ファンケルが店舗スタッフの雇用安定化に向けてアルムナイ制度を強化
株式会社ファンケルは2024年3月から、店舗スタッフ退職者のアルムナイ(退職者)採用制度「ファンケルカムバック採用」を強化していることを発表した。
ネットワーク構築と専用応募ルートの新設
同社にはこれまでも店舗スタッフの再雇用制度が存在していたが、退職者とのネットワークは構築されていなかったため、活用が進んでいなかったという。退職者の再雇用には、即戦力人材による雇用の安定化が期待できること、退職者がやむを得ず退職した場合にキャリアの再スタートを支援できることから、企業にも退職者にもメリットがあると考え、今回の強化を決定。
同社と退職者の専用グループSNSを作り、会社情報や採用情報などを定期的に配信することで退職者とのネットワークを構築する。また、退職者専用の応募ルートを新設し、即戦力人材の確保につなげていくという。復職時は原則として退職当時の給与から復帰できることも定めている。
同社は今後、本制度の対象を店舗スタッフに限らず本社従業員にも拡大していく予定だ。
アルムナイ制度が注目される背景
日本では長きにわたり「終身雇用制」が雇用制度の柱のひとつとなっていたが、今これが変容しつつある。厚生労働省の調査(※)によれば、2023年度の入職率は15.2%で、そのうち9.7%が転職による入職だ。いまや新卒から定年退職までひとつの企業で勤める働き方は、主流ではなくなっていると言えるだろう。労働市場の流動化が進むにつれて、アルムナイ制度が注目を集めるようになった。
また、労働人口の減少により優秀な人材の確保が難しくなったことも、アルムナイ制度の広まりに影響していると考えられる。自社での経験を持つアルムナイ人材は即戦力となりやすく、さらに人事に関するコストを削減して採用することが可能だ。
そのほかにもアルムナイ制度は「人脈・取引先の強化」や「組織の活性化」にも効果が期待できる。さらに、出戻りしやすい環境を整備することで、既存社員の働くことへの安心感は向上するだろう。こうした企業が抱える課題と得られる効果への期待から、アルムナイ制度の活用が進められている。
※出典元:令和4年雇用動向調査結果の概況(厚生労働省)
まとめ
アルムナイ人材の活用には、関係を維持するためのコストや、それにあたって徹底した情報の管理などが必要となる。一方で得られるメリットも多く、特に人材不足を課題とする企業においては今後より一層活用が進んでいくのではないだろうか。
アルムナイ人材が復職しやすい企業風土が根付いていれば、既存社員にも安心感を与えることが可能となる。同社の事例も参考に、今後の活用について改めて検討する機会としてみてはいかがだろうか。
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