【人事部向け保存版】「介護離職」を防ぐため、介護の相談はまずここへ!目的別・介護相談窓口一覧
従業員から介護について相談があったとき、すべて社内で対応できることは理想的です。その体制を構築している企業もありますが、全体から見れば少数派。介護保険制度は専門知識がないと理解が難しく、総務・人事だけで正しく回答できないことも多々あるでしょう。専門家ではないためすべての相談に的確な回答をすることは困難です。そのため、必要に応じて外部の専門機関に繋ぐことも役割の一つかと思います。今回は介護に関連する相談窓口についてシーン別にまとめてみました。ぜひ参考にしてみてください。
介護全般の相談ごとは役所の窓口へ
「介護サービスの利用方法」や「要介護認定の申請」など、介護に関する相談をしたいとき、真っ先に思い浮かべるのが役所の窓口だと思います。全国の市区町村には介護保険課や高齢者支援課といった窓口があるので、まずは役所か後述する地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。
役所は介護保険料の納付や、負担軽減制度の申請といったお金に関する相談や手続きもできます。相談内容によっては関係機関に繋いでもらえるので、介護に関する総合相談窓口と理解しておくとよいでしょう。
地域包括支援センターは最も身近な介護の相談先
介護の相談先を調べると必ず登場するのが地域包括支援センターです。地域包括支援センターは、行政から委託された事業者が運営する公的機関で、地域に住むすべての高齢者を相談対象としています。中学校区にひとつの割合で設置されているので、役所よりも身近な相談機関といえるでしょう。要介護認定の申請や介護サービス利用の助言など、役所に行かなくてもこちらで対応できます。
社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーといった専門職が在籍し、介護や医療、高齢者の暮らしの不安に関する相談だけでなく、高齢者の権利擁護や虐待防止、成年後見制度の活用支援など多岐に渡ります。近年は介護離職を防ぎたいという相談者も増加しているようです。離れて暮らす親のことを相談したい場合は、親の住所地にある最寄りのセンターへ行きましょう。「住所地 地域包括」でネット検索すればすぐに見つかります。電話だけでなく対面の相談も実施していますが、事前に予約しておくとスムーズです。
厚労省「全国の地域包括支援センター一覧」
高齢者を支える貸付制度、後見人については社会福祉協議会へ
社会福祉協議会(社協)は地域福祉の推進を図る非営利の福祉団体のことです。全国に支部があり、保健・福祉などの専門職や行政機関、ボランティア、地域住民などにより構成されています。
社協では「日常生活自立支援事業 」というサービスがあり、判断能力の衰えた高齢者の生活相談や金銭管理、福祉サービスの申し込みや契約代行、公共料金の支払いなどを支援しています。さらに低所得者や高齢者、障がい者を経済的に支えるため「生活福祉資金貸付制度」という制度もあります。また、認知症により判断力、理解力が衰えた方のご家族に成年後見制度の利用支援なども実施しています。ほか、車イスの貸し出しなども行っているので、緊急的に必要となった場合は相談してみるとよいでしょう。
全国の社会福祉協議会一覧
入院中の場合は医療機関の相談窓口へ
一定規模の医療機関には「医療相談室」や「地域医療連携室」、「退院調整室」といった名称の相談窓口があります。社会福祉士や看護師などの資格をもった医療ソーシャルワーカー(MSW)が在籍し、入院時だけでなく退院後の生活についても相談することができます。
一般的に高齢の患者は退院後の介護生活に備えて、入院中に要介護認定を申請することも珍しくありません。MSWは行政とも連携しているため、要介護認定の手続きなども代行してくれることがあります。また退院後、在宅復帰するうえで不安なことや、どのような介護サービスを利用するべきか。あるいは介護施設の入居に必要な手順なども相談してみるとよいでしょう。
介護施設探しは役所やポータルサイト、老人ホーム紹介センターへ
高齢の家族が入居する介護施設を探す場合は次のような方法があります。介護施設は大きく公的施設と民間施設に分かれます。特養(特別養護老人ホーム)や老健(介護老人保健施設)などの公的施設を探す場合は、役所の窓口や地域包括支援センターを訪ねましょう。施設名称や連絡先などが記載された冊子や一覧表を提供しています。ただし、月額費用などが明記されていない場合もあり、詳しい内容は各施設へ問い合わせましょう。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの民間施設を探す場合は、介護施設のポータルサイトなら24時間いつでも検索できます。私の会社では「LIFULL介護 」というサイトを運営し、条件に合う施設を簡単に見つけられます。
また、民間の「老人ホーム紹介センター」では提携する多くの介護施設を紹介しており、条件に合う施設の情報提供や施設見学に同行するサービスなどを提供しています。いずれも無料で利用できるところが大半なので活用してみましょう。以前にまとめた「役所も教えてくれない!介護施設の正しい選び方 」も参考にしてみてください。
介護者同士の交流・情報交換は介護者の会や認知症カフェへ
要介護者を支える家族は、介護の悩みを相談する相手が身近におらず一人で抱えやすい傾向にあります。介護は長期間に及ぶこともあり、精神的、肉体的、金銭的な負担が大きいもの。終わりの見えないなか一人で悩みを抱え込んでしまうと、うつ症状や家族の虐待に発展する可能性もあります。
そうなる前に参加したいのが「介護者の会」や「認知症カフェ」です。「介護者の会」は介護をする家族が集い悩みや体験を共有したり、専門職や先輩介護者に相談をしてアドバイスを求めたりすることができます。「認知症カフェ」はオレンジカフェとも呼ばれ、認知症当事者とその家族が気軽に参加できるカフェのことです。認知症の人も家族も分け隔てなく、お茶を飲みながら交流や相談する場となっています。スターバックスコーヒーで開催したときも話題になりました。
介護者の会も認知症カフェも、市町村のHPや地域包括支援センターで開催日程を掲示している所があります。「地域名 介護者の会」で検索してもヒットします。同じ悩みをもつ人同士の交流の場をぜひ活用してみてください。
介護離職防止の相談は労働局へ
「家族が倒れてしまい、仕事を辞めて介護に専念するしかない―。」実際にこうした事情で退職する人が年間10万人にも上ります。このような場合に一定期間休業できる制度が介護休業です。また、要介護認定の申請や病院の付き添いなど、単発の休みに充てられるのが介護休暇になります。これらは介護離職防止策の一つで、各都道府県の労働局が管轄しています。また、厚労省では介護離職ゼロに向けたポータルサイト も運営しています。介護と仕事の両立に向けた相談先が集約されているので、活用してみるとよいでしょう。
全国の労働局一覧