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2割超の企業で金融機関から「使途のない借入金」 TSR調査

2024.08.19

株式会社 東京商工リサーチ(以下:TSR)は8月、企業に向けて「金融政策に関するアンケートを実施し、その集計と分析を公表した。低金利時代が転換期を迎えていると言われるなか、「金融機関からの、特に使途がない借入金」について回答を得た調査結果の概要をお伝えする。

調査概要

◆調査期間:2024年8月1日~8月13日
◆有効回答:3432社
◆調査方法:インターネット調査
◆出典元:2024年8月「金融政策に関するアンケート」調査(株式会社 東京商工リサーチ)

企業にとって金融政策の影響は?

TSRが今回の調査実施に至った背景には、日本銀行の政策金利引き上げがある。日本銀行は7月31日、金融政策決定会合で政策金利の0.25%引き上げを決定。マイナス金利解除やイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の撤廃を決めた3月から、およそ4カ月での追加措置の決定は、為替や株価に大きな影響をもたらした。大手行も本決定を受け、9月2日から短期プライムレートを1.475%から1.625%へ引き上げるという。

TSRは他の金融機関でも引き上げの動きがみられることから、長く続いた低金利時代が転換期を迎えたと解説している。こうした動きを受けて実施した本調査では、使途のない借入金を返済する意向を示す企業が多い。TSRは日銀の政策金利引き上げが貸出金利に波及した場合、企業貸出の一部が返済される可能性があると指摘。預貸率や資金利益など、金融機関にも影響が及びかねないとして、影響を慎重に見極めながら進める必要性について言及した。

2割超で「特に使途がない借入金」 何%金利が上がれば借り入れをやめる?

「金融機関から調達している特に使途がない借入金は全体の何割程度ありますか?」の問いに対して、「すべてに使途がある」と答えた企業が79.07%だった一方、「使途のない借入金がある」企業も20.9%あったことが判明。中には全額「特に使途のない借入金」と答えた企業も4.5%あったという。

TSRでは「使途がない借入金がある」と回答した人を対象に「(現状よりも)何%の金利上昇で、特に使途のない借入金を返済、もしくは折り返し(約定返済後の再調達)での借入をやめますか?(択一回答)」と質問。その結果、「0.1%上昇でやめる」が8.6%(52社)、「0.3%上昇でやめる」が24.1%(145社)、「0.5%上昇でやめる」が25.5%(153社)で、6割近くが返済の意向を示した。一方で「0.5%上昇でも継続」という回答回答も4割を超えた。

なお、「0.5%上昇でも継続」と回答した企業の業種別(45分類、回答母数5以上)で、最も比率が高かったのは「飲食業:62.5%(8社中、5社)」だったことも報告されている。

まとめ

本調査では、貸出金利が0.5%上昇すれば6割近くの企業が借入金を返済すると回答。一方で飲食業を中心に、約4割は0.5%上昇でも特に使途のない借入を継続するとの考えを示している。

TSRは予期しないキャッシュフロー悪化への備えを意識していると推察した上で「貸出金利は中長期的に上昇することも想定され、企業も目先の利率上昇に捉われない財務戦略が求められる」と解説している。金融政策に対する企業のスタンスの、一端が垣間見える調査結果と言えそうだ。