オフィスのミカタとは
従業員の働きがい向上に務める皆様のための完全無料で使える
総務・人事・経理・管理部/バックオフィス業界専門メディア「オフィスのミカタ」

若い会社は介護と無関係?意外といる隠れ介護者|相談機関に繋ぐことも総務・人事の役目

2022.10.03

IT系やスタートアップ企業では従業員も若年層が多く、総務・人事担当者でも「うちは介護とは無関係」と思うかもしれません。しかし、リモートワークの普及で互いの家庭環境が見えづらくなり、「隠れ介護者」となっている従業員に気づいていないだけかもしれません。また、リモートワークにより介護サービスなしで介護と仕事の両立がギリギリで可能になっている従業員もいるかもしれません。

従業員のウェルビーイング実現には、管理職や総務・人事によるヒアリングが不可欠です。介護状況を確認したうえで適切な相談機関・公的介護サービスの紹介や、介護休暇・休業の取得を勧めることが肝要です。今回はリモートワークで見えづらくなった若年介護者の支援について、解説します。

就職しても家族の介護は終わらない

いま、大人に代わって家族の介護や世話をする18歳未満の子ども「ヤングケアラー」が注目されています。この年代は本来、勉強や部活、友人と遊ぶなど「子どもとしての時間」を過ごすはず。

しかし彼らは家事や家族の介護、兄弟の面倒や家計を支えるためのアルバイトなどに追われています。これらを理由に進路が限定されて夢を諦めざるを得ないこともあります。その割合は中学生の17人にひとり 、高校生の24人にひとりと言われています。

彼らが学校を卒業し就職しても介護は終わりません。株式会社リクシスの調査によると、20代のビジネスケアラー+切迫予備軍は約1割というデータもあります。IT企業などの比較的若い従業員が多い会社でも、実は自宅で介護を担う「隠れ介護者」の可能性があるのです。

また、隠れ介護者の中には「介護は家族が行うもの」と考え、仕事との両立について会社に相談できない人もいます。年齢が上がると出世や昇進に影響することを恐れて、ますます相談しづらくなります。この記事を読んでいるあなたの会社にも、実は自宅で介護をしている従業員が想像以上にいるかもしれません。

 

リモートなら「仕事と介護の両立ができる」という大間違い

リモートワークが普及したいま、介護と仕事の両立は難しくないと考える人も多いでしょう。たしかにリモートワークには都合に合わせて働く場所を変えられたり、通勤の負担が解消されたり、時間を効率的に使えるなど、さまざまなメリットがあります。

一方で、就業後や休日など勤務時間外にも仕事をして長時間労働となりやすく、従業員の自宅での様子も見えづらいため、隠れ介護者に会社が気づきにくいというデメリットもあります。リモートワークが普及しても、介護と仕事の両立は簡単ではありません。

加えて、リモートワークで従業員が常時自宅にいるようになると、家族も頼りになりがちです。もしも家族に認知症の症状があれば、場合によっては付きっきりの介護が必要になります。

ただでさえ要介護度は徐々に重くなるため、食事やトイレ、外出にも介助が必要となり、仕事をする余裕がなくなります。リモートワークであっても公的介護サービスを利用せずに介護をすることは、仕事の生産性を低下させ、介護離職を招きやすくなります。

介護する従業員の実態を把握し公的保険サービスの利用を案内

従業員のウェルビーイングを実現し、企業の損失を最小限にするためにも、隠れ介護者となっている従業員の介護離職を予防することが大切です。管理職だけでなく、総務・人事担当者が率先して、隠れ介護者の早期発見と介護離職予防に取り組みましょう。

たとえば、社内アンケートを実施してどの程度隠れ介護者がいるのかを把握したり、1on1など面談の場で介護を担っていないかを確認したりします。隠れ介護者がいたときは、まず会社は介護と仕事の両立に最大限協力すると伝えましょう。その上で、どんな困りごとがあるのかをヒアリングし、時短勤務や利用可能な休暇・休業制度などを紹介・提案することが大切です

