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「企業」「地方自治体」「大学」の人材確保に関する実態 日本能率協会調査

2025.03.31

一般社団法人日本能率協会(会長:中村正己)は、人材の確保が、日本全体の組織に係る課題であると認識しているという。そこで、目的が異なる組織である「企業」「地方自治体」「大学」それぞれの人事部門における経営課題について、横断調査(産業間比較調査)を実施。人材の確保状況、人材確保への取組み、組織・人事領域の課題を比較し、その違いを明らかにした。

※地方自治体の学校教員、大学での大学病院の医師看護師は調査対象に含んでいない

調査概要

調査時期:
<企業>2024年9月13日〜11月30日
<地方自治体>2024年12月20日〜2025年3月10日
<大学>2024年12月20日〜2025年3月10日
調査対象:
<企業>JMAの法人会員ならびにサンプル抽出した全国主要企業の経営者 計5074社
<地方自治体>全国の都道府県、市区町村の人事部門(一部、企画、財政部門)1788団体
<大学>全国の国立、公立、私立大学の事務局長 793校
出典元:調査・研究(一般社団法人日本能率協会)

組織ごとの「人材の確保状況」における特徴

組織ごとの「人材の確保状況」における特徴

同協会はまず、人材の充足・確保状況(「充足している」+「確保できている」の計)について、大学が充足している状況にあることを報告。さらに、組織別の採用と離職の状況について、組織毎の特徴があるとして、以下の通り解説している。

<企業>
「採用ができて離職率も改善傾向にある」が3割で「採用ができず離職率が悪化傾向にある」も3割となっており、大企業と中小企業での2極化が顕著になっていると推察。

<地方自治体>
「採用ができず離職率が悪化傾向にある」が6割弱となっていることから、新卒一括採用の売り手市場下で、企業に流れる傾向にあると推察。また、離職率の状況が最も悪いことも特徴であり、公務員にも転職や流動化が起きているとみられている。

<大学>
「採用ができて離職率も改善傾向にある」は4割で、最も人材確保状況が安定している結果となった一方で「採用はできているが離職率は悪化傾向にある」も3割となっている。

組織ごとの「組織・人事領域の課題」の特徴

組織ごとの「組織・人事領域の課題」の特徴

続いて同協会は、それぞれの組織における組織・人事領域の課題について調査。企業は、「次世代経営層の発掘・育成」が3割で1位となっており、同協会は持続的な経営と成長という中長期的な視点で取り組んでいると推察している。

また同協会は、大学及び地方自治体について上位課題で同じ傾向がみられたことを報告。1位は「社員・職員の心身の健康管理(ハラスメント、メンタルヘルス含む)」で、地方自治体では6割を超えたという。さらに「労働時間の適正管理・削減」も企業と比較して高く、人材不足のなか、超過勤務が削減できない状況に陥っているとの考察が示された。また「効果的な組織体制の設計」「人事・評価・処遇制度の見直し・定着」も企業と比較して高く、特に大学では3割を超えたことが判明した。

さらに地方自治体特有の特徴として、企業及び大学と比較して非常に低い項目が2点あったことが報告されている。1点目は「経営戦略と連動した人材戦略の策定と実行」が1割未満であること、2点目は「組織風土改革、意識改革」が企業及び大学より10ポイント近く低くなっていることだという。同協会は特に「組織風土改革、意識改革」について、地方自治体の1位の課題である「社員・職員の心身の健康管理(ハラスメント、メンタルヘルス含む)」に影響を与えると指摘。個別対応に追われ、課題として取り上げられていない点に注目した。

賃金見直し・非金銭的報酬向上を全組織が重視

賃金見直し・非金銭的報酬向上を全組織が重視

次に同協会は、人材確保や従業員の動機づけにつながる総合的報酬(トータルリワード)の実施状況について調査。企業、地方自治体、大学共通で【非金銭的報酬】の各項目の実施率が高いことに注目した。特に「ワークワイフバランスの改善」「働きやすい仕事環境づくり」は、共通して実施率が高いという。

また【金銭的報酬】【非金銭的報酬】それぞれで、企業、地方自治体、大学で実施状況のばらつきがみられることについても触れ、過去からの水準、法制度、経営環境の変化が異なることが影響しているとの考察を示した。それぞれの特徴は下記の通り。

<企業>
下記の項目について実施率に高い傾向がみられた。

【金銭的報酬】「福利厚生制度の見直し・拡充」「ジョブ型、スキルベース型等の人事制度改訂による若手中堅社員の賃金見直し(上昇)」「『役職定年制度廃止』や『定年延長、定年廃止』によるシニア社員の賃金上昇」

【非金銭的報酬】「多様な働き方の導入・拡充」

<地方自治体>
下記の項目について実施率に高い傾向がみられた。

【金銭的報酬】「ジョブ型、スキルベース型等の人事制度改訂による若手中堅社員の賃金見直し(上昇)」

【非金銭的報酬】「成長・育成の実感」「効果的・効率的な業務推進」「多様な人が活躍する職場づくり」

<大学>
18歳人口減少という業界全体に影響する重大な経営環境の変化への対応が優先され、職員への総合的報酬まで取り組めていない場合が多いとの推察が示された。

まとめ

同協会の横断調査により「企業」「地方自治体」「大学」それぞれに異なる「組織・人事領域の課題」があることが判明した。一方で、賃金の見直しや非金銭的報酬向上については、全組織が重視しているという。

給与や非金銭的報酬を向上させる取り組みが、人材確保・定着において欠かせないものとなっていることが示唆されたと言えるだろう。自社における取り組みの参考にしていただきたい。