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リスキリングより先にすべきことがある! キャリア自律のトレンド【Wantedly新機能発表会より】

2024.03.15
オフィスのミカタ編集部

ビジネスSNS「Wantedly」を運営するウォンテッドリー株式会社は、新機能となる「性格診断」の詳細やウォンテッドリーの今後の展望について発表するメディア発表会を2024年3月12日に実施した。また、新機能に携わった株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役 伊達洋駆氏による「キャリア自律」と「働き方」のトレンドについても解説。トレンドの一つ、リスキリングを企業で推進する前に人事担当者が行うべきことについて話を伺った。

リスキリング、誰にとって、必要なの?

社会的にも政府でも推進されはやっている「リスキリング」。株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役 伊達洋駆氏(以下、伊達氏)によれば、人事向けイベントのうち1~2割に「リスキリング」というワードが入っているという。それだけ注目されているワードではあるが、いまいちピンと来ていない人事担当者もいるだろう。

「リスキリング」とは、新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること(※1)。新しいことを学ぶために職を離れることが前提となる「リカレント教育」とは違うことに注意したい。

リスキリングがこれだけ注目されるようになった背景は、テクノロジーの進展が大きいという。 「生成AIをはじめとするさまざまな技術が発展する中で、失業が生まれるのではという懸念があります。その懸念に対する対応策としてリスキリングが注目されています」(伊達氏)

株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役 伊達洋駆氏

マッキンゼー・グローバル・インスティテュートが行った調査「未来の日本の働き方」への示唆においても、技術の進化に伴い、2030年までに既存業務のうち27%が自動化される見込みだとしている(※2)。そのため企業側でも従業員向けにe-ラーニングの提供や社外研修の提供など、リスキリングに取り組む企業も増えてきているようだ。

現在働いている領域以外のスキルを得て、その領域でも働けるようになる過程を作るリスキリング。働き方が多様化する中でこれからの働き方においては、個々の能力を高めるためにも重要な要素となり得そうだが、現状はそう簡単に進んでいないという。

※1 出典元:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流(経済産業省)
※2 出典元:The future of work in Japan(マッキンゼー・グローバル・インスティテュート)

うまくいかない原因は、企業側と従業員側のコミュニケーション不足に?

リスキリングがうまく進まない原因として、伊達氏はこう語る。

「リスキリングの動機が受動的になっていることが一つの要因としてあげられます。企業側がスキルを身につけてくださいと従業員へ提案をするため、従業員側は『会社に言われたから』という、やらされ感が強くなりなかなか定着しないという課題があるようです」

リスキリングを推進するより前に企業側は、従業員側からなりたい人材像と学びたいスキルを聴取する必要がある。自発的な動機があって初めてリスキリングは成立するものだと言えそうだ。その意味でも、キャリアを会社ではなく自分自身で作っていく「キャリア自律」の考え方は重要になっていくという。

「コロナ禍以降、働く場所や時間の多様化が進んでいます。今後もその傾向は続くと予測されますが、その中で自分はどんな働き方をしたいのか、を自らが選択することがこれからの働き方を考える上では重要です」(伊達氏)

まずはキャリア自律のための支援から

人事担当者としては、従業員の意向を聞いた上でリスキリングを通した支援を行えばいいのでは? と考えてしまうが、その前にすべきことがあるという。

「労働者の働き方・ ニーズに関する調査(中間報告)によれば、将来の働き方についてなりゆきにまかせたい、わからないと回答する人が5割を超えています。従業員本人、企業としての支援の方向性を定めるためにも、従業員の意向を聞く前にキャリア自律のための支援が求められています」(伊達氏)

画像元:労働者の働き方・ ニーズに関する調査について (中間報告)厚生労働省

キャリア自律の方向性を定める要素:自己理解と自己開示

キャリア自律支援を進めていくには、自己理解と自己開示が必要だという。

「自己理解を通して、自分の強み、弱みを理解することはキャリアの方向性を描く際に大いに役立ちます。また仕事はチームで行うので、自分のことを周囲に知ってもらう自己開示も重要です。キャリア自律というと1人で進めていくと思われがちですが周囲の協力を得ながら、いかに方向性を定めるかが今後の課題です」(伊達氏)

ウォンテッドリー株式会社CEO 仲暁子氏

この自己理解を助けるツールとして、今回ウォンテッドリー株式会社(以下、同社)から発表された「性格診断」。同社CEO 仲暁子氏(以下、仲氏)はリリースについて「労働人口が約6902万人(※3)、企業数が約368万社(※4)ある中で現在の採用市場はいまだ、スカウト形式でいわば勘と経験で求職者との出会いを創出している状況です。これを今回テクノロジーの力で以前発表したスキルと今回の性格・コンピテンシーと合わせて1名あたり70時間かかる採用時間を95%節約し、企業と人がお互い納得した形でマッチングできればと考えています」と採用の現状とともに今後の展開を語った。

性格診断などの自己理解ツールや診断結果等を共有する自己開示を通してキャリア自律の一歩を踏み出す支援が企業側には求められていくだろう。そういったキャリア自律で従業員と企業の方向性が定められてから、リスキリングを行うとより効果が期待できそうだ。

※3 出典元:第1 就業状態の動向 1 労働力人口(総務省統計局)
※4 出典元:令和3年経済センサス‐活動調査 産業横断的集計「事業所に関する集計・企業等に関する集計」 結果の要約 (総務省)