文書管理の分類方法。契約書管理システムによるDXの注意点
企業における文書管理には、さまざまな分類方法がある。管理する文書は、契約書、財務諸表、労務関係書類など多岐にわたり、どう分類するか迷う場合もあるだろう。文書管理を適切に行えば、業務効率化やコスト削減にもつながる。また、合わせて契約書管理システムによって電子化することでより一層その効果は高まる。今回は、文書管理で業務効率を上げるコツとして具体的な分類手法や、契約書管理システムを新たに導入することで避けられる業務リスクについても解説する。文書管理に取り組んでいる担当者は、参考にしてほしい。
目次
●文書管理が企業に必要な理由
●文書管理における3つの分類方法
●文書を分類する際のポイント・注意点
●契約書管理における思わぬ落とし穴をシステム導入で回避
●「IT導入補助金2023」を活用してバックオフィスをDX
文書管理が企業に必要な理由
文書管理とは、文書の作成に始まり、保存から廃棄までの各段階で適切に管理することをいう。昨今は紙媒体だけでなく電子化された文書が一般的になりつつあるが、どの媒体を利用するにしても、これらを統合的に管理することが重要だ。まずは、企業で文書管理が必要な主な理由についてみていこう。
社内文書の一元管理による業務効率化につなげるため
社内にあるさまざまな文書を適切に管理するには、一元管理がおすすめだ。一元管理とは、文書を一カ所に集約させるだけでなく、文書の管理方法も統一する方法である。
文書を一元管理することで、目的の情報を探す手間や時間の削減や、情報活用の活性化が期待できる。従業員はより必要な業務に専念できるため、個々の業務品質の向上にもつながるだろう。
リスクマネジメントのため
文書管理は、企業のリスクマネジメントの手段でもある。文書には情報漏洩・紛失・誤廃棄などのリスクが伴う。これらを防ぎ、情報流出による損害賠償などの問題発生を防ぐためにも、文書管理は必要だ。何かトラブルが発生しても、文書による業務記録を残しておくことで不正行為等がなかったことを証明できるため、社会的なダメージを抑えられるケースもある。
コスト削減のため
社内の文書を一元管理することによって、別々の場所で文書が管理されていた場合の維持管理費、人件費などにかかるコストを削減できる。特に紙媒体の場合は、書類を保管するための備品やスペースが必要だが、バラバラに管理されていたものをまとめて一元管理することで、文書の維持・管理にかかっていたコストの削減が可能だ。
文書管理における3つの分類方法
文書管理の主な分類方法には、「ワリツケ方式」「ツミアゲ方式」「ハイブリッド方式」の3つがある。それぞれの種類について、特徴を解説する。
ワリツケ方式
企業の総務部門など文書を管轄する部署がルールを決めて、トップダウンで文書を分類する方法だ。「大分類→中分類→小分類」のように整理する手法で、例えば、初めに文書を「社内向け」と「それ以外」に分けてから、各文書を部署ごとに分けていくケースが考えられる。スピーディーな分類が可能で、文書を検索しやすくなるメリットがあるが、分類に収まりきらない文書も多く、形骸化しがちなのがデメリットだ。
ツミアゲ方式
ワリツケ方式と逆に、現場の実務担当者が「小分類→中分類→大分類」と、ボトムアップで文書をグループ化しながら整理する手法だ。各部署で行うため分類に収まらない文書が発生しにくく、現場の実態に沿った分類ができる。ただし、部署単位で取り組むため、会社全体で分類方法の粒度を統一しづらい、情報を共有するのが難しい、といった側面がある。
ハイブリッド方式
ワリツケ方式とツミアゲ方式の、両方のメリットを取り入れた分類方法がハイブリッド方式だ。ある一定のラインまではワリツケ方式を取り入れて、各部署での細かい分類が必要なものはツミアゲ方式で分類する。ハイブリッド方式では、大まかな分類は固定化しても細かい分類は現場の声を聞きながら行うことが可能になり、書類のばらつきを抑えることができる。
それぞれの分類方法について特徴を理解して、自社に合う方法を取り入れるとよいだろう。
文書を分類する際のポイント・注意点
文書管理を適切に行うためには、押さえておくべきポイントがある。ここでは、特に重要な4つのポイントについて紹介する。
<ポイント1>分類基準を明確にする
文書管理は、文書のまとめ方や並べ方など、分類に明確な基準を設けることが1つ目のポイントだ。分類基準が明確でないと、従業員によって分類に差異が生じて必要な文書の検索に支障をきたし、効率的な文書管理とはいえなくなる。分類の基準はさまざまな種類があるので、自社に合う分類方法を導入するとよいだろう。主な分類基準には、以下のようなものがある。
・形式別
「契約書」「稟議書」「申請」「領収書」などといった、形式別の分類である。基本的な分類で、下位層の分類を発生日順や50音順などにすることで、より検索スピードが上がる。
・顧客別
顧客ごとに、やりとりしている文書を分類する。顧客の名前がわかれば、誰でも関係書類がどこにあるのかがわかるため、情報の検索性が高い。事業内容によっては、顧客の地域や取引の頻度などで、さらに細かく分類するのも有用だ。
・期間別
