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アルムナイを活用して退職者を自社の戦力として運用し続けよう!【2024年更新】

2024.02.05

「アルムナイ」の活用が進んでいる。人事担当者だけでなく、企業人の間で広まりつつあり、様々なコミュニティが発足。外資系の企業などでは比較的早くから使われていた「アルムナイ」は、今の人事分野において、重要なキーワードとなっている。

改めて「アルムナイ」の意味や、注目される背景、活用のメリット・デメリットについて、まとめていこう。

アルムナイとは

そもそもアルムナイとは、英語で「学校の卒業生・同級生」を意味する単語だ。そこから転じて、日本では「企業の離職者やOB・OG」を指す言葉として定着した。人事領域で注目されるアルムナイとは、この元社員らを組織化する仕組みを言う場合が多い。企業がアルムナイと定期的にコンタクトを持ち、懇親会を開くなどすることで情報共有の機会を維持し、人材という貴重な経営資源の活用範囲を、現在のみならず未来へと広げていくのが主な目的だ。企業によってはアルムナイ制度という言葉を元社員の復職制度、いわゆる「出戻り自由制度」として定めているところもある。

アルムナイが注目されている背景

アルムナイ制度が注目されている背景には、長きにわたり日本の雇用制度の柱の一つであった、終身雇用制が変容しつつあることが挙げられる。一つの会社で新卒から定年退職まで勤め上げる、という伝統的な働き方が主流ではなくなっており、いまや3人に2人が定年までに一度は転職を経験するとも言われる時代だ。もともとアルムナイは欧米企業から発祥した文化であるが、労働市場の流動化が激しくなったことで、外資系企業を中心に日本でも広がるようになっていった。

日本において少子高齢化が進行し、人口減少社会に突入したことで、優秀な人材の確保が難しくなったことも背景の一つであろう。戦力として未知数の人材をゼロから採用するよりも、ある程度実力と人格を把握できている自社在籍経験者を囲い込んでおく方が効率的だからだ。

アルムナイを活用するメリット

アルムナイを活用するメリットとしては、人事に関わるコストを削減できること、即戦力となる人材を確保しやすいこと、取引先や人脈を拡大できること、外部との窓口を開けることで組織の活性化につながること、などが挙げられる。

採用・人材育成コストの削減

人口減少のステージに移行した日本では、企業が十分な労働力を確保することは、今後ますます難しくなっていく。労働者の絶対数が減れば、それに応じて質の高い人材へのニーズは高まる。そのような人材を正確に選び出し、求められている水準にまで育成するには、高いコストと多大な時間を要する。

そこでアルムナイ制度を活用し、以前に働いていた社員を再び採用すれば、選別と教育にかかる人材育成コストを必要最小限にまで抑えることが可能だ。アルムナイの側からしても、一度勤めて社風への理解や愛着のある企業には出戻りがしやすい。タイミングや条件次第では戻ってくれる可能性が十分にある。ただし、何かしらの不満を社に抱いて退職した層も一定数いるはずだから、その点に関しては慎重な判断が必要となる。

即戦力の獲得

アルムナイ側は企業の風土や習慣を理解しているので、早期に高いパフォーマンスを発揮できる。元社員であれば企業側もその人となりをある程度承知しているので、ミスマッチを減らすための判断材料も、まったく未知の中途採用社員より多くなる。必然的に、その高い能力を効率的に活かせる配置が容易である。

また、アルムナイは既に社内人脈を持っている場合がほとんどだ。他社で知識やスキルを磨き上げた状態で復帰し、元から持っていた人脈の中に溶け込めれば、即座かつ大幅な戦力アップが見込める。

人脈・取引先の強化

単純な離職者の再雇用システムだけに留まらず、「出戻らない」人員を有効に活用できることも、アルムナイの利点の一つである。自社の外部に居続けるアルムナイは、自社のことをよく知り、愛着を持ってくれる人脈であり取引先でもある。良好な関係を維持し続ければ、そこからさらに有力な取引先へつながり、事業の拡大や営業活動に大きなメリットをもたらす。

