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半数以上の企業で借入金利が前年度より上昇 最多は+0.1%未満に TDB調査

2024.06.27

帝国データバンク(以下:TDB)は、保有する企業データベースのうち2023年度に決算を迎えた98万社の企業財務データ(790万期収録)を対象に、企業の借入金利引き上げに対する影響度について調査・分析を行った。なお、23年度の数値は24年5月末時点で判明した22-23年度決算のうち「無借金」を除く約8万社の企業財務データに基づく速報値としている。調査結果の概要について紹介する。

4万社以上で借入金利が上昇 平均が3年ぶりに1%を超える

4万社以上で借入金利が上昇 平均が3年ぶりに1%を超える

2024年3月に日本銀行がマイナス金利政策の解除を決定。3カ月が経過したが、この間、短期金利が低水準で推移する一方、国内債券市場では長期金利が11年ぶりに一時1%台まで上昇したほか、国内金融機関では預金金利の引き上げといった動きが進んだ。

TDBに調査によれば、企業でも支払利息が増加するなどの影響が出始めており、5月末時点で2022-23年度(4‐3月)の決算が比較可能な約8万社の借入金利を調査した結果、半数超の約4.3万社(54.9%)で前年度から借入金利が「上昇」したことが判明している。「低下」は41.9%で「前年度並み」としたのは3.2%であった。

TDBは金利が上昇した約4.3万社の金利上昇幅について調査した結果「+0.1%未満」の約1.5万社・35.0%が最多で、多くが前年度から微増にとどまったと報告している。一方で「+0.6%以上」となった企業も15.4%となり、上昇幅の平均は+0.23%となった。

続いてTDBは、2023 年度の企業の平均借入金利が1.02%(速報値)と、3年ぶりに1%を超えたことを報告した。

調査概要

調査対象:非営利・特殊法人等を除く国内法人(全国・全業種)
分析企業:長短借入金を含む「有利子負債」と、それに伴う「支払利息」が発生している企業
出典元:企業の「借入金利」動向調査(2023年度決算、24年5月速報値)(帝国データバンク)
※「平均値」は、各項目ともに上下各5%、計10%のトリム平均値を使用
※用語定義 借入金利:有利子負債(銀行等、保険、ノンバンク、個人借入等を含む借入金、社債、CP等の総額)に対する利息の割合

まとめ

帝国データバンクが2024年5月に発表した調査結果(※1)では、金利の上昇による影響が「マイナスの影響の方が大きい」とした企業は37.7%に及んでいる。一方で「影響はない」とした企業も1割を超えており、TDBは「預金金利の上昇による好影響や、企業活動の正常化などプラス面を評価する声も多かった。金利の引き上げに対する中小企業の評価は、業種や企業規模、財務内容によって二分された状態となっている」とコメントしている。

実際には「利払い費用」が膨らむことは明らかで、将来的に企業の収益力が低下する可能性は高いと考えられる。TDBは2024年3月に、金利上昇に伴う企業の借入利息負担を試算(※2)。企業の借入金利が0.5%上昇した場合、利息負担が1社あたり136万円増加し、全体の3.8%が経常赤字に転落する可能性があると指摘している。

TDBはこうした現状について「日銀による金融政策の正常化の流れに伴い、借入金利も市場金利に連動する形で緩やかな上昇傾向が見込まれ、2024年度は利上げ局面に対応できるか否か、中小企業の「経営体力」が試される1年となる」とコメント。物価高や賃上げによる影響も大きい中、厳しい1年となりそうだ。

※1 出典元:金利上昇による企業への影響調査(2024年4月)(帝国データバンク)
※2 出典元:「マイナス金利解除」と金利上昇に伴う企業の借入利息負担試算(帝国データバンク)