いま注目されているタレントマネジメントとは?背景・目的・ポイント紹介!
人材の管理はどのような企業でも重要な課題の一つだが、そんな人材の管理に圧倒的な効果を発揮することで知られているのがタレントマネジメントと呼ばれるものだ。タレントマネジメントの目的は手法を正しく理解することで、社内に導入する人材配置や人材育成に役立てることが可能とされている。
今回はそんなタレントマネジメントがどのようなものなのか、背景や目的、導入する際のポイントも踏まえて解説していく。
タレントマネジメントとは
タレントマネジメントのタレントとは、能力や資質、才能を意味している。このためタレントマネジメントとは、従業員が持つスキルやステータスなどの情報を人材管理の一部として、人事配置や人事開発に活用することを言う。
ここでポイントとなるのが、学歴などの基本的な情報だけではなく、経験値や資質、才能などの個人のタレントを追加情報として従業員の情報を更新・管理することだ。そうすることで基本情報だけでは判断できない従業員の業務に対する適性を見極めることができ、適切な人材配置を検討することが可能となる。
また、既存のデータにどのようなノウハウを植え付けていくことが重要なのか分かりやすくなるため、人材育成や人材配置をする上で役立つ。
注目されている背景
タレントマネジメントは多くの企業で注目を集めている背景には、価値観の多様化や経営戦略の変化、そして労働市場の変化がある。
従来の日本では終身雇用制度や年功序列の考え方が強く根付いており、従業員が自分の考えやタレントではなく会社に合わせて働くという考え方が一般的だった。このため人材は企業組織の歯車であると考えられ、人材そのものを活かしていくためのタレントマネジメントは注目されることはなかった。
そのような状況に変化が見られたのは2011年頃で、きっかけは欧米のとある企業が掲げた人材育成競争というキーワードだ。
これにより働き方について考える人が増え、仕事に対するやりがいや仕事の社会的意義など仕事に対する様々な価値観が現れた。さらにテクノロジーが急速に進化・変化したことで事業もめまぐるしく変化し、正確な予測が困難となった。結果として能力などを踏まえた適材適所な人材配置が必要となり、従業員の能力を把握・管理する必要性が生まれたのである。
ほかにも労働者の流動化や少子化による人口減少の影響も大きく、採用が年々厳しくなってきているからこそ、適切かつ効果的な人材配置や人材育成が求められるようになったのだ。
導入する目的
多くの企業で注目され、導入が進められているタレントマネジメントだが、導入する目的を理解しておかなければその効果を把握できずにうまく運用・活用することは難しい。タレントマネジメントを導入する目的・効果としては主に「人材育成への活用」・「人材戦略への活用」・「経営戦略への活用」の3つが挙げられており、ここからはそれぞれの目的・効果について解説していく。
人材育成に活用する
効果的な人材育成をするためには、社員1人1人が持つキャリアプランを把握するとともに、社員の希望するスキルや経験が得られるようにキャリアデザインの設計をする必要がある。こうすることで社員のモチベーションを維持向上させることができるほか、社員が持っているタレントやスキルを把握した上で育成に必要な次の課題を見つけ出すことができる。
また将来リーダーになり得る資質やその可能性を早期に発見することができるので、その資質や可能性に応じてリーダー育成用のプログラムを与えることも可能だ。
このようにタレントマネジメントは社員の能力やタレントだけではなく現在のレベルに応じた育成プログラムや課題を与えることで、より効果的に人材育成に活用することができる。
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人材戦略に活用する
人材を効果的に育成できたとしても、人材配置を誤ってしまうと個々のパフォーマンスを最大限に活かすことは難しい。この時タレントマネジメントを活用することで、個々の社員が持つスキルや知識などのパフォーマンスを可視化して把握することが可能となる。そうすることで配置する業務や部署に何故その人材を配置することが効果的なのか根拠に基づくことができるため、適切な人材配置をしやすくなるのだ。
またすでに採用した社員だけではなく、今後採用する予定の人材についてもタレントマネジメントを活用することができる。
企業によってどのようなスキルや特徴を持った人材が必要になるのか事前に把握しておけば、採用の際も効率よく必要な人材を見つけやすくなる。その結果、採用後にスムーズな人材配置を実践できるという効果も期待できるのだ。
経営戦略に活用する
