【2023年冬季賞与の支給に関する実態調査】正社員の昨年支給額と比較した増減は「ほぼ変わらない」が69%
株式会社エフアンドエムの中小企業総合研究所では、企業運営に役立つさまざまな研究成果をレポートとして公開している。2024年1月18日に最新レポート「2023年冬季賞与の支給に関する実態調査」を公開した。
調査実施の背景
厚生労働省の調査によると2023年に「1人あたり平均賃金を引き上げた・引き上げる」と回答した企業の割合は89.1%(対前年比+3.4)となっており、ほとんどの企業が賃上げを実施、あるいは実施予定としている。また、一般財団法人労務行政研究所が発表した、東証プライム上場企業の2023年冬季賞与の平均金額は前年比1.5%増の約80万円となっており、こちらも増加している。
賞与は従業員のモチベーションや満足度を高めるための重要な手段であり、人材維持や採用戦略においての役割も大きい。採用競争の激しい中小企業にとって、企業経営の戦略的意思決定には賞与の実態を把握することが不可欠とも言える。そうした背景を受け、同研究所では同社のバックオフィス支援サービス「エフアンドエムクラブ」の会員企業を対象に、今年度の冬季賞与の支給予定に関するアンケート調査を行った。
参照:厚生労働省令和5年賃金引き上げ等の実態に関する調査の概況
参照:一般財団法人労務行政研究所東証プライム上場企業の2023年 年末⼀時⾦(賞与・ボーナス)の妥結⽔準調査
参考:エフアンドエムクラブとは
昨年支給額と比較した増減
本調査によれば、昨年支給額と比較した増減は「ほぼ変わらない」が正社員69%、パート90%で、ともに最多。次に多いのは「2割未満、増額」で、正社員では18%(対前年比6%増)、パートでは5%(同2%増)となっている。また「2割未満、増額」と「2割以上、増額」を合わせた割合は正社員23%(同7%増)、パート7%(同3%増)となっており、少なからず賞与を増額する傾向が増えていることがわかる。
その中でも特に「飲食業・宿泊業」の企業の回答が多くあり、コロナ禍からの回復傾向が見られる結果となった。ただ一方で「2割以上、減額」と回答した企業が正社員4%(同1%増)パート2%(同1%増)となっており、原材料高騰等の影響で業況がひっ迫している企業もあるようだ。
1人あたりの支給額
続いて、正社員に対する1人あたり冬季賞与支給額の調査結果を見ると、21〜40万円が39%(対前年比7%減)で最多、次いで1〜20万円が31%(同7%増)となっている。前年と同様に1〜40万円の間で支給している企業が70%を占めているが、その内訳には変化があることが明らかになった。パートに対する支給額は、0円が50%、1~10万円以下が41%で、前年とほぼ変わらない。
また賞与を支給している企業の平均支給額は正社員27.7万円、パート6.5万円であった。前述した昨年支給額と比較した増減では「ほぼ変わらない」「2割未満増額」の回答が多かったが、全体の平均支給額では前年の調査結果と比較すると減額傾向にあり、正社員は10%減(前年30. 9万円)、パートは3%減(同6. 7万円)となっている。
まとめ
本調査により、中小企業では賞与支給額が減少傾向にあることがわかった。中小企業庁の調査によれば、原材料費やエネルギー費等の高騰を受けて上昇したコストについて、中小企業の約2割は未だ価格転嫁を進められていないことが明らかになっている。このような厳しい状況において、厚生労働省では、生産性向上に資する設備投資を行うとともに最低賃金を引き上げることで「業務改善助成金」として投資額の一部助成を行っている。また、中小企業庁は青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる「賃上げ促進税制」を設けている。こうした支援策を活用して賃金を引き上げ、従業員のモチベーション向上を図ってみてはいかがだろうか。
参照:価格交渉促進⽉間(2023年9⽉)フォローアップ調査の結果について(確報版)令和6年1⽉12⽇
参考:厚生労働省業務改善助成金
参考:中小企業庁賃上げ促進税制














