いい人材を逃さない為に。新卒採用で見るべきポイントとは
学生にとって就職活動は今後の人生を左右する重要なイベントだ。また、企業側の人事担当者にとっても新卒の採用活動は1年の中でも大きなウェイトを占める重要なプロジェクトの一つだ。
しかし、人事担当者として学生の内面・外見の判断を行うとしても、学生のどの部分を見ればいいのかわからない、具体的な評価を行うために必要な施策がわからないなどいったケースもあるだろう。
また、2021年には今の就活ルールが廃止され、人材獲得競争がますます激化していく中、具体的な対策が出来ていなければ優秀な人材を獲得するのは非常に困難だ。
その上で今特集では、採用活動の際に人事が行うべき対策と評価の対象となる就活生の見るべきポイントを解説していく。また、入社後の「早期離職」を防ぐ対策についても合わせて解説する。
現状の就活ルールと新卒採用の今後
就活ルールは、経団連が定めた就活の際の目安となるルールのことだ。経団連は、「日本経済団体連合会」の略称であり、企業や各種経済団体を含めたグループで校正される組織である。また、経済に関する意見を出し合い、まとめたうえで政府や企業に働きかけるといった役割を持つ。
ちなみに、現在の就活ルールは以下の通りだ。
現在の就活ルール
・企業側による採用に関わる会社説明会や募集要項の開示などの広報活動は3月1日から。
・面接などの選考活動は6月1日から。
・採用内定時期は10月1日から。
そして、経団連はこれまで定めていた就活ルールの【廃止】を行う方針を固めた。実際に2021年からは、企業の採用活動は激化していくことが予想されるだろう。人材難と就活ルールの撤廃の中で、優秀な人材を確保していくことは今まで以上に困難になる。
また、苦労して若くて優秀な人材を入れたとしても、すぐに退職されてしまっては元も子もない。今後は「採用活動」と「早期離職対策」両方の対策を、今まで以上に力を入れる必要がある。
採用面接の際の人物評価のポイント
ここでは採用面接の際の人物評価のポイントを詳しく見て行こう。人物の評価ポイントに関しては、採用担当者が適切な質問をしたうえで就活生の内面を考慮し、見抜く必要がある。
1.環境の違いを受け入れられるか
企業は組織であることから、仕事上で付き合う人間や行う業務を選択できないことがある。
ミスマッチを防ぐために最初から定期的な配置転換を明記している企業もある。そういった環境の変化に対して柔軟に対応できるのかといった点は重要な判断要素だ。
新卒採用を行っても退職につながるケースとして、最も多いのは「意識の相違」であり、職場と自分の意識とのミスマッチが退職につながることもある。そのため、面接時では環境の違いを受け入れる力を見極められる質問を行おう。
2.自己解決の力の見極めと学ぶ姿勢があるか
業務上の疑問や課題の解決方法は人によって異なる。そのうえで、就活生の考え方に触れてどのような問題解決方法を取ってきたのか見極めが必要となる。その考え方や方法に対して、企業との価値観が合うかどうか、自分で成長し学んでいく姿勢があるかどうかは非常に重要な判断要素だ。
また、自分に与えられた課題に対してどのようにアプローチするのかも面接の質問によって見極めることができる。
3.コミュニケーション能力の有無
どのような業務だとしてもコミュニケーションが全く発生しない業務はないと言っていいだろう。採用時にはそういった面も評価に加える。
円滑なコミュニケーションは、質問に対する適切な受け答えがなければ生まれない。業務上だけでなく、プライベートにおいてもそういったやり取りを行っているかどうかは、言動でもある程度は推察できる。特に使用する言葉・話すときの目線・態度には注意を払おう。
また、コミュニケーション能力に関しては、チームワークにも大きく関係してくる事柄だ。企業は組織単位で動くものであり、与えられた役割などを十分に全うしなければならない。組織単位で動くということは、コミュニケーション能力を発揮する場所や相手を選ぶことができないため、どういった取り組みや対処を行うのかといった面も判断材料となる。
