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行きたくなるオフィスづくりとは?【バックオフィスのお悩み、freeeではこうして解決した!Vol.2】

皆さんの会社では事業成長や組織拡大に伴う様々なバックオフィスの課題に悩んでいないでしょうか?そんな「バックオフィスのお悩み」に、フリー株式会社がどのように対応し、それを乗り越えたのか、実例とともにご紹介しています。同様の課題に直面する企業の総務担当者様への実践的なヒントになれば幸いです。

第2回はコロナ禍を経たリモートワークから出社回帰を決めたフリー株式会社のオフィス拡張移転のプロジェクトについて。1,000人規模の本社オフィス移転をプロジェクト期間10カ月という短期間で行ったfreee。強制的に出社させるのではなく、自然と「行きたくなるオフィス」にするためにバックオフィスができるポイントを、freeeの本社移転の事例と共にお伝えします。

【過去のコラムはこちら!第1回

1,000人規模の本社移転を10カ月で実現!freeeのプロジェクトの進め方

本社拡張移転の背景
第1回でお伝えした通り、2020年のコロナ禍でのリモートワーク導入後、約2年間でfreeeらしいコミュニケーションや一体感に関する課題が浮き彫りになりました。オンラインでできる限りのことに取り組んだ上で、組織の非連続的成長のためにはやはり対面でしっかり集まる以上のソリューションはないと再認識し、出社回帰へ舵を切りました。
しかしながら、すでに当時のオフィスはリモートワーク期間の増員には耐えられず手狭な状態に。そこでフロア面積2.3倍の拡張移転を決断し、プロジェクトがスタートしたのです。

通常この規模の本社移転に必要な期間は1.5年程度。しかしプロジェクトに与えられた期間はなんと10カ月。当時社内にオフィス移転経験者がいない状態からスタートしたため、外部リソースを有効活用しつつ、社内でITチーム、インフラチーム、ブランドチームを招集し、さらに急遽前職でファシリティマネジメントをやっていたメンバーも参加して計6名の部署横断のプロジェクト運営チームが発足しました。
※freeeの新オフィス移転プロジェクトの模様などについては、公式noteでも発信しています。

従業員の巻き込みと当事者意識の醸成
今回リモートワークから出社という大きな変化の中で従業員が自然と「行きたくなるオフィス」と思えるようにするため、プロジェクトの進め方を振り返って特に肝だったと感じるのは、従業員の移転プロジェクトへの巻き込みです。freeeではより良い相乗効果を生み出していくムーブメント型チームであることを日ごろから大事にしているのですが、今回freeeでは3つの巻き込みを行いました。

1.全社員からオフィスにあったら嬉しい設備や機能をざっくばらんに募集
大喜利的に「実現度外視で何でもいいよ」とすることで216件のアイデアを創出。運営チームで「交流の生まれやすさ」や「freeeのカルチャー」に照らして絞り込み実施するものを決定。
2.発案者を企画メンバーとして巻き込み
アイデアをくれた従業員に予算を渡しサブプロジェクトとして場作りの企画を任せるという方法で、運営に巻き込み。デザイン会社とも直接連携し企画を推進してもらいました。(具体的な企画内容は後述)
3.会議室名をメンバーから募集
各階の会議室にはfreeeのプロダクトにちなんだテーマ(人事労務、勘定科目、福利厚生、販売管理など)の名前がついていますが、各プロダクトを担当しているメンバーから会議室名を募集し命名。

短納期のプロジェクトだったので必然的に社内を巻き込むことになったという側面もありましたが、バックオフィスに閉じず、全社で取り組む体制を作ったことで、プロジェクトに参画した従業員が竣工後も運用に携わるなどオフィスを自分事として捉えるきっかけが作れたと考えています。

オフィスコンセプトに場への想いを込める
オフィスにあったら嬉しいものを集める中で、「メンバーそれぞれが考える多様な”たのしさ”を、個性輝く形で随所に散りばめることで、ワクワクしながら創造的に働ける環境にしたい」という想いを込めて「たのしさダイバーシティ」に決定。コンセプトが決まったことで、オフィスのデザインや空間づくりにおいて迷った際に判断がしやすくなりました。

会議室のプライバシーガラスフィルムにfreeeロゴを羽ばたかせ「たのしさ」をプラス

フロアごとに海・大地・森・空のテーマがあり、大地がテーマのフロアにはジャングルを思わせるカウンターも

次回のプロジェクトに向けて
今回は10カ月という短納期の中で、運営メンバーを中心にがむしゃらに進めましたが、運営検討が後手に回ったりなど反省点もありました。そうした中で、次回以降の同様のプロジェクトに備え、少しでもリードタイムを短縮するため、オフィスのスタンダードを決め(オフィスの家具や什器、工事仕様などを標準化)、通常一番時間のかかる設計・デザイン期間に十分時間を割けなくなったとしても対応できるよう準備を行っています。

