人事総務担当者必見 東京オリンピック・パラリンピックが仕事に与える影響と企業として取り組むべきこと
2020年夏に開催される東京オリンピック・パラリンピック。大会期間中は、約1000万人が東京にやってくると言われている。多くの人が東京に集まることで特需が期待できる一方、仕事への影響も危惧される。
人事総務担当者としては、仕事への影響が最小限になるよう、事前に対策を検討する必要がある。ここでは、東京オリンピック・パラリンピックが仕事に与える影響と、企業として取り組むべきことについて見ていく。
目次
●東京オリンピック・パラリンピックが仕事に与える影響
●企業として取り組むべきこと
東京オリンピック・パラリンピックが仕事に与える影響
2020年夏の東京オリンピック・パラリンピック期間中の集客予想は、約1000万人。東京都の発表によると2019年9月時点での東京都の人口は1400万人弱のため、大会期間中の東京都の人口は約2400万人となる見込みだ。東京都の人口が約1.7倍になることで、宿泊・飲食・観光などの特需が期待される一方、仕事に深刻な影響を与える可能性がある。東京オリンピック・パラリンピックが仕事に与える影響を見ていこう。
交通機関の大混雑により、通勤や移動が困難になる
まず懸念されるのが、交通機関の大混雑だ。東京オリンピック・パラリンピック期間中は、会場周辺の一部路線では混雑率が200%ほどになると予想されている。通勤・帰宅ラッシュと重なる朝晩だけでなく、競技の開始前後など日中も、交通機関の混雑が見込まれる。そのため、「いつも通りの時間に家を出ても、遅刻してしまう」「社外での会議や営業に間に合わなくなる」といったように通勤や移動が困難になる可能性がある。
宿泊先の確保が困難なため、東京への宿泊を伴う出張がしにくくなる
東京オリンピック・パラリンピック期間中は、競技を観戦するために、新幹線や飛行機を使って東京に来る旅行者も多い。そうした遠方からの旅行者の多くはホテル・旅館などに宿泊するため、大会期間中は宿泊先の確保が困難になるとされている。そのため、東京に本社・支店や取引先がある地方の企業は、東京への宿泊を伴う出張がしにくくなるだろう。
荷物の集荷・配達が遅れることで、業務や業績に影響する
東京オリンピック・パラリンピック期間中は、公共交通機関の他、会場周辺の道路の混雑も予想される。そのため、荷物の集荷・配達が遅れる可能性がある。期限内に荷物の集荷・配達してもらえなくなることで、「部品が届かず、製品を作れない」「取引先・顧客の指定した日時に荷物が届かず、トラブルになる」といったように日々の業務や企業の業績に悪影響が及ぶだろう。
特需が予想される業種では、必要な人材の確保が困難になる
東京オリンピック・パラリンピック期間中は、宿泊業・飲食業・観光業などで特需が予想されている。企業にとって、特需は業績アップに直結するものだ。しかしその反面、特需に対応できるだけの人材を確保しなければならないという課題もある。また大会期間中は、「競技観戦のために休みを取りたい」と考えている社員もいるだろう。そのため、必要な人材の確保がいつも以上に難しくなる可能性がある。
企業として取り組むべきこと
東京オリンピック・パラリンピックに向けた対策を何もしなかった場合、「通勤が困難になる」「宿泊を伴う出張がしにくくなる」「人材の確保が困難になる」といった影響が出る。それにより、取引先・顧客とのトラブルが増えたり、別拠点で働く社員同士のコミュニケーションが取りづらくなったりといったことも予想される。そうした影響を最小限にとどめるためには、2020年夏を迎える前に、大会期間中の対策を考えておく必要がある。東京オリンピック・パラリンピックに向け、企業として取り組むべきことを見ていこう。
テレワークの推進
大会期間中は、公共交通機関の大混雑により通勤が困難になると予想されている。そうした状況を解決するためには、公共交通機関を使って通勤する社員を減らすことが一番効果的と言えるだろう。そこで企業として取り組むべきなのが、「自宅での在宅ワーク」「コワーキングスペースやカフェなどでのリモートワーク」といったテレワークの推進だ。