取引内容に関する文書などは、文書を作成した期間で分類すると管理しやすいだろう。年別・月別・日付別などの時系列にして、紙媒体の場合は新しい文書を上に重ねて保管することで、最新の情報を探す時間を短縮することができる。電子データの場合は文書をネットワーク内で管理するため、文書のバージョンが分かるようにファイル名に規則性をつけるなど、予めルールを策定しておく必要がある。
<ポイント2>文書のレベル感を統一する
同一階層内において、文書のレベル感を統一するのもポイントの一つだ。例えば、「営業」「経理」「総務」と並んでいる中に「設計図」という名前の文書がある状態では、レベル感にずれがある。ここでレベル感を統一する場合は、新しく「製造」フォルダを用意して、その階層内に「設計図」を入れるとよいだろう。
レベル感の統一には、タイトルの付け方もポイントだ。わかりやすい言葉を使い、文書の内容に沿ったタイトルを付けることで、誰でも検索しやすくなる。タイトルの付け方を社内で統一することで文書の検索性が高まり、業務効率が向上する効果も期待できる。
<ポイント3>MECEを実施する
MECE(ミーシー、ミッシー)はMutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略で、「漏れがなく、重複もない」という意味である。例えば、従業員の個人情報が記載されている文書を管理する際に、「女性」「男性」「20代~30代」という分類があると仮定すると、「20~30代」と「女性」「男性」に重複が発生してしまう。重複や漏れがあると文書の検索性が低下するため、この2点が発生しないよう、管理することが重要だ。
<ポイント4>文書の保管期限を確認する
書類は時間の経過とともに増えていくため、必要のなくなった文書は処分していくことも管理を効率化するポイントだ。文書によっては、商法や会社法など、各法律によって保存期間が定められている『法定保存文書』として扱われるため、定められた保存年数を守って管理するのが重要だ。保存期間は文書によって異なるため、それぞれについて予め保存期間を設定して、不要な文書がすぐ分かるようにしておくと、分類がスムーズになるだろう。
契約書管理における思わぬ落とし穴をシステム導入で回避
契約書を管理する上で、想定していないような脅威にさらされることを考慮しなければならない。以下では新たに契約書管理システムを導入することで回避しうるリスクについて解説する。
改正電子帳簿保存法による経理関係書類の電子取引対応の義務化などの法令遵守
2022年1月1日より施行された「改正電子帳簿保存法」により、決算関係書類や請求書・領収書などの国税関係の書類の電子データ保存が義務化された。
なお、2023年12月31日までは猶予期間として従来通りの紙での保存も認められているものの、2024年1月1日以降に行われる電子取引については、対象の書類の電子データ保存が義務付けられているため、紙から電子への保存に全て移行しなければならない。
インボイス制度でインボイス対応の電子取引も電子帳簿保存法へ対応が必要
2023年より施行されたインボイス制度によるインボイス対応の電子取引も電子帳簿保存法への対応が必要となった。
これらの法改正もあり、経理財務などの書類だけをただ電子化して管理するのではなく、例えば、委託先の個人事業主との契約書類など関連書類全般を契約締結のワークフローに紐づくようにするなど、この猶予期間で準備する必要がある。
不正アクセスやハッキングなど技術的脅威へのセキュリティ
さらに、近年では不正アクセスやハッキングによる企業へのサイバー攻撃が増えつつある。対抗策として、データのバックアップを取ることはもちろんだが、契約書のような機密情報の漏えいなどへの備えも企業として重大な事項だ。電子データへの移行の猶予期間を用いて、改めて実際の自社の内部統制を強化するとともに、技術的なセキュリティ対策も進める必要がある。
「IT導入補助金2023」を活用してバックオフィスをDX
「IT導入補助金2023」(https://www.it-hojo.jp/)とは、小規模事業者や中小企業などが、自社の売り上げ向上や業務効率化に向けてITツールを導入する際に活用できる補助金制度だ。
例えば、下記プレスリリースで契約書管理クラウドサービス「Hubble」が対象ツールに認定されているように、認定対象のツールの導入についての補助金がでる仕組みとなっている。
【IT導入補助金2023】契約書管理クラウドサービス「Hubble」が対象ツールに認定
システムの導入にあたり予算に懸念があるという場合には、このような補助金制度を活用した導入も検討してみてほしい。
まとめ
文書管理の分類方法はさまざまな種類があり、自社に合う方式を導入することが重要だ。実情に即した分類方法で文書検索の効率を上げることで、精度の高い文書管理ができるようになっていく。同時に契約書管理システムを導入し一元管理することで、業務効率化およびコスト削減など様々なメリットが受けられるだろう。自社ではどのような文書管理が必要なのか、また、契約書管理システムを導入すれば良いのか、また導入にあたり解決しなければならないコンプライアンス上の課題を把握することから始めてほしい。
なお、以下 のページでは、契約書管理のシステム比較や資料一括請求が可能となっている。
ぜひこの機会に、自社にあったクラウドツールを活用した契約書管理を行ってみてはいかがだろうか。
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