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再雇用制度って何をすればいいの?企業側のメリットや利用できる助成金

2020.05.15

定年制度を採用する企業にとっては、定年後の継続雇用制度は法的な義務であると同時に、合理的な人員確保にもなる制度である。特に定年後再雇用制度は多くの企業で導入されている。定年後再雇用制度とはどのような制度なのか?導入にはどのような手続きが必要なのか、導入することによってどのようなメリットがあるのかを詳しく解説する。

定年後再雇用とは

企業で人事を担当する方なら定年後再雇用という言葉をよく耳にしていることだろう。実際にそういった制度に関心を寄せる人も多いと思う。ここでは、そもそも定年後再雇用という制度がどのようなものなのかを詳しく解説する。

定年後再雇用制度の概要

高齢者雇用安定法では定年を定める場合には60歳を下回ることはできないと規定されている。そのため多くの企業では60歳~65歳定年制を採用している。定年制のある会社では定年の年齢を迎えると社員と会社の雇用関係は終了する。定年後再雇用制度とは定年後一旦雇用関係が終了したのちに再び雇用することを指す。定年後再雇用に関してはその後の給与や役職などの様々な問題がある。また法律的な定めもある。人事担当者は円滑に効率的に制度を運用するために制度内容を詳しく把握する必要がある。

定年後再雇用の背景

過去には、一般的なサラリーマンは定年後は厚生年金を受け取りながら悠々自適を目指す人も多かった。田舎へ移住したり趣味に没頭できる日々を目指して頑張るという考え方もあったのだ。しかし、日本が高齢化社会に突入していくと定年後の厚生年金の受給期間が非常に長期におよぶようになった。そこで平成25年から厚生年金の受給開始年齢が従来の60歳から65歳までに引き上げられたのである。こうなると困るのは、65歳未満で定年を迎える人たちだ。例えば60歳定年の会社で働いている場合。60歳で定年を迎えると5年間は収入が途絶えてしまうことになる。

もちろん、定年後再就職という手段もあるが実際に60歳になってから再就職先を見つけるのは容易ではない。預金が多い人や資産を持つ人ならまだしも一般サラリーマンとして暮らしていた人が5年もの間無収入で暮らせるはずもないのである。多くの場合は困窮してしまう。この問題を改善するために布かれた法律が高年齢者雇用安定法だ。この法律で定年を65歳未満とする企業は希望者全員を雇用することが義務付けられたのである。企業としてはこの義務をどのように形で果たしていくのかが大きな課題になった。定年後再雇用制度は企業側からも従業員側からも有意義な制度として導入する企業が増えている。

「継続雇用」との違い

「継続雇用」とは定年後も継続して雇用すること全般を指す言葉である。従来、定年後に継続雇用するかどうかは企業側の裁量に任されていた。しかし、平成25年以降希望者全員を継続雇用することが義務付けられた。高齢者雇用に関しては、厚生労働省は定年を65歳までに引き上げる、または定年制度自体を廃止するなどの方法を掲げている。継続雇用制度の導入もその一環である。継続雇用制度には勤務延長制度と再雇用制度との二つがある。勤務案超制度とは定年で退職とせず引き続き雇用する制度であり、再雇用制度とは定年で一旦退職として新たに雇用契約を結ぶことである。

したがって定年後再雇用制度の場合は、退職金制度がある企業では定年退職時に退職金を支給することになる。その後、給与面や労働時間、配属部署なども新たに検討されることとなる。

定年後再雇用の企業側のメリット

定年後再雇用は企業にとって多くのメリットがある。例えば、技術や研究開発、商品知識などの豊富さである。大学卒業の22歳で新入社員として入社した人が60歳定年を迎えるときには、勤続38年に及ぶ。この間、会社のあらゆる部署を歴任し技術や商品知識を習得するわけである。社内のルールや規定などもよく理解している。新人を採用するよりははるかにスムーズに業務がはかどる。特に人手不足の時代には採用には大きな労力が必要だ。定年後再雇用制度があれば、新規採用にかかる大きな労力を削減できる。

また採用までに時間がかかればその間、欠員が出ることにもなる。せっかく採用しても仕事が合わなければ早々に退職してしまうことにもなりかねない。定年後再雇用であればこのようなリスクが回避できる。雇用される側としては慣れた職場で働くことができるという大きなメリットがある。このメリットはそのまま企業のメリットにつながる。安定感のある人材が職場にいることで職場の雰囲気も安定する。取引先との関係においても同様のことが言える。取引先と長い間良好な関係を気づいてきた人物がそのまま続投するとあれば取引先から見ても安心感がある。再雇用期間中に後進をじっくり育てることもできるのである。

企業側は働きやすい環境を整えることも重要

定年後再雇用制度を円滑に導入するためには環境の整備は無くてはならない条件になる。再雇用後の勤務場所が遠隔地になったり、就業時間帯が大きく変わるようでは環境に順応出来ない可能性がある。また、定年前と全く違う業務についたのでは今まで培った能力が生かせなくなってしまう。再雇用された人々は働く意欲をなくしてしまうのである。せっかく雇用するなら意欲を持って働いてもらうことが企業にとっての利益になる。高年齢者が意欲的に働き続けられるように勤務形態を柔軟にすることも大切である。高年齢者に適した業務を選び出すなどで高年齢者の職域を拡げることも重要だ。

