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インターンシップ参加学生の奪い合いに? リクルートが24年卒採用と25年卒の見通しを発表

2024.03.08
オフィスのミカタ編集部

株式会社リクルート(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:北村吉弘)の研究機関・就職みらい研究所(所長:栗田貴祥)は、2024年2月20日に学生の就職活動および企業の2024年卒採用活動の実態、2025年卒以降の採用見通し『就職白書2024』を発表した。少ない就職活動期間でも多数の内定が取れてしまい、判断に迷う学生と採用基準を下げてでも人材確保したい企業の苦悩が垣間見える結果となっていた。

24年卒、内定が多すぎて判断に迷う学生多数

24年卒学生の就職活動について、株式会社リクルート 就職みらい研究所(以下、同社)の調査によれば、就職活動期間の平均は7.87カ月(前年比-0.49)、最初の内定取得時期は卒業年次前年の3月が多数という結果となった(※1)。

また内定を2社以上取得した割合は64.7%。内定を複数保有した時期があった割合は89.4%にも及んだ。前年よりも短い就職活動期間で、内定が早めに出されることから決断に迷う学生の苦悩がうかがえる。

「前年に引き続き学生優位の採用状況が続いており、学生は内省を深めきれないまま内定を獲得できてしまう状況とも言えます。そのため、最終的に複数内定の中から『自分に合う会社』を選べばいいのか、判断軸が定まらないまま入社する会社を決定してしまう学生が多いと聞いています」(株式会社リクルート 就職みらい研究所 所長 栗田貴祥氏)

左:株式会社リクルート 就職みらい研究所 所長 栗田貴祥氏 右:立教大学経済学部特任准教授 翁理香氏

「学生と接していても『自分に合う会社を選ぶこと』は非常に難しく苦悩している姿をよく目にします。そんな学生には、まずは『社会との接点を増やすために、いろんな大人に会って話を聞こう』とアドバイスしています。その手段として活用したいのが、インターンシップや企業別または合同説明会。参加する中で自分の中に生まれる違和感やフィット感を言語化することで、自分の中に判断軸ができてくるのではないかなと思っています」(立教大学経済学部特任准教授 翁理香氏)

就職活動は、学生が初めて自分で初めから終わりまで意思決定しなければいけない出来事の一つ。苦悩を抱える学生に、企業としてどういったサポートや工夫ができるか考える余地がありそうだ。

また、苦悩を軽減する企業の取り組みとして「入社予定者への初任配属先を明示した募集」がある。同社の調査によれば、初任配属先の明示は入社後が63%と多数だがその一方で19.9%が配属先を明示した募集を行っているという。最後の1社を選ぶ際に「配属先が決まっていない会社」「配属先が事前に決まっている会社」が残った場合、学生としては、配属先が事前に決まっている方が不安材料が一つ減り、安心して入社できるようだ。

出典元:就職みらい研究所

※1 参考元:就職白書2023(株式会社リクルート 就職みらい研究所)

企業、採用基準を下げてでも人材確保したい声多数

学生優位な採用状況の中で、企業の傾向としては「採用計画に対して採用予定数を充足できた」と回答した企業は36.1%(前年比-4.3ポイント)。一方で「計画よりかなり少ない」と回答した企業は24.6%と3年連続で増加していることが分かった。

出典元:就職みらい研究所

採用数が計画より少ない理由として「選考応募者が予定より少なかった(66.2%)」「内定辞退者が予定より多かった(43.4%)」が上位にあげられている。この背景があるからか、同社の23年卒と比べた24年卒の採用基準は23年卒並が75.8%と最も高かったものの、「ゆるくした(14.1%)」が「厳しくした(5.9%)」を上回る結果に。人材確保のため、多少採用基準を下げてでも人材確保をしたい企業の苦悩がうかがえる。

また採用プロセスについては「面接(対面)」「個別企業説明会・セミナー(Web、対面)」「合同企業説明会・セミナー(対面)」が前年に比べてプラスとなっていた。対面回帰の流れが進んでいるものの、Webなどのオンラインとハイブリッドでの採用活動は引き続き行われそうだ。

