掲載希望の方 オフィスのミカタとは
従業員の働きがい向上に務める皆様のための完全無料で使える
総務・人事・経理・管理部/バックオフィス業界専門メディア「オフィスのミカタ」

「認められたい」は悪いことか? 承認欲求を組織成長の武器にする視点とは(前編)

2026.05.15

皆さんは「承認欲求」という言葉に、どのようなイメージをお持ちでしょうか。目立ちたがり。周りの目を気にしすぎている。プライドが高い。このように、承認欲求にはネガティブなイメージが先行しがちです。特にマネジメントの現場では、承認欲求が高いメンバーは扱いにくい存在と捉えられてしまうことも少なくありません。

しかし、承認欲求は本来、自己効力感や達成感といったポジティブな方向へと昇華させることが可能なものです。承認欲求を避けずに向き合うことで、仕事をするうえでの強い動機づけとなるため、むしろ「なくてはならないもの」ともいえます。

今回は、称賛・承認を起点とした組織づくりの最前線で企業の組織変革に伴走してきた私が、承認欲求が仕事に与える可能性と、その活かし方について前編・後編にわたって解説します。「承認欲求が高いメンバーがいて困っている」「メンバーの承認欲求をうまく満たしてあげたい」とお考えの方は、ぜひお役立てください。

承認欲求が高いメンバーは、本当に「扱いにくい」のか?

「やたらと自分の成果をアピールしてくるメンバーがいて、チームの雰囲気が悪くなっている」

「まだ十分な結果を出していないのに、褒めてほしいという姿勢が前面に出てきて扱いに困る」


マネジメントの現場でこうした悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

「承認欲求が高い」という言葉には、どこかネガティブな響きがあります。実際に、承認欲求の高いメンバーへの対応に苦慮しているマネージャーの声は、これまでに組織変革を支援するなかでも数多く耳にしてきました。

しかし結論からお伝えすると、承認欲求が高いこと自体は問題ではありません。問題になるのは、その欲求の出方や、マネージャー側の向き合い方が誤っている場合です。本コラムでは前編・後編を通じて、承認欲求が高いメンバーと組織がどのように向き合うべきかを考えていきます。

承認欲求の高さが引き起こす、組織内の問題

まずは、承認欲求の高さがチーム内で問題として表面化するケースを整理してみましょう。マネジメントの難しさを感じる場面は、主に以下のようなパターンに分けられます。

・過度な自己アピールがチーム内にハレーションを起こす
自分の成果や貢献を必要以上にアピールすることで、周囲のメンバーが不快感を抱き、チームの雰囲気が悪化してしまうケースです。本人に悪意はなくとも、頻繁に自分の話題を持ち出す姿勢は、チーム内の心理的安全性を損なう要因になりかねません。

・他者の貢献を自分の成果かのように主張する
たとえば、あるプロジェクトの成功をアピールしているメンバーがいたとしても、実際にはその土台を別の誰かが支えていたというケースは珍しくありません。成果に関わった人へのリスペクトや感謝がないまま自分の手柄として主張してしまうと、チーム内の信頼関係を大きく損ねてしまいます。

・成果が伴っていないのに承認を求める
マネージャーや周囲から期待されている水準に達していないにもかかわらず、「もっと認めてほしい」「褒めてほしい」という姿勢が先行するケースもあります。安易に承認してしまうとそこで成長が止まってしまうリスクがあるうえに、期待している成果が出ていないため「この程度では承認できない」というのが本音でしょう。

こうした場面に直面すると、マネージャーはつい「承認欲求が高い=厄介な存在」と捉えてしまいがちです。しかし、本当に問題なのは承認欲求そのものなのでしょうか。

承認欲求は「悪」ではない マズローの欲求5段階説から考える

「承認欲求」という言葉は、近年ではSNSでの過度な自己顕示欲と結びつけられることも多く、ネガティブな意味合いで使われがちです。しかし、心理学の観点から見ると、承認欲求は人間が自然に持っている欲求であり、満たされるべきとされています。

アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した「欲求5段階説」では、人間の欲求は以下の5つの種類で構成されるとされています。

● 生理的欲求(食事・睡眠など生命維持に関わる欲求)
● 安全の欲求(身体的・経済的な安全を求める欲求)
● 社会的欲求(集団への所属や人とのつながりを求める欲求)
● 承認欲求(他者から認められたい、自分を価値ある存在と感じたい欲求)
● 自己実現欲求(自分の可能性を最大限に発揮したいという欲求)


この分類を参考にすると、承認欲求は人間にとってごく自然な欲求のひとつであることがわかります。そして承認欲求が満たされることは、自己実現に向けた動機づけになりえます。なぜなら、承認は「あなたの能力が活きている」という有能感と、「あなたはこのチームに必要だ」という関係性の実感を同時に伝える行為だからです。この2つの実感が得られることで、人は「自分の可能性をもっと追求したい」「チームや社会にもっと貢献したい」という意欲を持ちやすくなります。

ここで注目したいのは、メンバー個人が持つ自己実現の欲求と、会社や組織が求める成長や行動の方向性が一致したとき、双方にとって理想的な状態が生まれるということです。メンバーは自分の意志で成長に向かい、組織はその成長を通じて成果を得られる。この状態を目指すためにも、動機づけとなる承認欲求を満たしてあげることが有効なアプローチとなります。

マネージャーであれば、メンバーには目の前の成果だけでなく、自己実現や他者への貢献といった高い視座を持って仕事に取り組んでほしいと考えるのではないでしょうか。しかし、承認欲求が満たされていない状態では、こうした意欲は生まれにくい可能性があります。

社会的欲求が満たされていない可能性にも目を向ける

さらに注意すべき点があります。承認欲求が強く見えるメンバーのなかには、実は社会的欲求が十分に満たされていないケースが見受けられます。

社会的欲求とは、組織やチームに「自分が所属している」「自分の居場所がある」と感じられる欲求です。たとえ組織に在籍していても、自分の役割が不明確であったり、チーム内で孤立感を抱いていたりすると、この欲求は満たされません。

マネージャーとしては、承認欲求の高さだけに注目するのではなく、そのメンバーに対して役割や期待が明確に伝わっているか、ビジネスプロセスのなかで自分のポジションの意味を理解できているかにも目を向ける必要があります。「あなたの仕事はこういう役割を担っていて、その後のプロセスで活きてくる」「チーム全体でこの目標を目指していて、あなたにはこの部分を期待している」といったコミュニケーションが、社会的欲求を満たす土台をつくります。

承認欲求は、組織の成長エンジンになり得る

承認欲求は人間にとって自然で、かつ満たされるべき欲求です。承認欲求があるからこそ「高い成果を出したい」「期待に応えたい」という意欲が生まれるのであり、この欲求自体が否定されるべきではありません。

承認欲求が高いメンバーにとって、最大のモチベーターは承認されることです。どういう行動を取れば承認されるのかを本人が学習できれば、マネージャーが望む方向へのアクションを自発的に取ってくれるようになるということでもあります。

私自身、承認欲求の発露を忌避するあまりに、結果につながる行動ができず苦しんだ経験があります。成果が出ない時期に、承認欲求を忌避する割には他メンバーに嫉妬するという自己矛盾がありました。また、同じアプローチ先を同僚と競り合う場面で譲ってしまい、その後に大きな業績につながったと知ったときには、とても悔しい思いをしました。当時の自分は、自分自身の承認欲求に気づいていませんでした。もっと貪欲に成果を求め、自分の欲求と正面から向き合っていれば、くすぶることはなかったのではないかと今では感じています。

承認欲求は、排除すべきものではなく、組織の成長エンジンにもなります。次回の後編では、承認欲求が高いメンバーに対する具体的な向き合い方や、実践的なコミュニケーションの方法について解説していきます。