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ワークライフバランスとは?ワークライフバランスを見直してみよう!

2020.07.09

「ワークライフバランス」という言葉が様々な場所でよく聞かれるようになったが、それはこれまでの日本人の働き方を政府が見直すようになったことによるものだ。ではワークライフバランスとは一体どういうものなのか、そしてなぜ注目されているのだろうか。ここではワークライフバランスの基礎知識や、導入するための取り組みなどについて紹介する。

1.ワークライフバランスとは?

 ワークライフバランスとは、ワーク(仕事)とライフ(生活)のバランス(つり合い)を取ることをいう。端的に言えば「仕事と生活の調和」ということだ。この概念は1980年代に欧米で生まれた。当時の欧米では労働時間が長く、一方で子育ての負担もあって労働者は大きなストレスを抱えていた。そうした問題を解決するために提唱されたのが、ワークライフバランスである。

ワークライフバランスというと、仕事の負担を減らして育児や介護などの家庭生活を円滑にできるようにするもの、という解釈をされがちだが、「ライフ」とは家庭生活の負担だけを指す言葉ではない。新しいことを学んでスキルを身に着けたり、趣味にいそしんだり、心身ともにリフレッシュして英気を養う等、私生活を充実させることで仕事での生産性も向上する、という相乗効果も狙ったものである。

仕事のために私生活を犠牲にする、という旧来の偏った働き方ではなく、仕事もプライベートも充実させることでより豊かな人生を目指す、というのがワークライフバランスの目的だ。

2.ワークライフバランスが注目される理由

では、なぜ今ワークライフバランスが注目されているのだろうか。その理由について詳しく解説する。

2-1.労働時間が増えたため
 ワークライフバランスという概念が生まれた1980年代の欧米がそうであったように、日本でも労働時間が増加することで労働者の負担が非常に大きくなるという問題が起こっていた。長時間の労働は心身の健康を損ね、やがては仕事自体続けていくことができなくなり、休職や離職を余儀なくされるというケースも少なくない。「過労死」という言葉が世界で通用するようになるといった不名誉なことも起こっており、働き過ぎはもはや看過できない問題だ。

労働者が体を壊して辞めていくと、職場は人手不足になる。特に中小企業では人員の補充も難しく、深刻な問題だ。残った少ない人員で無理に仕事を回していけば、労働者の負担はますます増大し、さらなる退職者が出てしまう恐れもある。ワークライフバランスを整えて生活を充実させることは、仕事の効率アップや生産性の向上に加え、人手不足解消のためにも重要なことなのだ。

2-2.少子高齢化のため
 現在、日本では少子高齢化が急速に進んでおり、大きな社会問題となっている。その少子高齢化を招いた大きな原因の一つが、日本の社会に蔓延している「仕事第一」という考え方だ。仕事が何よりも優先されるという考えの元では、出産や育児に対する理解は得られず、女性の中には子供を取るか仕事を取るかの二者択一を迫られる人も少なくない。子育てしながら仕事をするという環境も十分に整っているとは言えない中、仕事のために出産をあきらめる女性が増えていることは少子化の大きな一因となっている。

私生活を充実させるというワークライフバランスの考え方においては、出産や育児も尊重されるべきものだ。したがって、企業の中でワークライフバランスに対する理解が進めば、こうした問題を解決することが可能になる。

2-3.人材流出を防ぐため
 少子化や経済の停滞などを背景に、かつて日本では常識だった「終身雇用」も終焉を迎えつつある。年功序列により長く勤めれば順調に給与が上がっていくことが保証されていた時代も終わり、一つの会社に一生勤めるという働き方から、より良い条件を求めて転職することも厭わないという人も増えているのだ。欧米ほどではないにしろ、日本でも人材の流動化は進んでいるといえる。

そんな中、出産・育児や介護などを理由に社員が退職することになれば、社員自身がキャリアを断念せざるを得なくなるだけでなく、企業にとっても優秀な人材を失うことになり、手痛い損失となる。ワークライフバランスに配慮することは、こうした人材の流出を防ぐことにつながるので、企業にとっても必要なことといえるのだ。

