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任せて育てる!部下に「権限委譲」するコツ①【令和の管理職に求められる“マネジメントスキル” Vol.5】

この連載では、リーダーシップやコミュニケーション力向上の研修を提供する当社が、「令和の管理職」に求められるマネジメントスキルを解説しています。今回と次回の最終回では、「適切な権限委譲(仕事を任せる力)」をテーマに、管理職が日々のマネジメントで実践できる具体的なノウハウを紹介します。

【過去のコラムはこちら!第1回/第2回/第3回/第4回

全方位のマネジメント課題を解決 メリットだらけの「権限委譲」

令和の管理職にとって、責任と裁量のある仕事を部下に任せる「権限委譲」を通じた部下育成は、非常に重要な業務です。労働市場の流動化により社員の入退社が活発となる中、部下が事業成長に直結するスキルや能力を習得することは、企業の発展に欠かせませんし、部下に業務を任せ管理職が自分の時間を持てればマネジメントの業務に集中できます。加えて、部下は業務を任せられることでスキルアップや成長の機会を得られ、モチベーションの向上にもつながります。

このように、マネジメント課題を全方位で解決できうる権限委譲は、部下との間の信頼関係(第2回)と部下の強みを活かして実践(第3回第4回)すべきマネジメントの最終的な到達点ともいえます。

仕事を任せられない! 企業で生じている「権限委譲」2つの課題

一方で、メリットばかりの「権限委譲」は、多くの企業で管理職が抱える課題の一つとなっています。 当社が経営者・人事400名を対象に実施した「年代別管理職の課題」に関する調査では、管理職の年代が40代・50代・60代と上がるにつれて、「権限委譲を通じた部下育成」を課題として挙げる回答が増加しました。昨今、40代~60代の経験豊富な管理職世代の権限委譲の質に関して、2つの課題が寄せられています。

管理職が仕事を任せず、組織も社員も持続的に成長できない
一つ目は、仕事を任せないことにより生じる課題です。第1回でも述べた通り、部下とのコミュニケーションに悩んだ結果、部下と深く関わることを避け、育成を放置してしまう管理職が増えています。さらに、プレイヤーとしての業務に自信を持つ管理職ほど、部下に求める成果やスキルと現状のギャップを前に「誰にも任せられない」と考え、自らがプレイヤーとして補ってしまうケースも見られます。

こうした職場では部下が育たないだけでなく、経験豊富な管理職の「馬力」に頼る属人的な体制に将来的な不安を感じ、若手社員が退職してしまう傾向もあります。中途社員が入社しても状況は改善せず、入退社の繰り返しによって、企業の持続的な成長が停滞する悪循環が生まれます。

管理職が仕事を任しても、適切な権限委譲につながらない
一方で、仕事を任せた場合にも課題が生じています。具体的には、「仕事を任せてはみたものの、部下のモチベーションが下がり、結果的に業務の質も低下してしまった」といった、部下のマインド面に悪影響が出るケースです。背景には、部下が「業務を丸投げされた」と感じたり、自分の役割や期待値を十分に理解できていなかったりした場合に、このような状況が生まれます。

また、「任せた業務を結局細かく指示してしまい、逆に部下が常に上司の確認を仰ぐようになった」というように、任せることで逆に管理職の業務量が増加するケースも見られます。これでは、本来の目的である“権限委譲による自律的なチームづくり”が進まず、結果として上司・部下双方にとって負担が大きくなります。

業務を任せない、あるいはやみくもに任せるといった両極端な対応では、権限委譲はうまく機能しません。権限委譲を成功させるためには、理想的な権限委譲の姿を正しく理解し、その実現に向けたステップを踏んで実行していくことが重要です。

理想の権限委譲は、部下が「うれしい、誇らしい」と感じる状態

理想の権限委譲は、部下が「うれしい、誇らしい」と感じる状態

まず、生産性が最も高まる理想的な権限委譲とは、部下に裁量や責任のある業務を任せたうえで、任された部下が「仕事を任されてうれしい、誇らしい」と感じている状態を指します。この状態を理解する上で参考になるのは、「生産性の6D」という視点です。生産性の6Dは、部下への任せ方によって生産性が変わることを示しています。

× 管理職が自分自身で業務を抱え込む「doing」「落下(dropping)」
生産性の6Dの中で、管理職が避けなければいけないことに、管理職が「この仕事は自分でやった方が早く成果が出せる」「この業務は自分にしか絶対できない」と自分で業務を遂行してしまう「doing」の状態があります。加えてこの状態から、業務を抱え込んでキャパオーバーになり、「落下(dropping)」の状態に陥り、管理職がキャパオーバーになった上にだれにも代われないといった状態になると、チームは持続的に成果をあげることができません。

×丸投げする「投げ捨て(dumping)」
このような事態を避けるために、計画的に社員に業務を任せる必要がありますが、進捗確認もフォローもせず、ただ仕事を丸投げする「投げ捨て(dumping)」も、「落下(dropping)」と同じ生産性が低い状態を生み出します。

丸投げした上に、任せた業務でミスやトラブルが起こったときに初めてフォローしたり、「なぜできないんだ」「任せない方がよかった」と叱責や苦言を伝えたりすると、社員のモチベーションは低下します。「任せてみたけど部下の育成につながらなかった」という経験の背景を分析すると、この「投げ捨て(dumping)」の状態が原因になっていることが多いです。

△責任が少ない「割り振り(distributing)」
丸投げはせず、自分の業務の中で責任の少ないタスクを任せる「割り振り(distributing)」は、平均的な生産性にとどまりますが、業務を自分で行う場合よりは良い状態になります。しかし長期的に組織やチームの成長を実現させるためには、裁量や権限の大きい業務を任せる権限委譲「delegation」を行っていく必要があります。

◎権限委譲されたことが「うれしい、誇らしい」と感じる「代理(deputizing)」
そして権限委譲の中でも、生産性が高くなる最も理想的な状態は、部下に責任と裁量、意思決定も含めた業務を任せ、任された部下が権限委譲されたことが「うれしい、誇らしい」と感じる「代理(deputizing)」の状態です。この状態では、部下は単に業務を遂行するだけでなく、自分の役割に対する自信と誇りを持つようになり、自己効力感が高まり、モチベーションも向上します。

「裁量や意思決定を含めて業務を任せてみたけど、本人のやる気やモチベーションが感じられなかった」という場合は、「代理(deputizing)」の状態に至っていない可能性があります。

次回の最終回では、理想的な権限委譲である「代理(deputizing)」を生み出すための権限委譲の進め方と、権限委譲の中で行う部下へのフォローのポイントなどを具体的に紹介します。ぜひご覧ください。