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賃上げ実施率は8割超も、中小企業に「賃上げ疲れ」か 規模による格差広がる TSR調査

2024.08.21

株式会社 東京商工リサーチ(以下:TSR)は2024年8月1日~8月13日に、2024年度 の「賃上げに関するアンケート」調査を実施し、その結果を公表した。84.2%の企業が賃上げを実施し2年連続でコロナ禍前の水準を越えたという、今回の調査結果の概要をお伝えする。

調査概要

◆調査期間:2024年8月1日~8月13日
◆調査方法:インターネットによるアンケート
◆有効回答:6899社
◆出典:2024年度の「賃上げ」率 最多は「5%以上6%未満」 実施率は84.2%、中小企業は「賃上げ疲れ」も(東京商工リサーチ)
※本調査では、賃上げ実体を把握するため「定期昇給」「ベースアップ」「賞与(一時金)の増額」「新卒者の初任給の増額」「再雇用者の賃金の増額」を賃上げと定義。また、資本金1億円以上を「大企業」1億円未満(個人企業等を含む)を「中小企業」と定義

賃上げ実施率は2年連続でコロナ禍の水準超え 大企業と中小で実施率に差

賃上げ実施率は2年連続でコロナ禍の水準超え 大企業と中小で実施率に差

TSRによれば、2024年度の賃上げ(実施を含む)は、84.2%の企業が実施。定期集計を開始した2016年度以降、最大だった2023年度の84.8%には届かなかったものの、コロナ禍前の水準を2年連続で超えたことになるという。TSRでは高い賃上げ率の推移について、物価高やコロナ禍からの企業業績の回復が背景にあると分析している。

企業規模別の実施率を見ると、大企業が94.0%と前年度から4.1ポイント上昇したのに対し、中小企業では82.9%と前年度から1.3ポイントのマイナス。規模による差は11.1ポイントに拡大し、TSRでは中小企業に「賃上げ疲れ」がうかがえるとしている。

「ベースアップ」実施が初の6割台に 賃上げ率は?

「ベースアップ」実施が初の6割台に 賃上げ率は?

「賃上げを実施した」と回答した企業にその内容を尋ねると、最も多かったのは「定期昇給」の74.2%。次いで「ベースアップ(61.4%)」「賞与(一時金)の増額(38.5%)」「新卒者の初任給の増額(25.0%)」となった。「ベースアップ」は3年連続の上昇で初の6割台だという。TSRは、コロナ禍以降は先行きを見通せない状況で企業は賞与の増額で一時的な賃上げに対応する傾向にあったが、物価高を背景に、実質賃金マイナスが26カ月連続となったなか、徐々にベースアップによる賃上げが浸透しつつあると見ている。

まとめ

TSRは、今回の調査の発表に際して2024年1-7月の「人件費高騰」倒産が60件(前年同期29件 ※1)と大幅に増えている点にも触れつつ、 「人手不足が深刻さを増すなか、安定的な賃上げ原資の確保に向け、生産性の向上と同時に適正な価格転嫁の実現も急がれる」としている。

中小企業における賃上げについて、日本商工会議所・東京商工会議所が実施した調査では、2024年度に賃上げを実施した企業のうち「防衛的な賃上げ」としている企業が約6割に及ぶことが報告されている。防衛的な賃上げは人材確保の面で必要な取り組みである一方、資金繰りへの影響も想定される。TSRも示しているように、適正な価格転嫁の実現や生産性の向上が、中小企業の課題と言えるだろう。

※1:株式会社 東京商工リサーチ発表
※2:「中小企業の賃金改定に関する調査」集計結果(日本商工会議所・東京商工会議所)より