンプロイーエンゲージメントサーベイを実施した上場企業のうち、日本総研による企業体質評価も実施されていた128社
従業員エンゲージメントが高ければ不祥事が減るとは言えない可能性
「企業体質評価、不祥事事案件数とECの相関関係」を調査したところ、相関がないことが明らかとなり、「従業員エンゲージメントが高ければ不祥事が減る」とは一概に言えない可能性があることが伺えた。
満足度向上や制度待遇だけでは不祥事対策は不十分
「エンプロイーエンゲージメントサーベイの総合満足およびエンゲージメントファクターの差分」を調査したところ、「会社満足度」がエンゲージメントファクターのうち「制度待遇」が正の相関関係にあることが明らかとなった。会社満足度が高いほど、制度待遇への満足度が高く期待度が低いほど企業体質評価が悪化し、不祥事の事案件数が多くなることが伺えた。
部下の自立に向けた育成が不十分だと不祥事発生の可能性が高い
「エンプロイーエンゲージメントサーベイの詳細64項目の差分のうち、企業体質評価、不祥事事案件数と正の相関のある項目」を調査。「話題性や知名度」「社会的な影響力」「顧客基盤の安定性」の項目があがっていることから、話題性や知名度があり社会的な影響力が大きく、基盤の安定を想起させる企業ほど、不祥事が起こる可能性が高いと言える。
また、「研修制度の充実度」「部下の強みや持ち味の把握」があがっていることから、教育支援制度は充実していても、部下の自立に向けた育成が十分でないと不祥事が起こる可能性が高いと言える。
会社の一員の自覚があると不祥事発生リスクは低い
「エンプロイーエンゲージメントサーベイの詳細64項目の差分のうち、企業体質評価、不祥事事案件数と負の相関のある項目」を調査したところ「歴史や経緯の共有」、「業界内での影響力」の項目があがり、従業員一人ひとりが会社の一員であることを自覚できていると不祥事に発生リスクが低いと言える。
まとめ
今回の調査結果を受けて、担当者は以下のように結論づけている。
「企業のコンプライアンス強化のためには、従業員一人ひとりが会社の一員であることを自覚し、自立した個として顧客や社会と接続している状態を創ることが重要だ。会社全体の取り組みとして、企業モバビジの浸透や組織文化の共有、風土の改善に着手し、従業員一人ひとりの意欲改革を促すことこそ本質的な解決策である。」
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