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人事担当者必見 就活ルール撤廃とは?就活ルール撤廃による企業や学生にとってのメリットと課題

2019.09.24

 経団連が長年維持してきた、企業の採用活動に関する「就活ルール」。しかし、2021年4月に入社する新卒社員からはこのルールの対象にならないと、経団連が発表した。この動きは「就活ルール撤廃」として、多くのメディアが取り上げている。

 就活ルールが撤廃されることで、企業の採用活動や学生の就職活動に大きな影響が出る可能性がある。そうした中、優秀な人材を確保するため、事前にその影響を理解し対策を考えることが人事担当者には求められる。ここでは、就活ルール撤廃の概要や企業・学生にとってのメリットと課題について見ていく。

目次

●就活ルール撤廃とは
●就活ルール撤廃によるメリット
●就活ルール撤廃による課題

就活ルール撤廃とは

 就活ルールとは、学生が学業に専念する時間を確保することを目的に、企業の採用活動について経団連の会員企業が守るべきものとして定められたルール。しかし、2021年4月に入社する新卒社員からはこのルールが撤廃されることが決まった。就活ルール撤廃の概要や背景を見ていこう。

就活ルール撤廃の概要
 現行では、学生を対象とした原稿募集要項の開示や会社説明会などの広報活動は3月1日から、面接などの選考活動は6月1日から、内定は10月1日からという就活ルールがある。就活ルール撤廃により、こうした採用活動時期の縛りが無くなる。これまで就活ルールの変更は何度か行われてきたものの、ルール自体が廃止されるのは今回が初めてだ。

 2018年9月に経団連の中西会長が就活ルール撤廃の意向を発表。同年10月には、経団連として2021年4月に入社する新卒社員からは同様のルールを策定しないことを正式に決定した。大学生で考えると、2019年度時点での大学4年生は就活ルールの対象となるものの、2019年度時点での大学3年生からは対象とならない。

 経団連に代わり政府主導で就活ルールを策定するという動きもあるものの、法的拘束力がない。そのため、今後は採用活動時期の縛りが弱まっていくことが予想される。

就活ルール撤廃の背景
 就活ルール撤廃の背景として挙げられるのが、ルールの「形骸化」だ。就活ルールはあくまで経団連に加盟している企業を対象としたものであるため、経団連に加盟していないベンチャー企業などはもっと早い時期に採用活動を開始しているという現状がある。また経団連に加盟していても、優秀な学生を早期に確保しようと就活ルールを無視して他社よりも早くに採用活動を始めている企業もあるようだ。インターンシップの時点から優秀な学生にアプローチしている企業もあることで、就活ルールの形骸化はさらに進んでいる。この他、現行のルールでは学生が就職活動にかけられる期間は6カ月程度と短いためミスマッチが起こりやすいということも、就活ルール撤廃の一因だと考えられる。

就活ルール撤廃によるメリット

就活ルール撤廃により、どういった良い影響が考えられるのだろうか。就活ルール撤廃による企業や学生にとってのメリットを見ていこう。

企業にとってのメリット
 就活ルール撤廃により、採用活動時期の縛りがなくなる。そのため、「優秀な学生にこれまでよりも早い時期に接することができる」というのが、企業にとっての一番のメリットだ。絶対に入社して欲しいと思う学生が見つかったら、早い時期に内定を出すことができる。採用活動期間をこれまでよりも長くすることもできるため、時間的制約で実施できなかったユニークな採用方法などを試すことができるようになる可能性がある。また、就活ルール撤廃により通年採用を導入できれば、より多くの学生と接触できるようになるという効果も期待できるだろう。

学生にとってのメリット
 就活ルール撤廃は、学生にとっては就活時期の縛りがなくなるということを意味する。そのため、「就活時期の自由度が高まる」というのが、学生にとっての一番のメリットだ。就活時期を自分で決められるため、インターンシップや長期留学、資格取得などに挑戦できる機会が増えるだろう。また就活ルール撤廃により、就活時期の早期化や就活期間の長期化が予想される。それにより、「早い時期に内定がもらえれば自由に学生生活を満喫できる時間が増える」「より多くの企業の選考に参加できるため、内定の獲得チャンスが増える」「自分のキャリアについてじっくりと考えることができる」「就活をやり直すことを理由とした就職留年が減る」といった効果も期待できるだろう。

就活ルール撤廃による課題

就活ルール撤廃にはさまざまなメリットがある一方で、課題もあると言われている。就活ルール撤廃による企業や学生にとっての課題を見ていこう。

企業にとっての課題
 経団連に加盟していない企業(中小企業・ベンチャーなど)の中には、採用活動時期を経団連の就活ルールとずらすことで、人材を確保しているところも多い。しかし就活ルールが撤廃になると採用活動期間を企業が任意で決められるようになるため、経団連に加盟していない企業はこれまでのような採用戦略が立てづらくなる。その結果、人材確保が困難になる企業が出てくるだろう。また採用活動の長期化が予想されるため、「人件費・会場費など、採用コストがかさむ」「学生の就活期間の終わりがなくなり、内定辞退が増える」といった可能性もある。「採用にかかる経費をどのくらい確保できるか」「どれだけ自社の魅力を学生にアピールできるか」など、企業の採用力が問われそうだ。人事担当者には、2021年の就活ルール撤廃を見据え、採用広報や採用方法の見直しなど、企業の採用力を高めることが求められるだろう。

学生にとっての課題
 就活ルールの撤廃による就活の早期化・長期化は、学生にもさまざまな影響を与える可能性がある。大学側が特に心配してるのが、学生の本分である学業が疎かになるということだ。就活が早期化・長期化することで、学業よりも就活が優先になってしまい、就活と学業の両立が難しくなる学生もいるだろう。この他、「早く内定をもらいたいと思う余り、視野が狭くなり選択肢が狭まる」「アルバイトや友人と過ごす時間など、学生だからこそ自由に使える時間が減る」といったことも予想される。学生にとっては、就活に関する早めの情報収集や学生生活の満喫が重要になってくるだろう。

まとめ

 就活ルール撤廃により、就活期間の縛りがなくなり、就活の早期化・長期化が予想される。企業にとっては「優秀な時期に早く学生に接触できる」といったメリットが、学生にとっては「就活時期の自由度が高まる」といったメリットが期待できるだろう。一方で、企業の人材確保が困難になったり、学生の学業が疎かになったりといった課題が起こる可能性もある。

 就活ルール撤廃により、企業の採用力がこれまで以上に問われるようになることが予想される。採用広報や採用方法の見直しなどをすることで、数年後に迫った就活ルール撤廃に備えてみてはどうだろうか。