給与テーブルを策定している企業は約9割も、全社に公開しているのは約4割 リクルート調査
株式会社リクルート(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:北村吉弘)は「企業の給与制度に関する調査」を実施。同社では調査の背景を「賃上げやジョブ型人事(職務給)への移行といった政策がうたわれる昨今、特に正社員の基本給の金額はどのように決定されるのか、管理職・非管理職それぞれの実態を把握するため」とし、給与制度やその運用課題を明らかにした。
※本記事内での給与制度は、あくまで各企業の自社制度の呼称を用いており、等級の有無などの具体的な定義によって分けるものではない
調査概要
調査方法:インターネット調査
調査対象:等級制度や人事評価制度、給与制度の策定・整備に関する業務に責任者もしくは中心的な立場として関わっている方
有効回答数:3062
調査実施期間:2024年3月
調査機関:株式会社マクロミル
出典元:企業の給与制度に関する調査2024(株式会社リクルート)
※%を表示する際に小数第2位で四捨五入しているため、差分や合計値において、単純計算した数値と一致しない場合がある
基本給の構成要素「職能給」制度が最多 制度ごとの違いは?
本調査において「正社員の基本給の構成要素のうち、一番比率が高いもの」を尋ねたところ、管理職・非管理職ともに最も多かったのは「職能給」制度となったが、設立年数や株式公開状況など、企業の属性によって導入している給与制度には違いがあることがわかった。
また、給与制度について複数の要素を取り入れている企業は、管理職(66.3%)、非管理職(51.2%)ともに半数を超えており、より多角的に基本給を決定しようという試みがうかがえる。
さらに本調査では、基本給の決定時に考慮する項目について、どの給与制度であっても3割以上を占める項目はないことを報告。給与制度の呼称は同じでも、期待や実績など考慮する項目はさまざまである可能性を指摘した。なお、前期(直前または間もなく終了する査定期間)の成果や実績ではなく、当期(現在またはこれから迎える査定期間)に関する期待や役割を基に基本給を決定する企業が約8割を占めていることも明らかになった。
約9割が給与テーブルを策定も10社に1社は基本給の決定に「明確なプロセスはない」と回答
続いて本調査では、給与テーブルの策定・公開状況について質問しており、約9割の企業が給与テーブルを策定していることを報告した。給与テーブルを全ての従業員に公開している企業は4割を超えていた一方で、従業員には公開していない企業は約16%。給与テーブルを策定していない企業と合わせると4社に1社程度が、従業員は基本となる給与額や昇給額がわからない状態にあることがわかった。
基本給の決定にあたって実施している制度や取り組みとしては「目標管理制度」「自己評価制度」「期末面談」が上位に。一方で「特に明確なプロセスはない」との回答も一定数寄せられており、10社に1社程度の割合であったことが報告された。
なお、最高評価査定時の昇給幅は「2%未満」が5割超で、「5%以上」は2割超であった。基本給決定時の考慮項目別に比較すると、前期に関する成果や実績を考慮する企業で昇給幅が大きいという。同社は「メリハリのある給与水準を提示するためには、当期への期待だけでなく、前期の実績も含めた多角的な評価を行う必要があると考えられる」との考察を示した。
給与制度運用の課題については、管理職では「年功的な運用から脱却できていない」と答えた割合が最も高く、非管理職では「評価者によって評価結果にバラつきがある」が最多だという。
まとめ
ジョブ型人事への移行に注目が集まる中、給与制度運用の課題からは、制度の見直しに時間がかかっている可能性や、評価者の観点の統一が進んでいない状況がうかがえる。
適正な評価や賃金は、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上において重要な要素となる。本調査で明らかになった実態や課題も参考に、給与制度や人事評価制度、雇用制度の見直しを検討してみてはいかがだろうか。