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適切な資産管理に欠かせない実地棚卸の効率化のコツと作業の流れを解説

2022.08.12
オフィスのミカタ編集部

在庫を持つ企業にとって、定期的な実地棚卸は棚卸資産を適切に管理する上で欠かせない作業だ。税務にも関わる重要な役割を持つ一方で、作業に大きな負担を感じている方も多いのではないだろうか。そこでこの記事では、実地棚卸の具体的な方法や効率化のコツについて解説する。

実地棚卸は「棚卸」在庫の確認と利益の確認を行う

実地棚卸とは、自社が保有する在庫を実際に現場でカウントする作業をいう。実地棚卸に対して、帳簿上で理論在庫を確認する作業を帳簿棚卸といい、期末等に在庫資産の正確性を担保するために実地棚卸が行われる。実地棚卸は、単純に在庫数を確認するだけでなく、企業の資産である「棚卸資産」を確定する意味合いを持つ。

実地棚卸における注意点は客観性と時期の義務の関係性

次に、実地棚卸を行う上で抑えておきたい注意ポイントを解説しよう。

実地棚卸を行う時期は利益確認が必要な決算前だが明確な時期の指定はない
実地棚卸は主に、利益を確定させる目的で決算前に行われるが、明確な時期の指定はない。頻度についても、年1回の企業もあれば、半期や四半期に一度行う企業もある。

在庫の過剰・過小が起こることで決算により納税負担が大きくなるリスクも
期末に利益を確定させるには、在庫数を正確に把握し、売上原価を算出する必要がある。もし在庫数に誤りがあれば、利益や納税額にもズレが生じる。実地棚卸は根気のいる作業になるが、そのことを肝に命じておきたい。

在庫の管理方法や数量の量・質の観点から監査法人などの第三者から確認
実地棚卸を行う際に、在庫数量の妥当性や棚卸の実施方法などを第三者の目で確認するために監査人が立ち会うことがある。これを棚卸立会という。会計監査が必要な大企業などでは、期末時点の棚卸資産を検証する監査手続きとして必要になるため注意したい。

棚卸立会は通常期末日に実施されるが抜き打ちでの監査目的の実施もあり
棚卸立会は通常、期末日に実施されるが、場合によっては前倒しをし、監査目的で抜き打ちの棚卸立合が行われるケースもある。いつでも適切に対応できるよう、実地棚卸のフローを確立し適正な在庫管理に努めよう。

実地棚卸の具体的な方法とそれぞれのメリットとデメリット

実地棚卸の方法として、主にタグ方式とリスト方式の2つが挙げられる。ここではそれぞれのメリット・デメリットについて解説しよう。

タグ方式で現物に物理的なタグを貼り付けて数量をカウント
タグ方式は、品目と数量を記載した棚札と呼ばれる伝票を、現物に直接貼っていく棚卸方法だ。カウント漏れを防げることがメリットだが、発行した棚札を連番管理するプロセスが発生するため作業時間がかかることがデメリットと言える。

リスト方式で棚卸資産が在庫管理のリストの数と一致するかをシステムで確認
一方のリスト方式は、リスト上の理論在庫と一致しているかを確認していく方法だ。比較的短時間で実施できることが大きなメリットとなるが、リストに漏れがあった場合に在庫のカウント漏れが発生したり、リスト上に二重に計上されていても気づきにくかったりというリスクがある。

主流な方法として採用されているのはタグ方式であるが連番管理がネック
実地棚卸は何より正確性が求められる作業であるため、カウント漏れのリスクの少ないタグ方式を採用している企業も多いだろう。タグ方式では、全ての現物に棚札を添付した後に、書き損じなども含めて棚札を回収し、発行された棚札数との一致を確認するという連番管理が必要になる。在庫の種類と数によっては膨大な時間が必要となるため、自社に合った方法で進めて欲しい。

タグ方式での実地棚卸のミスを少なく進めるためのコツ

労力のかかるタグ方式での実地棚卸において、ミスなく確実な作業を行うためのコツを3つ紹介しよう。

2名1組で行うことでヒューマンエラーや不正を防止する
棚卸ではカウントミスなどのヒューマンエラーや、故意による不正を防止するため、通常2名1組で行う。在庫は企業にとって資産であり、その適切な管理のために必要な人員をしっかり確保するようにしたい。

最低年に1回、複数回の場合はエリアごとにローテーションで行う
棚卸に当たっては、全ての在庫を一斉にカウントする一斉棚卸が基本となるが、年に数回行うような場合にはエリアごとにローテーションで棚卸をする循環棚卸を採用するのも良いだろう。

棚卸しの対象となるモノの動きを完全に止めて行う
正確にカウントするために、棚卸を行う日は製造や入出荷を止めて行うのが基本だ。また、材料や半製品、輸送中のものもカウントし、棚卸資産に反映するのを忘れないようにしたい。

実地棚卸と帳簿上の棚卸数が合わない時は帳簿上の在庫を修正

実地棚卸を行った結果、帳簿上の在庫数と数が合わない場合は、帳簿上の在庫を修正して棚卸資産に反映する必要がある。ここでは、棚卸実施後の在庫評価時に抑えておきたいポイントを2つ紹介しよう。

財務会計の観点から帳簿の在庫数を修正時の在庫評価計上を行う
在庫を棚卸資産として計上するために、在庫を金額として算出することを在庫評価という。在庫評価を行う際は、実地棚卸によって修正した在庫数を元に「在庫総数×売上原価」で算出する。

税務上低価法を採用する場合は事前に届出をしておく必要がある
期間内に売上原価が変動しているような場合に、原価をどう評価すべきかについては、「原価法」と「低価法」の大きく2つに区分される。原価法は仕入れ時の原価を元に計算する方法で、最終仕入原価法、個別法、総平均法などの種類がある。一方の低価法は、仕入れ時の原価と計算時の原価のうち、低価な方を用いて計算する方法である。いずれを選択するかは後で決められるものではなく、事前に設定する必要がある。また、在庫方法を変更する場合にも次年度の事業開始日前日までに税務署への申請が必要だ。

まとめ

実地棚卸は正確な会計業務を進めるために必要な作業であり、不正防止などの内部統制のためにも必要な作業である。その重要性を理解し、効率的に進められるよう計画的に進めることが求められる。この記事を参考に、より良い進め方についてぜひ一度見直してみてほしい。