1on1の基本と実践【知ってるつもり?職場の定番施策再入門 Vol.1】
コロナ禍によるリモートワークの広がりなどを契機に、多くの企業で1on1を導入するようになりました。実際に弊社が行った1on1に関する実態調査(※)では、企業の約7割がすでに1on1を導入済みです。1on1を実施している企業の多くが「効果を実感している」と回答している一方で、「単なる雑談で終わってしまう」「最初は熱心に取り組んだが継続できない」といった課題の声も聞かれます。そこで、本稿では、1on1の概要や効果、留意すべきポイントについて解説していきます。
1on1とは
まずは、1on1の定義をご紹介します。1on1とは、上司とメンバーが定期的に行う、1対1の対話の場を指します。1on1の頻度・時間といった実施の枠組みは各社各様ですが、3つの共通項が見られます。
1つ目は、部下のための時間であることです。1on1は部下の個性や持ち味を活かすマネジメントのタッチポイントとして位置づけられ、主役は部下とされています。
2つ目は、上司・部下双方による協働作業であることです。対話が言語を介した当事者間の相互作用である以上、1on1を意義ある場とするためには、上司・部下の双方が当事者意識をもって歩み寄ることが求められます。
3つ目は、広範なテーマをめぐった対話であることです。日常のトラブルから中長期のキャリアに至るまで、1on1で話されるテーマは多岐にわたります。そのため、1on1をより意義ある場・機会とする上で、伴走役の上司には、テーマに即した適切な態度や振る舞いが期待されます。
上記の共通項以外については、各社がそれぞれガイドラインを設定しているのが実情です。ガイドラインとは、1on1の位置づけ・目的・時間・頻度を指します。具体的には、下のスライドをご参照ください。
1on1の効果
ここまで1on1の概要について解説してきました。ここからは、1on1の効果について代表的なものを2点ご紹介します。
1点目は、部下との信頼関係が構築される点です。1on1では、日常業務で生まれがちな「分かっているだろう」という思い込みを排除し、業務や時にはプライベートの悩みまで幅広く話し合うことで、双方の理解が深まります。この対話が部下に心理的安全性をもたらし、何でも気軽に相談できる関係の構築につながります。
また、1on1を通じた定期的なコミュニケーションは、部下の不安や不満を早期に解消するきっかけとなり、突然の退職といった事態を防ぐ効果も期待できます。上司と部下が互いの考えを共有することで、組織のパフォーマンス向上にも寄与し、健全な職場環境を築く土台となるのです。
2点目は、部下の成長速度が上がる点です。部下が自身を振り返り、成長のきっかけを得る場としても、1on1には効果が期待できます。例えば、上司からのフィードバックは部下に自身の長所や課題を認識させ、次の行動につなげる指針を与えます。また、対話を通じて上司が部下の努力や進捗を細かく把握し、適切な評価を行うことは、部下のモチベーションや帰属意識を高めるでしょう。部下にとってこうした評価は大きな原動力となり、自発的な行動を促す可能性があります。
以上のように、1on1は、部下が自身の能力を引き出し、成長を加速させるための貴重な機会となり得るのです。
1on1で活用するスキルとは
1on1を効果的に推進するためには、コーチングスキル・フィードバックスキル・ティーチングスキルという3つのスキルが必要です。
コミュニケーションの機会をただ増やすだけでは、何をどのように話せばよいか悩んでしまい、関係性の改善や部下のモチベーション向上につなげるといった前述の「1on1の効果」を生み出すことは難しくなります。
ここでは、3つのスキルを具体的に紹介します。まずは、コーチングスキルです。 コーチングスキルとは、相手の意欲や能力を最大限に「引き出す」コミュニケーション手法です。効果としては、メンバーの自発的な行動と学習の促進が挙げられます。
次は、フィードバックスキルです。 フィードバックスキルとは、相手が周囲に与えている印象・影響などを「伝える」コミュニケーション手法です。効果としては、メンバーの自己認識の向上が挙げられます。
最後は、ティーチングスキルです。 ティーチングスキルとは、相手に知識や方法を「教える」コミュニケーション手法です。効果としては、メンバーの知識習得と迅速な問題解決の促進が挙げられます。
1on1を実践する前に、自社の管理職が3つのスキルを身につけているかを確認し、不足があれば学ぶ機会を設けることが大切です。
1on1の導入に際して留意すべきポイントは
続いて、導入された企業へのヒアリングを参考に、1on1の導入に際して事務局が留意すべきポイントについてお伝えします。事務局が直面する象徴的な課題は、以下の3つに集約できます。
第1に、現場の当事者意識の醸成です。
「そもそも、なぜ1on1を実施するのか?」
「すでに日常的に関わりがあるなかで、現場の負荷を高めてまで実施する意義が本当にあるのか?」
これらは、現場の上司・部下の双方からよく示される懸念です。導入段階においては、上司と部下の双方が1on1の意義や意味について理解・共感できるメッセージが必要となります。
意義の具体例としては、若手の離職防止や自律的な人材育成が挙げられます。ただ、キーワードを掲げるだけですと、共感までには至りません。ですので、1on1を導入することで、若手のコンディションやモチベーションをこのように変えていきたいという物語を伝えることが重要です。
第2に、現場の運用力の向上です。
「1on1の進め方が分からない」
「個別の部下との関わり方で困っている」
これらは、上司側から示される代表的な懸念です。上司が1on1の場をより良く運営できるよう、先ほどご紹介した3つのスキルや知識学習の機会提供やナレッジ共有などの教育的支援を充実させることが重要です。
第3に、現場の効力感の醸成です。
「部下にとって役立つ時間にできているか自信がない」
「1on1の意義を感じていないが、上司に言い出せない」
こちらも現場の上司・部下からよく聞かれる声です。1on1は上司と部下の協働による営みであるため、双方の効力感が醸成されないと形骸化していく傾向があります。そのため、上司には自身の1on1がどのように受け止められているかを知る機会を、部下には1on1に対して感じていることを伝える機会を設けることが望ましいと言えます。具体的には、部下向けに1on1アンケートを実施し、その結果を上司に共有する取り組みが有効です。部下向けアンケートを見た上司は、効力感を味わうと同時に、次なる課題を設定できます。
以上が、1on1の導入に際してつまずきがちな象徴的な3つの課題です。
おわりに
1on1の導入支援を数多くしてきた中で、強く印象に残っているのは、「1on1を入口にマネジメント変革を起こしていく」「意識的なマネジメントの象徴的なタッチポイントが1on1だ」という言葉です。つまり、1on1はあくまでマネジメント場面の一つにすぎない一方で、企業のマネジメントのあり方が端的に問われる場面でもあるということです。
本稿が、1on1を現場に着実に根付かせていく上で、参考になれば幸いです。









