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【リモートワーク下における活力ある職場づくり】チームワークは土台づくりから

2022.09.28

前回までは、「マネジャー対メンバー」の一対一での対応についてお話ししてきました。その核心は「マネジャーとメンバーである前に、人と人としてのコミュニケーションを楽しんでほしい」ということです。リモートワークになり、メンバーと接する機会は目に見えて減っています。貴重な接点を活かすうえでも、マネジャーの方々が予めメンバーとかかわる際の姿勢を固めておいていただきたいと思います。
さて、今回のテーマは「チームワーク」です。第1回でお話ししたように、リモートワークが増えた職場においてもっとも失われたものが横のつながりです。メンバー同士がつながる機会が減る中で、どう考えていけばいいのかを見つめてみたいと思います。

さて、今回もエピソードから見てみましょう。

エピソード “業務分担したら、つながりも分断された”

今回の舞台は、あるメーカーの商品マーケティングを担うチームです。メンバーは5人、全員が入社3~5年目と若手です。商品ごとの販促策のコンセプト原案づくりから営業への発表・共有、施策の実施支援までが仕事です。

コロナ禍と同時に原則リモートワークとなったので、これまでの案件ごとに担当者をアサインしていく方式から、商品ごとに担当者を明確に決めるようにしました。業務分担を明確にしたこともあり、比較的順調に業務は回っていました。

想定外のことは、メンバー同士の関わり合いが減ったことです。これまでなら、メンバー同士で自然と“あの案件のこと教えて”とか、“あの資料みせて”といった関わりや、納期が遅れそうになったらお互いのフォローなどがあったのですが、そのような動きがみられなくなりました。そして、そのしわ寄せがすべてマネジャーに来たのです。お互いの案件の状態がわからないので、マネジャーとの1on1で他の人の状況を伝えたり、状況を共有したりしないとなりませんでした。それだけでも大変でしたが、頭が痛いのは、メンバー同士の不満や文句を聞かされたりすることでした。「Aはちゃんと仕事をしているのですか?」が一番多い不満でした。Aさんは入社3年目でこの部署に異動してきたばかりの人で、以前から業務の進め方が多少おぼつかなく皆さんにとっても不安の種だった人です。

マネジャー・メンバー、それぞれの立場に立って考えてみましょう

このエピソードでは、これまで行われていたメンバー同士のフォローが減り、負担がマネジャーに集中しています。

メンバーの立場に立って考えたときに、何を感じられるでしょうか?

やはり、リモートワークになったことで、“他のメンバーが何をやっているか見えない”、かつ、“声をかけるタイミングがない”ということでしょうか。私がメンバーならあまり他の人のことに意識・関心が向きません。在宅で自分の担当業務を進める限り、他の人がどうしていようとあまり関係ありませんので、不満をマネジャーに発することもないでしょう。そうやって考えると、このメンバーはなぜ不満を口にしたのでしょうか?もしかしたら、他の人はどうしているんだろうかという興味や一人で業務を進めることへの不安の表れかもしれません。

では、マネジャーはどうしたらいいのでしょうか?

先程感じたことは、正しいかどうかは分かりません。でも、今までなら不満に感じていた事が、実は不安の表れであり、実はメンバーはお互いに関心があるかもしれないと感じられるようであれば、そこを信じて関わってみるのはいかがですか?

エピソードの顛末

まず取り組んだのは、全員が集まる時間を作り、お互いの案件の進捗状況などを共有したことです。それだけでもメンバー同士の関わりが生まれるようになりました。各自の案件の進捗状況が共有されるようになり、資料の共有なども行われるようになりました。ただ、まだお互いの案件にアドバイス・フォローするという状態ではありませんでした。

そこで思い切って、Aさんの担当商品の販促策に関する営業へのプレゼンについて、その資料とプレゼンの内容をメンバーみんなで考えてほしいと全員に依頼してみました。(このような仕事は、これまではすべてマネジャーが担当していました。)

反対されると思っていましたが、メンバー全員が快諾してくれました。

その日から、メンバー全員がオンラインで時間を作ってプレゼン内容やその発表の仕方・話し方を考えるようになりました。お互いの案に厳しい意見を伝えたり、なかなか上手くプレゼンできないAさんにも厳しい指摘をしたりとこれまでとは打って変わった雰囲気で進んでいきました。見ているうちに、企画を立てるのが上手な人、資料づくりが上手な人、重くなりがちなミーティングのときに皆を盛り上げるのが上手な人など、これまで薄々感じていたメンバーの持ち味に改めて気づくこともできました。Aさんからの申し出でメンバーには内緒でプレゼンの練習に付き合いましたが、周りのメンバーにこれ以上迷惑をかけたくなかったようで、Aさんの向上心というか、諦めない思いにも気づくことができました。