2-4.女性社員に定着してもらうため
 男は仕事・女は家庭、と役割分担がされていた時代は過去のものとなり、現在では女性の社会進出が進んで夫婦共働きという世帯も珍しいものではなくなっている。一方で、家事・育児については旧来の価値観が尾を引き、女性にかかる負担が大きいというのが現状だ。そのため、女性は子供ができるとフルタイムでの勤務が難しくなり、専業主婦となったりパートで短時間勤務を行うなどの選択肢を取らざるを得ないケースも多い。

企業としても、優秀な女性をこうした理由で失ってしまうのは痛手である。女性社員に長く働いてもらうためには、ワークライフバランスを導入し、女性の社会進出をより一層進めていくことが欠かせない。

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3.ワークライフバランス実現のための取り組み

こうした様々な理由からワークライフバランスの必要性が叫ばれているが、その実現のためにはどのような取り組みがなされているのだろうか。ここからは、その具体例を紹介していく。

3-1.フレックスタイムの導入
 フレックスタイム制は、日本では1988年に労働基準法の改正によって合法化されたものだが、「働き方改革」が叫ばれる中で再び注目を集めている。始業・終業時間が厳格に決められた従来の働き方と異なり、フレックスタイム制では規定された1カ月間の総労働時間の中で、始業・終業時間を自由に決めることができる。必ず出勤しなくてはならない「コアタイム」を含んでいれば、何時から何時まで働くかは個人の裁量で自由に決められるのだ。(コアタイムがなく完全に自由な会社もある)

この制度が導入されていれば、従業員は例えば子供の送り迎えや学校行事などの都合に合わせて勤務時間をずらすことができる。繁忙期に多く働き、忙しくない時期は労働時間を短くしてプライベートを充実させる、といったことも可能だ。優秀な人材を確保したい場合、このフレックスタイム制は好待遇と受け取られて有利に働くだろう。

3-2.テレワークの導入

 インターネットが普及したことで「テレワーク」という働き方も可能になった。日本テレワーク協会では、テレワークを「ITを利用した場所、時間にとらわれない働き方」と定義している。パソコンと通信回線があればどこでも仕事ができるので、出社する必要がない。家でも仕事ができるため育児や介護、病気治療との両立も可能となり、さらにストレスが軽減されるというメリットもある。

企業側にとっても、育児などを理由にした離職を防げるので人材が確保できること、広いオフィスが不要になるのでコストの削減になること、また営業効率の向上などメリットが多い。パンデミックなどの非常時にも事業を継続することができるし、企業イメージのアップにもつながる。ただし、テレワークを導入するには情報漏洩を防ぎ勤怠管理を適切に行うための仕組みづくりが必要だ。

3-3.長時間労働の削減

 過剰な長時間労働のため心身の健康を損ねる人が後を絶たない現状において、日本企業には長時間労働の削減が強く求められている。労働時間を短縮するために、まず取り組まれているのが業務の効率化だ。業務フローを見直して定型化している作業を廃止し、資料整理やスケジュール管理を進めることで、無駄な時間が廃され労働時間の短縮につなげていくことができる。

そのうえで、制度の改定も必要だ。残業は事前申請を必須として必要以上に行わせないようにしたり、残業や休日出勤自体を廃止とする方向に向かっている企業もある。ただ、残業禁止が仕事の持ち帰りにつながっては意味がないので、テレワーク導入や休暇の奨励など他の方法も組み合わせて労働時間そのものを減らしていくことが重要だ。

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ワークライフバランスを整えよう!

政府による「働き方改革」の提唱もあって、ワークライフバランスへの注目度はますます高まっている。ワークライフバランスを整えれば社員の健康を守り生産性の向上につながるのはもちろん、社員を大切にする会社として企業イメージのアップにもつながる。この機会にぜひ、ワークライフバランスについての理解を深めてみてはどうだろうか。

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