「行きたくなるオフィス」づくりのポイント

行きたくなるオフィスを作るうえでfreeeが気をつけていたポイントを以下に4つ挙げます。

1.ストレスフリーで快適に仕事ができる環境
高品質なネットワーク環境:ネットワーク増強をし無線LANが不安定なときに備えて各席に有線LANを配線することで対応。
ハイブリッドワークに適した会議室と設備:会議室の数を以前の約30室から2.7倍の約100室に増やし、さらに1対1のミーティングに適した個室ブースを設置。会議室内設備もオンライン/オフラインで体験の差が生まれにくいよう最新の「Google Meet Hardware」と高品質のスピーカーとマイクを配備。
エルゴノミクスに基づいて作られたオフィス家具:人間工学や人体の運動理論にもとづいて設計されている体に負担がかかりにくい人気オフィス家具を設置。

2.コミュニティ形成に効く空間設計
組織の非連続的成長のスピードを上げるためには部署を超えた自由闊達な議論やフィードバックができる土壌が必要です。そのために欠かせないのは「偶発的な出会い」と「関係を深められる」仕掛けだと考えています。それを叶える試みとして、前述の発案者を企画メンバーとして巻き込んで作ったものがコンセプト会議室。会議ができる機能の他に、キッチンやゲーム、ダーツやビリヤード、DIYなどのコンセプトを持っています。共通の趣味を持つメンバーが部署を超えて集まり、出会い、関係を深めていけるきっかけが生まれる場となっています。

キッチンの機能を持つ会議室「シャショク」

DIYができる会議室「フクギョウ」

ゲームができる会議室「ボーナス」

ビリヤード、ダーツ、カラオケ、DJブースを備えた会議室「ネンマツチョウセイ」

3.出社が楽しみになる仕掛け、使うためのお手本
移転後、従業員に「まずは行ってみよう」と思ってもらえるようお祭り感を演出し、様々なイベントに参加することで自然とオフィスの使い方を理解できることを狙いました。引っ越し蕎麦を振る舞ったり、オフィス内に小さな宝箱を忍ばせて探すことで回遊を促す他、コンセプト会議室を使って料理ワークショップやクリスマスオーナメントDIYワークショップなどを開催。

コンセプト会議室を利用したワークショップを開催

オフィスde宝探し

4.誰もが行きたくなるアクセシビリティ
障害のあるないに関わらず行きたくなる、という点にもこだわり以下を実施。

・ロの字のフロアを4つの区画に分け、それぞれのエリアを四則演算(+ー×÷)で表示
・会議室サイン、館内マップにはすべて点字を貼付
・車椅子でも執務室に出入りしやすい自動ドアを設置
・各フロアにだれでもトイレのある物件選定

フロアマップや柱に四則演算(+ー×÷)を表示

会議室サインに貼付した点字

ただしこれだけでは完全ではなく、運用後に車椅子では敷設したカーペットを走行しづらい、通路と執務スペースの床材に違いがなく分かりづらいなどの課題が見つかり、次回はこの反省を活かしていければと考えています。

移転後の効果と社員の反応

出社率の変化とオフィスの活用状況
移転から2年半経過した現在、出社率は全体で60~70%を維持しています。(※原則全日出社だが、育児や介護の当事者や突発的な個別事情に配慮し一定もしくは都度のリモート勤務を認めている)
一般的に会議室は65~75%の稼働率が適正と言われる中、新設したコンセプト会議室の稼働率は、65%以上を維持し一部予約困難な会議室があるほど。出社が増えることで50以上の部活動も新たに誕生し、移転前から実施していた部署横断の交流ランチの数も2倍に増えています。移転の目的としていたコミュニティ形成は達成されつつある状況です。

これからのオフィスのあり方とは

ファシリティマネジメントを行う総務の使命は、環境の変化に応じて柔軟に空間を活用し、従業員のパフォーマンスを最大化する仕掛けを作ることではないでしょうか。オフィスは、企業のカルチャーやバリューを体感でき、経営や組織の課題を解決する役割も担っています。
リモートワークが当たり前となった今、単なる働く場所ではなく、組織成長や事業のスピードを一層加速するため、仲間と出会い信頼を深める場を提供する空間へと進化させることが今求められているのではないかと、freeeは考えています。次回は、移転後に運用する中で見えてきた課題と対応をお届けします。