【第2回】いまさら聞けない総務のあれこれ!? シリーズ~原状回復ってどんなルールなの?~
前回の第1回では工事区分(A工事、B工事、C工事)の基本的な理解ができました。今回はその流れに沿って、総務として知っておくべき原状回復の基本的な常識を整理します。
まずは工事区分でいうと原則B,C工事は原状回復の対象です。一般的に賃貸住宅でも理解されているとおり原状回復とは一言で言えば「入居時の状態へ戻すこと」です。ただ注意が必要なのは、住宅の場合とオフィスの場合は多少考え方が違う点です。
住宅の場合は一般的には自然劣化や摩耗などによる償却には原状復旧義務はなく、例えば壁への傷は修理する必要あるが、自然劣化はそのままで放って退去して良いのが通常ですね。
一方でオフィスに関しては契約によって多少は違いますが、基本的には貸事務所における床、壁、天井、照明の交換、鉄部の塗装などの原状回復費用は自然損耗かどうか関係なく、すべて借主負担となります。
これは、住宅と異なり、借りる方によって、事務所は使い方がまったくわからないため、原状回復費用を借主負担とする考え方があるからです。
C工事に関しては、具体的には「床から天井まで」綺麗にし、間仕切り壁はすべて取っ払い残った壁へきれいな壁紙を貼り直す、、くらいにざっくり理解していれば総務としては十分です。
ただ実際には天井内に追加した空調機、床下の配線や分岐回路などC工事の対象であったものはすべて原状回復義務の範疇となります。
アクセスフロア上のカーペットは特殊なものを利用しない限りはビル標準のケースが多いですが、退去する際にはそれらも原状回復として新品のカーペットへ取り換える必要あります。
B工事に関しては、全部原状回復しなくとも良いケースが多いです。
例えば増強した電源設備や自動ブラインドなど、オーナーさんと合意した場合は、原状回復せずに済むケースもあります。その場合の判断基準(win-winの合意基準)はビルへの「付加価値」があるかどうかです。この辺の交渉は総務部としての腕の見せ所です。
またもし次のテナントが決まっていて、そのテナントが「このまま変更工事だけして使いたい」と要求した場合は、いわゆる「居抜き退去」が可能となり、原状回復のための工事費が不要となり経費削減や資産除去財務をPLへ戻せる(営業外利益など)に大きな貢献をします。
総務としてはその辺の財務の基本知識を抑えて移転プロジェクト全体のPL(損益計算書)をマネージし経理と連携することも必要です。
原状回復に絡む、総務が持つべき基本的な財務知識
前述のとおり、工事区分や原状回復の話になると総務としてある程度の財務知識が必要になってきます。
原状回復義務は特に賃貸契約で入居時に合意するものであり、会計上は将来的に退去する際の「資産除去債務」となることが確定しているので、単年度での損益計上を避けるため入居時から毎年分割で損益計上する会計手法を取る必要が出てきます(国際会計基準IFRSの流れも含み)。
この辺は総務としては経理と連携取って事前に確認しておくと、移転プロジェクトの際などBefore & AfterのPL動きが予測できます。
例えば原状回復工事にて工事業者へのキャッシュは出るにしても会計上(PL損益)のインパクトがあるのかないのか、または場合によっては損益計算上は「利益」計上となるケースもあります。(いわゆるWrite back) それらは経営マターですね。
総務として予実管理や毎月の請求書の支払いなどのオペレーションのキャッシュ管理だけではなく、財務3表の基本的な理解、特にバランンスシート(B/S)と損益計算書(P/L)のお金の動きイメージを持ったうえでプロジェクトを経営マターで実践することが重要です。
次号第3回〜「総務が絡む財務3表」の基本知識〜へ続きます
<金 英範 氏:その他コラム記事>
【第1回】いまさら聞けない総務のあれこれ!?シリーズ~工事区分って何でしたっけ?~
【第3回】いまさら聞けない総務のあれこれ!?シリーズ 〜「総務が絡む財務3表」の基本知識〜
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