では、質問によってどのような点を評価すればいいのか事例を見てみよう。
1.自己紹介
聞かれた質問に対してどのように答えるのかを見る。例えば、名前や出身学校などを質問して、分かりやすく簡潔な答えが返ってくるのかどうかを観ることはできる。また、自己紹介の際に自己 PR も合わせて聞くことによって、就活生の「情報の伝え方」を把握することも可能だ。
2.志望動機
企業の理念を理解したうえで志望動機を伝えているのかを評価する。自分の思いを把握し、企業の業務を理解し、他の企業にはない特色をあげられているのかといった見方が重要だ。
就活生の視点から見ても、将来やりたいことだけではなく、その企業でなければならない理由が必ずあるはずだ。そのため、志望動機を聞く際は、そういった理由が明確に説明できているかどうかを意識して欲しい。
3.学生時代に頑張ったこと
結果に対してどのような努力をしてたどり着いたのか、明確に説明できるかどうかを評価する。また、生活や問題解決の手段を聞くことによってどのような考え方をしているのかを判断することが可能だ。
就活生によってエピソードや方法は異なるものの、ある程度物事に取り組んだことのある学生であれば、物事の考え方や解決方法などは確立されていることが多い。そのうえで、企業の指針や働き方に合うかどうかを判断する。
4.将来について
目標を定めた上でどのような手順で課題をクリアし、向かっていくのかプランを立てられるかどうかを評価する。業務におけるゴールは、自分で定めるものも多く、単純な業務であったとしても効率を考える必要があるだろう。
そのうえで、どのような手順を踏めばその目標にたどり着けるのか明確に考え説明できる能力は、ともに仕事を行う上でも重要な判断材料となる。
適切な質問を投げかけることによって、就活生の意志や考え方、コミュニケーション能力など総合的な人物評価が行えるようになる。面接官でなくとも就活における質問は、こういった評価を行うためにするものだということを把握しておこう。
新卒入社後の「早期離職」対策について
「早期離職」の問題は以前から騒がれている社会問題のひとつだ。4月の入社時期に学生から社会人へと大きく環境が変わる中、入社前に抱いていたイメージとのギャップがあると入社後すぐに辞めてしまうケースが多い。
そんな「早期退職」を防ぐ対策をいくつか紹介していく。
1.インターン制度を取り入れる
大企業では、インターン制度を取り入れている企業は多い。ミスマッチを防ぐためにも、採用期間に対して余裕がある場合は、インターン制度を取り入れることをおすすめする。企業側としても採用の可能性のある就活生を評価できることに加え、お互いの認識のミスマッチを少なくすることが可能であるためだ。そのため、インターン制度がないなどの場合は新たに制度を取り入れるためのルールづくりなども必要となってくる。
2.入社前から活発なコミュニケーションをとる
インターン制度を取り入れていない企業では、他の対策をする必要がある。その一つとして、入社前から定期的にコミュニケーションを取ることが挙げられる。
会社のイベント事や仕事内容の配信、「何でも相談窓口」などを設けるなどして、入社前の不安を少しずつ緩和していくことが重要だ。
また、採用面接で話した内容に相違がないように、面接の際は事実をしっかりと伝えることが大切だ。悪い部分はつい隠したくなるが、面接時と入社後に話していた内容と違うと、早期退職につながるので注意が必要だ。
まとめ
就活ルールの撤廃によって、就活と採用のあり方が大きく変わる節目を迎えている。就活ルールの変更は、人事だけでなく企業単位で取り組む必要があるだろう。例えば、インターン制度がなければ作る、就活ルールに従わない採用計画なども事前に対応しておかなければ、人材を獲得できないリスクがあるためだ。
しかし、人物評価に関しては、就活の時期が早まったとしても大きく変わることはない。例え、通年採用が世間的に一般化したとしても、業務に求められる能力や対応は変化しない。これまでの就活の流れの変更だけでなく、人物評価をどのような観点から行っていくのか再度見直してみよう。