急激な人員増加にどう対応する?【バックオフィスのお悩み、freeeではこうして解決した!Vol.4】

皆さんの会社では事業成長や組織拡大に伴う様々なバックオフィスの課題に悩んでいないでしょうか?そんな「バックオフィスのお悩み」に、フリー株式会社がどのように対応し、それを乗り越えたのか、実例とともにご紹介しています。同様の課題に直面する企業の総務担当者様への実践的なヒントになれば幸いです。
第4回では、人員の急増に伴って発生する課題への対応を取り上げます。座席不足といったハード面の課題から、人員増加に比例して増える業務へのリソース不足まで、私たちがどのように向き合ったかご紹介します。
想定を超える成長スピードで、待ったなしの増席工事
移転後に直面したのは、想定以上の事業成長とそれに伴う人員増加。“うれしい悲鳴”とも言える状況でしたが、入居当初のオフィスレイアウトでは座席が不足したため、結果としてこれまでに2度の増席工事を実施しました。遊休スペースだけでなく一部の休憩スペースを削るという難しい判断もありましたが、私たちは「対面でのコミュニケーション」を重視しているので、一人ひとりの席を確保することを優先しました。
■ アナウンスの際はメッセージングに工夫を
大きなレイアウト変更は社員の働き方に直結するため、単なる事務的なアナウンスで済ませず、ポジティブなメッセージを込めて発信しました。例えば、「一部の休憩スペースは縮小されるが、それは成長の証」といった前向きな表現で社内に周知したほか、改装前のスペースを楽しむ「GoodByeフェス」と名付けた社内イベントを開催。自由に飲食できる時間を設け、背景を直接伝える場としても機能しました。こうした工夫が、変化への理解と協力を促すきっかけとなりました。

増員に伴う“問い合わせの爆増”にどう対応したか?
人が増えれば、問い合わせも比例して増加します。限られたリソースでどう対応していくのか。freeeでは、「業務の仕組み化」に活路を見出しました。
■ 問い合わせの受け方を再設計:対応の分散と属人化防止
移転当初は、口頭や個別メッセージによる問い合わせが多く、対応漏れや業務の属人化の懸念がありました。そこで、目的別に複数の問い合わせフォームを設け、すべての通知が総務チーム全体に届くようフローを再構築。情報をチーム内で一元管理し、誰でも対応できる体制を構築することで、対応の抜け漏れや属人化のリスクを大幅に低減しました。また、フォーム設計においては選択式の設問を中心とすることで自由記述を最小限に抑え対応工数を削減、社員の待ち時間も大幅に短縮できました。
■ナレッジの一元化とAI活用:自走を促す仕組みへ
freeeでは昨年より、AIチャットボット(既存の社内キャラクターを使用し、「わカルさんbot」と称して運用)が全社ポータル上のナレッジをもとに社内の問い合わせに自動応答する仕組みを導入しています。この導入を機に、項目ごとに分散していたマニュアル類を全社ポータルにすべて集約し、AIチャットボットが総務関連の質問に即時回答できる環境を整備しました。

AIで回答可能な範囲を広げたことで、社員自身が自ら調べて解決できる仕組みが整い、問い合わせ件数は2025年4月とAI活用前の昨年同月比較で約50%削減。総務チームの業務効率が向上しただけでなく、社員の自己解決力向上にもつながっています。
次なるステップは「セルフサービス化」
さらなる業務効率化を図るべく、「やってもらう」から「自分でできる」への転換を進めています。
■ 備品の集約と視認性の工夫
文房具や各種備品を総務席近くの一箇所に集約し、フロア全体を巡回せずとも補充・点検が行える体制を整備しました。よく無くなりがちな会議室のホワイトボードマーカーも、「自分で補充」が基本ルール。設置場所はピクトグラムを用いて視覚的にわかりやすく表示し、誰でも迷わず対応できるよう工夫しています。

■ イベントスペースの原状回復を“自走”可能に
社内イベント後の原状回復が徹底されない……。そんな課題には、家具や床に目印シールを貼ることで対応。マニュアルを読まなくても「見ればわかる」仕組みを構築しました。視覚的なガイドによって、社員自身が片付けまで完結できるようになりました。

■ 手続きや名刺発注もセルフで完結
総務が介在しなくても完結できる業務は、積極的にセルフサービス化を推進しています。
例えば、入居ビルへの申請手続きは依頼者が直接管理会社へ連絡を行い、総務はメールのCCに入れてもらうことで状況を確認しています。また、名刺発注も専用サイトを通じて各自で注文可能な仕組みを整え、総務の対応漏れ防止とスピード向上を両立しています。総務の関与を最小限にすることで、リードタイムが短縮されるだけでなく、社員の主体性や業務スピードも向上します。業務効率化と自己責任のバランスを保った仕組み化を進めることが大切です。
社員を巻き込み、理解を得ることが最大のカギ
オフィスの増席も、業務フローの刷新も、社員の理解と協力があってこそ成り立ちます。だからこそ、背景や目的を丁寧に伝える工夫が欠かせません。イベントやメッセージを通じて、変化の意義をしっかりと説明し伝える。そうした小さな接点の積み重ねが、社員の納得感を育み、前向きな協力を得るための土台となります。私たちは総務の役割は「何でも屋」ではなく、「仕組みで課題を解決するファシリテーター」と捉えています。人の手で抱え込むのではなく、社員が自走できる環境づくりこそ、これからのバックオフィスのあるべき姿だと考えています。
今後に向けて
人員が急増するフェーズは、企業にとって重要なターニングポイントです。その中で総務には、ハード面・ソフト面の両方を柔軟かつ戦略的にアップデートする力が求められます。freeeでは、「全員を巻き込む」「仕組みで解決する」「自走を促す」の3つを柱に、数々の課題を乗り越えてきました。今後も、変化を前提とした柔軟な仕組みづくりを通じて、社員の働きやすさと業務効率の両立を目指していきます。同じような課題に直面する企業様の一助になれば幸いです。
次回は、社員が移転後も継続して出社したくなるオフィスを実現するために取り組んでいる施策や運用の工夫についてご紹介します。