結果、プレゼンもそれなりに形になったのですが、それよりも、メンバーもお互いの持ち味を感じられたようで、その後も他のメンバーの案件に対してアイディアを出しあったり、プレゼンも自分たちで実施しようと提案してくれたりと、全員で動いてくれるようになりました。

さて、このエピソードから何を学びますか?

リモートワークが増え、チームワークづくりは本当に難しくなりました。それでもこのエピソードのようにチームワークを上手く作れた職場もあります。そのポイントは何でしょうか?

情報共有の機会を創る、みんなが関わるような仕事機会を任せる・・・今回、マネジャーが行った“行為”はそれになりますが、単にその行為をやればいいというわけではなく、その手前の姿勢にポイントがあります。

① マネジャー自身が、チームワークがある職場を欲する・志す
メンバーからでた他のメンバーへの不満を、文字通り不満と捉えるのか、交流できていない不安と捉えるかによってその後の対応は全く異なります。その分かれ目はマネジャー自身がチームワークある職場を志しているかどうかに尽きるでしょう。チームワークを作りたいとも思っているからこそ、メンバーの一言に反応できるということです。

② マネジャー自身が、メンバーの交流を楽しむ・味わう
マネジャー自身が、プレゼンが上手くいくかどうかよりメンバーの持ち味を味わったり、練習に付き合ったりと一緒になって楽しんでいる様子が目に浮かびます。マネジャー自身が交流を楽しむ姿勢で接しているので、メンバー同士もお互いの考え方・持ち味を味わうことができたのでしょう。

③ メンバーの交流の欲求を感じたら即対応する~機会はいくらでもある
リモートワーク時代となり、これまでのように何かあったらすぐに顔を合わせて、という対応はなかなか取れません。その点ではチームワークづくりは非常に難しくなったように思います。一方で、このエピソードのようにマネジャーが意識すれば実は機会はまだまだあります。

以下に、私が実際にお聞きしたマネジャーの方々の実践事例を掲載しておきます。参考にしてみてください。

・メンバーと1on1をしているときに、別のメンバーのことについて話してくれたら、まず“他の人のことを良く見ている”とほめる。その後、話に上がった人にもフィードバックしてあげる。続けていると、メンバー同士で話し始めるようになった。
・月2回ほど出社日を作り、その日のランチはみんなで一緒に行って雑談することにした。メンバーからは好評で“ちょっとしたことで電話やメールしていいのかがわからなかったので、こういう場が欲しかった”と言われた。
・Teamsのチャネルに業務用とは別に雑談チャットをつくって、とにかく何でも書き込めるようにした。
・“いいこと報告チャット”グループを作って、どんな些細なことでもいいので良いと思った事を報告してもらった。それをみたメンバー同士で賞賛しあったり、アドバイスしあったりし始めた。
・オンラインミーティングの最初の30分はメンバーに内容・進行をすべて任せた。“全員が参加できることをやる”ことを唯一のルールにしたら、ゲームをやったり真面目な討論になったりと担当するメンバーによって内容が変わるのが、個性が出ていてまた面白い。

④ 徐々にチームワーク機会の難易度を高めていく
最初から「Aさんのプレゼン資料とプレゼン力向上」を依頼していたらメンバーは賛同したでしょうか?おそらくNoでしょう。“それはAの仕事!”といった反応が返ってきたと思います。情報共有から始めていったことで“一緒にやるのは面白い”とチームワークの効力感を再実感し、“もっと難易度の高いテーマに取り組んでみたい”と感じ始めたタイミングだったので賛同が得られたのだと思います。

⑤ チームワークは土台づくりから
いきなり重い荷物は載せられません。まずは土台を作る事が大事になります。
下図では、チームワークの段階を3つに分け、その内容をまとめてみました。

この図に照らしたときに、皆さんの会社・職場のチームワークはどのレベルにあるか、一度確認してみてください。

こういう環境変化の時代です。お互いが感じていることを話し合える、レベル3のチームワークを目指して取り組んでみてください。