出典元:就職みらい研究所

「採用プロセスにおいてオンラインの活用は学生と企業、双方にとってポジティブな側面を持っています。学生にとっては、交通費の削減や移動時間短縮による時間の有効活用。企業は採用活動費の削減につながっているようです。ただ、23年卒から最終面接は対面でやろうという動きがでてきています。意図としては、実際に学生に社内の雰囲気や人を感じてもらうこと。企業としても学生の雰囲気を見て、双方納得した状態で採用したいことがあるようです」(株式会社リクルート 就職みらい研究所 所長 栗田貴祥氏)。

インターンシップの在り方が変わる25年卒、スカウトオファー型の採用増加見込み

24年卒の採用は、企業にとっては依然厳しい状況だったがオンラインとオフラインを使い分けながら人材確保に努めている傾向にあった。

そして25卒の学生から、人事担当者はご存知の通りインターンシップの在り方が変化する。というのも、2022年6月に文部科学省・厚生労働省・経済産業省の合意による「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」を改正した(※2)。これにより25年卒の学生から、一定の要件を満たしたインターンシップについては取得した学生情報を広報活動・採用選考活動に活用することが可能になる。

出典元:令和5年度から大学生等のインターンシップの取扱いが変わります(文部科学省他)

そんなインターンシップ変更元年としてスタートする25卒の採用活動に関して、各企業の対策はどうなっているのだろうか。

同社の調査によれば、25卒向けキャリア形成支援プログラム(※3)は、タイプ1「オープン・カンパニー」の割合が90.1%と大多数を占めている。インターンシップと称して実施されるタイプ3「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」とタイプ4「高度専門型インターンシップ(試行)」の割合は約50%と半数以上の企業がインターンシップを行う見通しだ。

出典元:就職みらい研究所

またタイプ3「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」においては条件が5日以上ということもあり、実施予定時期は8月、9月がそれぞれ半数以上と多い結果となっている。今後はインターンシップで出会った学生を採用につなげる「スカウトオファー型」の採用も増えていくだろう。

「インターンシップの名称で実施できる条件として、実施期間の半分を就業体験に充当すること、社員がフィードバックを行うこと、卒業・修了前年度以降の長期休暇中に行うことなど一定の要件があります。学業にあまり差し支えない形でインターンシップが行われることから、質の高いインターンシッププログラムが増えつつあります。インターンシップで得た情報を広報活動や採用選考活動に使用できることもあり、企業側は採用を視野に入れた、学生個人個人の能力の見極めが必要になると思います」(株式会社リクルート 就職みらい研究所 所長 栗田貴祥氏)

出典元:就職みらい研究所

※2 出典元:令和5年度から大学生等のインターンシップの取扱いが変わります(文部科学省他)
※3キャリア支援プログラムとは、インターンシップをはじめとする、オープン・カンパニー、キャリア教育を含むキャリア形成支援に係る取り組みの総称
※4 出典元:オープン・カンパニーとは?実施内容や特徴、インターンシップとの違いを紹介(株式会社リクルート)

まとめ

文部科学省他は、インターンシップ等の学生のキャリア形成支援に係る取組を採用活動ではありませんと明記している(※5)。しかし、一定の基準を満たすインターンシップ(タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ)で取得した学生情報を広報活動や採用活動選考活動の開始時期以降に限り使用できることから「採用を前提としたインターンシップ」としてインターンシップの位置づけが25卒から本格的に変化している。

実際にインターンシップ終了後に早期選考案内を行う企業もあることから、インターンシップに対する取り組みや学生への周知が重要となりそうだ。また新たな採用の取り組みとして株式会社ナイルでは、学生が面接担当者を選べる「選べる面接官」を実施し学生と企業双方で理解しあえる制度を実施しているという(※6)。

採用充足などに悩む企業側に、学生側への影響を考えながら、どんな姿勢や方法で採用活動を行うべきかについて、栗田氏は「企業の皆さんは、採用充足の観点だけではなく、入社後の活躍も見据え、学生との対話を深めるキャリアアドバイザー的な立ち位置で、個人のこれからの働き方や、仕事を含めた人生を一緒に考えていく姿勢が求められると思います」と話した。

学生の就職活動に対する動向を追いつつ、自社と学生の相互理解ができるようなインターンシップや採用について考え、人材確保に努めたいところだ。

※5 出典元:令和5年度から大学生等のインターンシップの取扱いが変わります(文部科学省他)
※6 出典元:学生が面接担当者を選ぶ「選べる面接官」で、より密度の高い理解とコミュニケーションを目指す(ナイル株式会社)