また、作業設備を改善することによって高年齢者の負荷を軽くすることも考えられる。高齢化社会においては高年齢者を有効に活用することが安定した労働力確保につながる。

従業員とトラブルにならないために!定年後再雇用の注意点

定年後再雇用においては労働条件や給与などの再考が必要になる。トラブルが起こりやすいのが条件面での行き違いだ。これらは労使が協議して定める事柄である。再雇用を希望する人たちの雇用を安定させ、なおかつ企業にとっても有益でトラブルのない再雇用にするためには高年齢者に対する適切な職業訓練は非常に重要だ。高年齢者によっては商品知識や業務経験が豊富なのに、パソコンや通信機器の知識がないこともある。このような場合には、それらがうまく使えるような職業訓練をすることによって高齢者の経験や知見を活かすことができる。機器の問題に限らず職場に必要な職業訓練を実施することは非常に重要である。

雇用形態について

定年後再雇用では定年前と同じ待遇で雇用することは義務付けられていない。再雇用では雇用形態を見直すのが一般的である。考えられる雇用形態としては、嘱託、パートタイマー、アルバイトなどがある。これらの雇用形態では、勤務時間、勤務日数、賞与に対する規定も定年前とは変わる。高年齢者の健康状態や希望なども十分考慮して決めなければならない。ただし、どの雇用形態になっても労災保険は適用される。そのほかの雇用保険、健康保険、厚生年金保険などは勤務時間や勤務日数によってそれぞれ規定がある。有給休暇制度も適用される。

賃金について

定年後再雇用制度では雇用形態が変わると同時に賃金形態も変化する。一般的には加齢による体力の低下や効率の低下などが考えられるため定年退職前の50~70%程度の賃金になることが多い。労働日数が少なくなったり労働時間の短縮などを考えあわせると賃金の低減はやむを得ないものである。その場合、高年齢者の生活の安定性にも配慮して段階的な調整が望まれる。もし、労働条件を全く軽減しないまま責任度合いも定年前と同じにした場合には賃金を減額した再雇用契約は無効になることもある。

契約更新期間について

定年後再雇用制度で多いのは嘱託といわれるフルタイムの有期契約である。契約更新期間は1年間が多い。しかし高年齢者雇用安定法の趣旨から見れば年齢だけの問題で正規雇用されないのは不合理と言える。定年後と言えど嘱託社員として再雇用を繰り返して5年が経過すれば無期転換ルールが適用される。従業員から申し込まれた場合は無期労働契約に転換しなければならない。無期転換ルールの適用対象外にするためには都道府県労働局の認定を受ける必要がある。認定を受けるには定年後再雇用者の「雇用管理に関する計画」を作成して申請する。

就業規則の見直しを

定年後再雇用制度を導入する場合には制度を就業規則に盛り込む必要がある。例えば定年後再雇用しないといった定めがある場合にはこの項目を削除しなければならない。また新しく定めた定年後再雇用制度を就業規則に加える。この場合経過措置として3年ごとに継続雇用対象者を引き上げていく場合には、その都度就業規則を変更する。常時雇用労働者が10人以上の事業所においては、労働者の過半数が加入する労働組合、または、労働者の過半数を代表するものの意見書を添えて所轄の労働監督基準局に届け出なければならない。

就業規則の変更と変更した就業規則を労働監督基準局へ届けて初めて定年後再雇用制度の導入が完了したといえるのである。

助成金も活用しよう

高年齢者雇用促進のための企業向けの助成金があるのをご存じだろうか。企業にとっては非常にありがたい制度なのでここでご紹介する。特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)はハローワークの紹介を受けたときに受けられる助成金である。雇い入れ日の満年齢が65歳以上でなおかつ1年以上継続して雇用することが確実な場合に受けられる。特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は60歳以上の就職困難者をハローワーク等の紹介で雇い入れた場合に受けられる助成金だ。この場合には雇用期間の定めは無く継続雇用が要件になる。

65歳超雇用推進助成金は定年を65歳以上に引き上げた場合は65歳超継続雇用促進コースとして、高年齢者の雇用管理制度の整備をした場合は高年齢者評価制度等雇用管理改善コース、高年齢の有期契約労働者を無期雇用に転換した場合高年齢者無期雇用転換コースとして申請すれば助成金を受取ることができる。定年後再雇用制度の導入は高年齢者の雇用管理制度の整備にあたる。ただし、どのコースにもそれぞれ条件が定められている。これらの助成金制度を詳しく調べて申請すると人員の確保をしながら人件費の削減にも成果を上げることができるのだ。

トラブルのないようルールをしっかり確認

定年後再雇用制度は高年齢者雇用確保の観点からも企業にとっても有意義なことが多い。しかし、一方的な条件を押し付けるような方法ではトラブルのもとになってしまう。法律的なルールをきちんと確認したうえで行わなければならない。高年齢者の生活やそれまでの実績や経験に配慮した業務内容や配置を行うことでトラブルの防止につながるのである。

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