経営目標を実現するためには経営戦略が不可欠であり、経営資源の中核である人を活用するための組織作りはタレントマネジメントの大きな役割となっている。
そのためには人材を最大限に活かす仕組みづくりが重要と考えられているのだが、ここでポイントとなるのが社員のモチベーションの維持とストレスの把握だ。社員がこれまでに培ってきたスキルと今後のキャリアビジョン・キャリアプランを把握しておくことは、人材育成の上でも必要ではあるが、経営戦略を考える上ではさらにキャリアビジョンを実現させるために持っておいた方がいいスキルも把握しておく必要がある。そうすることで今後必要なスキルを取得するためにフィットした環境や求めている環境に身を置かせることができ、社員自身のモチベーション維持向上につなげることが可能だ。
また社員個人だけではなく社内全体の社員に不足している分野を把握することもできるため、その分野を補うために必要なスキルや人材を洗い出すこともできる。ほかにも社員が社内で抱える悩みやストレスもタレントマネジメントを活用することで把握しやすくなり、適切に対処していけば悩みやストレスが原因での人材の流出予防にもつながる。
成功させるポイント
このように人材配置や人材育成に関する目的・効果を持っているタレントマネジメントだが、ただ導入すれば必ず成功するというわけではない。タレントマネジメントを成功させるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要がある。
ここからはタレントマネジメントを成功させるためのポイントとして、「目的を明確にし組織を見直す」・「人材要件を明確にする」・「タレントを把握する」の3つについて解説していく。
目的を明確にし組織を見直す
タレントマネジメントは、経営戦略を人事面から支えて実現させるためのものだ。そのため、まずは経営戦略を実現させるためにどのような人事戦略を立てるのか、目的を明確にしておかなければいけない。簡単に言ってしまえばタレントマネジメントを導入して経営にどのように活かしていくのか、何を実現したいのかという部分を明確にしておくのだ。
また目的は長期的な視点で考える必要があり、経営者自身がその目的や方針を明らかにすることで組織全体の仕組みを見直していくことが大切である。
ここで注意しておかなければいけないのは、タレントマネジメントを導入することで人事部にこれまで以上の負担がかかってくる点だ。タレントマネジメントは従来の基本情報だけではなく社員1人1人のスキルや経験などの細かな部分も把握・管理していかなければいけないので、従来の人事部の構成では対応できなくなる可能性もある。そのような場合は人事部の増員を検討したり、簡単な仕事はアウトソーシングで委託するなどの対応を考えることも大切だ。
人材要件を明確にする
またタレントマネジメントは企業に必要な人材要件を達成するためのものなので、どのようなタレントがどこにどれだけ必要となるのか明確にする必要がある。明確にする人材要件は曖昧な内容ではなく、スキルや性格、経験や特徴などを具体的に検討することがポイントだ。そうすることで人材要件に合わせた人材のデータを集約・蓄積して一元化することができ、人材要件に合わせた人材の採用だけではなく人材育成に活用することができる。また人材要件は短期的な事業目標を達成できる人材と、長期的な事業目標を達成できる人材それぞれを明確にしておくことも必要だとされている。
タレントを把握する
人材要件を明確にした後は、既存の社員の中で人材要件を満たしている人材がどの程度いるのかタレント数値を把握しておくことも重要だ。そうすることで現在どの程度人材要件を満たす社員がいるのか把握できるだけではなく、足りない人材要件を満たすためにどの程度の新しい人材が必要なのか・新しい人材が補充できない場合はどのように既存の社員を教育していくのかという課題を見つけ出すことができる。数値化することは第三者からも評価しやすくなるので、よりスムーズな把握・対応が可能となるのだ。
またタレント数値を把握するためには定期的にタレントの情報をアップデートしていくことも重要で、関係する部署間での情報共有がしやすい環境を整えることが大切である。
タレントマネジメントを導入してみよう
タレントマネジメントは変化していく日本のマネジメントシステムの中で注目されているもので、人材を適材適所に配置したり人材育成のガイドラインを作るために必要だ。ただ目的や効果を把握せずに導入するのではなく、正しく目的や効果を把握することが必要である。その上で経営戦略に応じた人事戦略を立て、企業の成長をアシストしていくことが導入に成功するためのポイントなのだ。
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