アルムナイの所属先がそのまま協業先ともなれば、自社の文化や仕事の方式を相手方が熟知しているため、業務を円滑に進められる。他にも、アルムナイが好意的な口コミを広げてくれれば、企業の採用ブランディングにも影響し、結果として優秀な転職者に選ばれる可能性をも高める。

さらにアルムナイは、社内にいるだけではわからない外部の知見を有している。懇親会やアンケートを定期的に実施するだけでも、有益かつ客観的な情報を得て社内へと還元できるだろう。

組織の活性化

再雇用した社員が元の人脈の内部へ戻ることは、組織全体の活性力となり、既存社員、企業それぞれに影響を与える。既存社員には「一度出ていった社員が戻ってきやすい職場」というイメージが芽生え、働くことへの安心感の向上、自社への誇りと愛着感の形成に大いに役立つ。企業の視点に立てば、アルムナイとの関係を良好に保ち続けることで、従業員エンゲージメントを高められる。そうなれば社員の生産性・定着率・モチベーションがアップし、対外的な評価の向上も期待できる。時にはアルムナイが持ち帰ってきた知見を元に、大きな社内イノベーションにつながることもある。外のことも中のことも知っている人材を活用することで、オープンイノベーションとクローズドイノベーション双方の利点を兼ね備えた、より効果的なイノベーションを起こせるのだ。

アルムナイを活用するデメリット

ここまでアルムナイ制度のメリットを書き連ねてきたが、デメリットも当然ある。

第一に、アルムナイにばかり固執してしまうと、アルムナイ以外の客観的な視点が失われてしまうことだ。自社をよく知る人材のみを外部の意見として重用すれば、知らず知らずのうちに視点には偏りが生まれ、自社を知らないからこそのより客観的で斬新な意見を見失い、企業としての成長を止めてしまう恐れがある。

第二に、アルムナイとの関係を維持するためにはコストがかかる。アルムナイの組織化と管理、情報網の構築には相応の投資が必要だ。専用ウエブサイトの管理維持やパーティーの開催にかかる費用は決して少ないものではなく、運用のノウハウがなければ無暗にコストが膨れ上がってしまう。

第三に、情報の徹底した管理が必要なことである。再雇用していないアルムナイは、身内であるようでいて、あくまで外部の人間だ。無制限に情報の共有はできず、情報のレベルに応じて関係部門、あるいは全社規模でのコントロールが必要となる。元身内が相手ともなると、安心感から情報漏洩のリスクは高まってしまう。アルムナイと接する機会を持つ社員には、都度情報管理の徹底を周知するような用心が欠かせない。

アルムナイを活用するポイント

アルムナイを活用するにはどのような点に注意すべきなのだろうか。最も重要なのは、「去る者追わず、来る者拒まず」の精神だ。出入りする社員を快く迎え入れる企業風土が根付いていなければ、組織の活性化にはつながらない。去っていく人材に対しては後顧の憂いなく退けるよう、退職後の支援やネットワークを作り上げる必要がある。社員が離れてからでは遅いため、こういったシステムの構築は事前に済ませた上で周知しておかねばならない。アルムナイを受け入れる際には、既存の社員との関係を確認したり、あらかじめコネクションを構築しておくなどして、入社後に両者が良好な関係を築けるよう配慮すべきだ。

アルムナイで組織の強化を図ろう

アルムナイを活用することは、新たな人脈や取引先との関係構築に役立つ。また、一度離職した者を受け入れることで、優秀な人材を低コストで確保でき、組織全体に様々な活性力を与えるなど、メリットが大きい。アルムナイは日本社会の現状を鑑みるに、採用する価値の高い制度である。その重要性は今後ますます高まっていくことが予想される。ぜひ運用を検討してほしい。