【後編】若手・第二新卒の「応募者を増やす」ノウハウ4選【中小企業の“令和流” 若手・第二新卒採用を成功させる秘訣 Vol.2】
前編でもお伝えした通り、コロナ禍の終わりと共に求人倍率が急激に高まってきた中で、採用活動に苦戦する企業が増加しています。新卒だけでなく、第二新卒・若手の中途採用を成功させるためのノウハウとして、前編では「応募者を増やす」ポイントから、Z世代の価値観を押さえて応募条件を見直す大切さを解説しました。後編では「応募者を増やす」ポイントととして、求人表の見直しと採用手法の見直しについてお伝えします。
③求人内容を見直す
応募者数を増やすために、求人内容やスカウトメールの文章等を見直すポイントについて説明していきます。
【採用ターゲットは明確か?】
求人内容を見直す際に最も重要なことは「応募者の目線で見直す」ということです。それに向けて、まず確認したいのは「採用ターゲットは明確になっているか?」です。こう言われると多くの採用担当者が「もちろん。採用ターゲットは明確で、採用基準に落とし込まれています」と言います。
しかし、そういった方に「採用ターゲットの方は、前職どんな会社でどんなポジションで、どんな理由で転職を決意して、どんな軸で会社を選んで、なぜうちの会社に応募して、入社を決意するのか。そのレベルで人物像が明確になっていますか?」と伺うと、ほとんどの方が「そこまでは決めていないです・・・」となります。
上述した「人物像」はマーケティング用語で「ペルソナ」と呼ばれるものです。中小企業が採用活動を行う上では、ペルソナを明確にすることが大切です。採用ターゲットが「定量的な情報を中心にして採用基準を示したもの」だとすると、ペルソナは「ライフスタイルや定性的な情報まで想定した具体的な人物像」です。つまり、採用ターゲットに含まれる1人を「架空の人物像」として詳細に設定したものがペルソナです。
・採用ターゲット :20代、年収300~400万円、必須ではないが営業経験あり
・ペルソナ :上記のターゲットに該当する○○さん(架空の人物像)
採用活動におけるペルソナは、4つの側面から考えると良いでしょう。
A.定量的な条件や能力
→年齢、学歴、経験、スキルや資格、年収など
B.価値観や性格特性
→会社や仕事に求めるもの(優先順位が高いもの)、キャリアプランなど
C.行動パターン
→よく使うアプリやWeb媒体、所属するコミュニティなど
D.今回の就職・転職活動に関すること
→退職・転職理由、会社選びの軸、うちの会社に応募・入社する理由
求人内容を見直し、応募者を増やすために特に大切になるのは、B「価値観や性格特性」と、D「今回の就職・転職活動に関すること」です。ここをしっかりと設定しましょう。2つの要素を明確にすることで、求人内容をどんな視点で見直せばいいか、自社のどんな魅力を伝えるべきかが明確になります。
採用ペルソナを作成する際は、顔が思い浮かんでくるようなレベルまで具体的にすることがポイントです。また、「現実的な理想像」を考えることも大切です。自社に応募してきたことがないような若者や、「本当にこんな若手いる?」と思ってしまうようなペルソナでは上手くいきません。「いま活躍している○○さんのイメージ」「採用はできなかったけど、こないだ応募してくれた◇◇さんが、こんなタイプだった」など、実際にモデルとなる人の顔が思い浮かぶぐらいのペルソナが「現実的な理想像」です。
【応募者目線で自社の魅力を洗い出す】
採用ペルソナを描いたら、次にやるべきことは応募者目線で自社の魅力を洗い出して求人内容に反映することです。採用経験が少なかったり、ハローワークや大学、縁故採用などを中心にしてきたりした中小企業では、「応募者目線で求人内容をつくる」ことが出来ていないケースが意外と多くあります。
採用ペルソナさえ作ってしまえば、このステップは比較的簡単です。2つのステップで進行していきましょう。まず、採用ペルソナの気持ちになってみて、「自社の魅力」を改めて洗い出しましょう。ここでは、外見的な要素だけでなく、外からは分からない内面の魅力についてもしっかりと洗い出しましょう。なるべく具体的に書き出すことがポイントです。