このような支援は一度きりで終わらせてはなりません。介護は数年単位で続きます。定期的に面談を行って状況を確認するなど、長期的なサポート体制も整えましょう。

介護と仕事の両立には公的介護サービスが必須

介護と仕事の両立には公的介護サービスが必須

リモートワークで仕事をしていても、介護と両立するためには公的介護サービスを利用することが必須です。ここでは、一般的に利用されることが多い代表的なサービスについて見ていきましょう。

①訪問介護
介護スタッフが要介護者の自宅を訪問するサービス。着替え、入浴、排せつなどの介助を行う「身体介護」だけでなく、買い物、掃除、洗濯といった「生活援助」を受けられます。状況に合わせて、一日に複数回利用することも可能です。

②訪問入浴
入浴が困難な要介護者を対象に、看護師を含む専門スタッフが持ち運び式の浴槽を使って自宅で入浴支援を行います。アパートやマンションでも2~3畳程度のスペースがあれば実施可能。体調によっては入浴を控えて、体を拭く清拭(せいしき)を行うこともあります。

③デイサービス(通所介護)
心身の活性化や身体機能の維持を目的に、レクリエーションや機能訓練、食事や入浴サービスを受けられる施設です。営業時間は朝~夕方頃までが多く、夜間(20時頃)まで営業するところもあります。介護と仕事の両立を目指す人には心強いサービスです。

④ショートステイ
介護施設へ短期間宿泊し、身体介護や生活援助が受けられます。介護をする家族が出張や冠婚葬祭等で不在のときや、退院直後の一時的な利用。介護者が休息したいとき(レスパイト)などに頼れるサービスです。

介護の相談があったら速やかに相談機関へ繋ぐ

公的介護サービスには上記の他にもさまざまなものがありますし、隠れ介護者の多くが介護休暇などの制度を知りません。管理職や人事・総務担当者は従業員から介護の相談があったときに備え、最低限の介護の知識を身につけておきたいものです。

ただし、介護制度は複雑で、一朝一夕ですべてを把握することは難しいでしょう。そのため、次に紹介する2つを覚えておきましょう。

① 地域包括支援センター
高齢者を介護・医療・保健・福祉などの点で支える総合相談窓口が地域包括支援センター です。専門知識を持った職員が相談に応じ、住み慣れた地域で生活するために必要な助言や、介護、・生活支援などのサービスを紹介します。また、介護保険の申請窓口も担っており、介護の最も身近な相談窓口として頼れる存在です。

ほか、介護に関する相談窓口をまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

【人事部向け保存版】「介護離職」を防ぐため、介護の相談はまずここへ!目的別・介護相談窓口一覧

② 介護休暇・休業制度
どちらも家族の介護を目的に、仕事を休むための制度が介護休暇・休業 です。介護保険サービスを利用するための行政手続きなど、介護体制を整えるために取得するのがおすすめ。

介護休暇は年次有給休暇とは別に取得できる休暇で、対象家族ひとりあたり年間5日まで、時間単位での取得も可能です。介護休業は対象家族ひとりあたり通算93日まで、計3回に分けて取得でき、一定の条件を満たせば介護休業給付金が支給されます。

管理職や人事・総務担当者は最低限この2つを把握し、従業員から相談があったときには利用を促せるようにしておきましょう。

まとめ

若い従業員が多い企業であっても、隠れ介護者が社内にいることは稀ではありません。管理職や人事・総務担当者は、隠れ介護者の早期発見に向けてアンケートや面談を積極的に活用しましょう。

また、従業員から相談を受けたときには、会社は介護と仕事の両立を支援することを伝えるとともに、介護休暇・休業や地域包括支援センターを紹介して公的介護サービスの利用を促すことが重要です。従業員の介護離職を予防し、安心して働ける体制を構築していきましょう。