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freeeが2022年6月期の決算を発表、売上高は+36.4%の13,987百万円に

2022.09.02
オフィスのミカタ編集部

バックオフィス業務を効率化するクラウドサービスを開発・提供するfreee株式会社は、2022年6月期 第4四半期の決算発表を行った。ここではポイントを絞って決算ハイライトや今期の取り組み、今後の中長期成長戦略などをみていく。

決算概況

freeeは、クラウド会計ソフト「freee会計」「freee人事労務」をはじめ、スモールビジネスのバックオフィス業務を効率化するサービスを開発・提供している。

2022年6月期のプラットフォーム事業の売上は、前年同期比36.4%増の13,987百万円。ほぼ業績予想通りの着地であった。

売上総利益は11,285百万円(前年実績:8,158百万円)。売上総利益率は前年同期比+1.2ポイントの80.7%となり、安定して80%前後の水準を維持している。

一方、調整後営業利益は-2,343百万円で2021年6月期(-2,301百万円)とほぼ同水準に。オフィス移転に伴う二重家賃等のコストが発生したものの、計画対比の採用遅れ、マーケティング費用の調整、オフィス移転費用の減少および売上総利益の改善等によって、業績予想比では217百万円の改善となった。

ARRは+33.6%、有料課金ユーザー数は+29.4%に伸長

ARRは+33.6%、有料課金ユーザー数は+29.4%に伸長

ARR(Annual Recurring Revenue)は、既存事業の成長に加え、2022年6月期期初より連結化した「freeeサイン(旧:NINJA SIGN by freee)」および「Taxnote」の影響もあり、前年同期比+33.6%の15,057百万円に伸長。2022年6月30日にfreeeグループに参画したMikatusを含めたARRは、15,772百万円となった。

有料課金ユーザー企業数は、前年同期比+29.4%の379,404件に増加。その要因として、「freeeサイン」および「Taxnote」の連結化に加えて、個人事業主セグメントを中心に獲得が順調であったことが挙げられる。

個人事業主ユーザーの増加や、「Taxnote」の連結化といったARPU(Average Revenue Per User)の押し下げ要因があったものの、Midセグメント(従業員が20人以上1,000人未満の法人)の順調な成長により、ARPUは39,686円(前年同期比+3.3%)となった。

継続的な解約率改善を実現

継続的な解約率改善を実現

12カ月平均解約率は、全社ベースで1.2%。前年同期比で0.1ポイントの改善となった。法人の解約率は、スモールビジネス向けSaaSでありながら、他のエンタープライズ向けSaaSの解約率と同水準の0.6%に到達している。

これは以下が功を奏した結果だ。

① カスタマーサクセス強化
カスタマーサクセスの人員拡充や、使い方説明動画の拡充

② 統合型ERPとしての利用の拡大
「freee会計」のワークフロー機能や債権・債務管理機能を利用するユーザーや、複数プロダクトを利用するユーザーが増加

③ 年額払い比率の上昇
「freee会計」において、年額払いを選択するユーザー比率が58.8%(2018年6月期)から67.5%(2022年6月期)に増加

幅広いMidセグメントにリーチするプロダクト強化

幅広いMidセグメントにリーチするプロダクト強化

2022年6月期のMidセグメントのARRは、前年同期比+50.5%の5,010百万円を達成。ARR純増額は前年同期比+51.1%の1,680百万円と成長が加速した。その背景として、プロダクトラインナップの充実や営業体制の強化に加えて、幅広いMidセグメント顧客へのリーチを可能にしたプロダクト強化が挙げられる。

① 業種特有のニーズへの対応
・「freee会計」の固定資産管理機能強化により、製造業等の固定資産の多いユーザーや、上場企業・上場準備企業において固定資産管理の利便性が向上
・「freee勤怠管理Plus」のリリースにより、店舗数や拠点数が多いユーザー、組織階層が複雑なユーザーのニーズに対応

② さらなる自動化の促進
・「freee会計」におけるAI OCRの強化により、請求書の詳細情報の推測が可能となったことで、入力作業の大幅軽減を実現。
・クラウド連結会計ソフト「結/YUI」とのAPI連携を開始

③ 企業の資金繰りをサポート
freee独自の審査方法により、成長企業が必要となる最大5,000万円の高額与信を提供。「freeeカード Unlimited」の利用明細を「freee会計」に同期することで、リアルタイムな支出の把握が可能に

「スモールビジネスを、世界の主役に。」に向けた取り組み

「スモールビジネスを、世界の主役に。」に向けた取り組み

「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションとして掲げる同社は、中小企業の経営環境改善のため、以下のような取り組みを行っている。

・起業情報メディアの創刊
「ふつうの人がフツーに起業できる時代、はじまる」をテーマに、起業・開業に必要な情報に特化した雑誌「起業時代」を創刊。起業・開業の際に必要な段取りや進捗管理ができるモバイルアプリもリリースした。

・すべての登記が電子申請可能に
「freee会社設立」において、合同会社設立時に提出する登記書類が電子申請に対応。これによって、すべての書類の申請が電子で完結するようになった。

・日本最大級の会計事務所向けイベントを開催
会計事務所は多くのスモールビジネスにとって重要なパートナーであることから、会計士・税理士とともに会計業界の未来を考えるイベント「freee Advisor Day 2022」を開催した。

・Mikatus社がfreeeグループに参画
2022年6月30日付で、クラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS」を提供するMikatusがfreeeグループに参画。freeeが提供する統合型クラウドERPサービスに、Mikatusが提供する会計事務所向けサービス「A-SaaS」とそのノウハウが加わることで、会計事務所とその顧問先であるスモールビジネスのクラウド化が推進できるようになった。

今後は統合型経営プラットフォーム強化のための投資を加速

今後は統合型経営プラットフォーム強化のための投資を加速

今後の中長期成長戦略において、freeeは「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム」をビジョンに掲げている。その背景には、統合型ERPにより「自動化」「可視化」「スマートで適切なアクション」を実現し、経営のハードルを下げるという狙いがある。

統合型経営プラットフォームを強化するためには、各プロダクトの品質向上および新プロダクト開発に加え、ユーザーネットワーク構築のための早期のシェア拡大が重要であることから、今後双方への投資を加速していく構えだ。

数値面では、2025年6月期末時点で有料課金ユーザー数を700,000件(うち法人250,000件)とし、2027年6月期の法人Net Revenue Retention Rateを110%とすることを目指している。また、それによって2027年6月期には売上高500億円の達成を目指す。

2022年1月に改正電子帳簿保存法が施行され、2024年1月から電子取引データの電子保存が義務化されることや、2023年10月施行予定のインボイス制度が日本のクラウド化を後押しするとみられている。こうした追い風の中、クラウド会計No.1のシェアを生かし、中長期的な成長に弾みをつけられるか、今後に注目だ。