たとえば、「経営者がこんな経験を持っていて話を聞くと勉強になる」「こんな上司が指導する」「中小企業だからこそ仕事でこんな融通が利く」といった定性的な魅力もしっかりと書き出しましょう。また、休日や休暇、残業等の勤怠や就労環境に関する具体的な事実もしっかりと確認して書き出しておきましょう。
若手層の採用であれば、採用ターゲットに感性が近そうなメンバーを集めて、皆で話しながら書き出してみると良いでしょう。
魅力の洗い出しが終わったら、洗い出した魅力を一覧にしたうえで、求人内容を見直し、自社の魅力が十分に表現されているかを確認しましょう。大切なことは「採用ペルソナの視点」で盛り込む魅力や表現を考えることです。たとえば、前述したように「残業は月平均13時間」というのは、いまの若手にとっては重要な情報です。
【仕事内容=応募理由だと考えて、分かりやすく具体的に記載する】
求人内容における仕事内容の記載も、見直すうえで大切なポイントです。若手、とくに既卒や第二新卒採用はポテンシャル採用になりますので、未経験者でもイメージが湧くように仕事内容を分かりやすく具体的に記載することが大切です。
また、「仕事内容=志望動機」だと捉えて見直してみてください。採用企業は「入社したいのであれば、志望動機は自分で考えてほしい」と思ってしまいがちです。その通りではありますが、応募者を増やすためには「採用企業が応募者に“応募する理由”を教えてあげる」という視点が大切です。
仕事内容を読み返した時、応募者が志望動機を作れるものになっているでしょうか。「仕事のやりがい」と「身に付くスキル/市場価値」という2つの視点を意識して、ぜひ作成してみてください。
④中小企業は求職者と「直接会える」採用手法がお勧め
求人内容をきちんと整えたら、採用チャネルの選択です。中小企業の若手採用で大切なことは“接近戦”です。中小企業は外見的な採用力(待遇や知名度、規模など)よりも定性的な魅力(仕事のやりがい、経営者や上司、組織文化など)で、応募者の志望度を高めていくことが成功のポイントです。
従って、大手企業も求人広告を掲載していて、知名度や待遇等で比較されるような求人サイトよりも、直接顔を合わせて魅力を伝えたり、1対1でアプローチしたりできるような採用手法が母集団形成でもおすすめです。具体的には、中小規模の転職フェアや合同企業説明会、面接会やマッチングイベント、ダイレクトリクルーティング、人材紹介、リファラル採用などです。
また、同時に意識しておくとよいのはSNSを活用した情報発信です。
大手企業の場合、自社のWebサイトもブランディングを意識して作りこまれており、同時に採用予算も潤沢なので、採用サイトも充実した内容になっています。しかし、中小企業の場合、Webサイトに多くの予算を投下することは難しいですし、工数がないため採用サイトを作っても定期的にメンテナンスできないケースも多いでしょう。
そんな中小企業におすすめなのが、X(旧Twitter)の活用です。採用担当者とできれば経営者や幹部陣に、X(旧Twitter)などを運用してもらうと良いでしょう。Xであれば、1回140文字の投稿ですので、継続するハードルはそんなに高くはありませんし、無料で活用できます。
「SNS経由で応募してもらおう」と考えると活用も大変ですが、普通の企業はSNSをあまり作りこむ必要はありません。求人を見た人が「会社名」などで検索したとき、検索結果からSNSにたどり着いて、中小企業の魅力である「手触り感」や「温度感」が伝わるようにしておくことがポイントです。
■令和流 若手/第二新卒の採用を成功させるポイント
若手・第二新卒の採用を成功させるには、Z世代の価値観を押さえて、採用活動の各ステップをひとつひとつブラッシュアップしていくことが大切です。今回は、採用活動を成功させるためのステップのうち、「応募者を増やす」ポイントを前編・後編に分け具体的に解説しました。
次回は、選考中や内定後の辞退を減らす魅力付けと入社後の定着・活躍を見据えた見極めなど、「適切なスタンスで選考する」というテーマでお届けします。ぜひご覧ください。