実際に2012年のロンドンオリンピックでは、政府の呼びかけによりロンドン市内の企業の約8割がテレワークを実施。それにより、交通機関の混乱を回避できたようだ。
日本でも、株式会社リコーが「本社勤務2000名の一斉リモートワーク」を、レノボグループ4社が「全社一斉テレワーク」を決めるなど、東京オリンピック期間中のリモートワークを推奨の動きが広がっている。テレワークでの業務が実現できそうな企業は、大会期間中の活用を検討すると良いだろう。
(参考:『リコー、本社勤務2000名が一斉にリモートワーク!? 東京オリンピック開催に備え、「働き方改革」を推進』、『オリンピック期間中の全社テレワークの動きが広がる。レノボグループも2000人の一斉テレワークを実施。』)
フレックスタイム制・時差出勤の導入
交通機関の混乱を回避する方法としてはテレワークの他に、出勤・退勤時間のピークから外れる時間での公共交通機関の利用も挙げられる。日中もいつも以上の混雑が予想されるものの、朝晩ほどの大混雑にはならないだろう。そこで企業として取り組むべきなのが、好きな時間に出勤・退勤できる「フレックスタイム制」や出勤時間を前倒し・後ろ倒しにする「時差出勤」の導入だ。
「全員が揃わないと会議がしづらい」といった理由から、フレックスタイム制や時差出勤の導入に慎重な企業もあるだろう。しかしそうした問題は、全員が必ず働く時間帯である「コアタイム」を設けることで解決できる。取引先への影響なども考慮した上で、フレックスタイム制・時差出勤の導入を検討しよう。
Web会議の導入
大会期間中は、宿泊先の確保が難しくなるため、宿泊を伴う出張がしにくくなると予想される。とは言え、東京に本社・支店や取引先がある地方の企業としては、何らかの形で東京にいる人たちと話し合いたいこともあるだろう。そこで企業として取り組むべきなのが、Web会議の導入だ。Web会議では、通常の会議のように1カ所に集まる必要がないため、遠方で働く社員がわざわざ東京まで出向く必要がなくなる。コスト削減効果も期待できるWeb会議の導入を検討しよう。
休暇取得の推進
仕事を休む社員が増えれば、その分、公共交通機関の混雑は減る。大会期間中の休暇取得を促すことも、企業として取り組むべきことの1つだ。実際、レノボグループは2020年7月23日から8月10日までの19日間で2日の「スポーツ応援特別休暇」を設けることを決めている。有給休暇やリフレッシュ休暇をできるだけ取得してもらうよう、社員に呼びかけよう。
(参考:『オリンピック期間中の全社テレワークの動きが広がる。レノボグループも2000人の一斉テレワークを実施。』)
業務スケジュールの調整
大会期間中は、交通網の混乱により荷物の集荷・配達の遅れが予想されている。そこで企業として取り組むべきなのが、業務スケジュールの調整だ。「前倒しで作業スケジュールを組む」「納品スケジュールに余裕を持たせる」といった対応を、現場で働く社員と共に検討しよう。
早めの人員確保とシフト調整
オリンピック・パラリンピックによる特需が予想される業種では、大会期間中、人手が不足する可能性がある。そこで企業として取り組むべきなのが、早めの人員確保とシフト調整だ。まずは、接客などの対応に1日あたりどのくらいの人員が必要になるのかを考えよう。その上で、「新しい人材を確保するための採用計画を立てる」「スタッフの予定を早めに聞き、早めにシフトを決める」といった対応をするのが望ましい。
まとめ
2020年夏に迫った東京オリンピック・パラリンピックに向けて企業は何も対策を行わないと、仕事に深刻な影響が及ぶ可能性がある。そうした状況を回避するため、「テレワークの推進」「フレックスタイム制・時差出勤の導入」「Web会議の開催」など、できることから始めてみてはどうだろうか。