「人的資本経営」の実現に向けバックオフィスは「価値創造部門」へ
上場企業を対象に人的資本情報の開示が義務化したことも相まって、企業価値を測る新しい指標として人的資本経営への関心が高まり、バックオフィス部門にも多くの変化が求められている。「人事給与アウトソーシングサービス PROSRV(プロサーブ)」を提供する三菱総研DCS株式会社ではこうした変化にどのような手法を提供しているのか。同社のビジネスサービス本部 HR開発部長 東海林伸明氏(写真左)、同本部 HR推進部 企画グループ 主任 根岸勇人氏(写真右)に話を伺った。
アウトソーシングを活用し人的資本経営に携われる環境を
ITの活用が急速に進む産業構造の変化を背景に、企業の競争力の源泉である「人材」は、企業価値の持続的発展に不可欠な「人財」、つまり「人的資本」と認識されつつある。利益を生み出す事業部門だけの考え方であると誤解されがちであるが、バックオフィス部門においても、その考え方は日に日に増しており、企業の根幹を創る「価値創造部門」への変革が求められている。
「従来のバックオフィス部門においては、定型業務を、いかにコストを抑えながら正確に遂行できるかなど、“コストセンター”としての役割が求められていました。しかし、最近は仕組みづくりなど、より上流工程の業務が求められる傾向にあり、結果として『ヒト』に価値を置く傾向にあります」(根岸氏)
こうしたなか、改めて注目されるようになったのがアウトソーシングサービスだ。活用することによって、バックオフィス部門の定型業務を減らせれば、経営戦略に関わる業務、人的資本開示等にも適切に取り組めるようになる。また人的資本をデータとして把握できれば、採用の効率化や、離職率の改善も望める。
「業種業態や企業規模によって経営課題は異なりますが、年齢やスキルなど、社内データを活用した採用・人事の改善が求められるようになりました」(根岸氏)。三菱総研DCS株式会社では、創業以来50年超にわたり約2000社の人事給与業務を代行してきた確かな実績がある。
「私たちはアウトソーサーとして、社内状況をよく知るバックオフィス部門の方々が、課題解決に携われるように、その負荷を減らすお手伝いができればと常に考えています」(東海林氏)
労働人口の減少が企業に与える影響は大きい
人的資本への意識の高まりは、労働人口の減少の影響も大きい。生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークとし、2050年には5275万人(2021年から29.2%減)に減少すると見込まれている(※)。優秀な人材の取り合いが発生する事は確実だ。
※出典:総務省「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」
「バックオフィス部門では、例えば月次の給与や年次の年末調整など、時限が決まっている業務がありますが、労働力が減少するなか、こうした人的負荷の高い業務への荷重が特定の時期に増加してしまいます。もはや効率化だけで賄うのではなく、業務量そのものを減らさなければならない実情があるなか、アウトソーシングの活用は必至といえるでしょう」(根岸氏)
日本では以前から人手不足が課題として挙げられてきている。例えばいわゆるバブル期は、とにかく「人手」が足りないという状況で、無理な働き方や地方からの人材獲得により解決していた。しかし現在は、当時のような解決方法は不可能かつ、より専門性の高い人材が不足しているため、解決は容易ではない。
「人手不足に陥ると、人材の流動性が高まります。特に、専門スキルを持った人材の離職は後任の採用や育成を考えると、企業に大きなインパクトを与えます。そのため企業は人材の定着率を向上させなければならないのです」(東海林氏)
有用な人材が離職してしまうのは、働く環境や処遇、評価制度などが関連している。バックオフィス部門は、従業員がやる気を保てるような仕組みづくりに尽力する必要がある。
そのために、「従業員が働きやすい環境をつくることが重要です。そのためには抜本的な構造改革や、時代に合わせた人事施策の実現が重要です。ただ、その施策を考える人材も不足している状況で、既存の人材にその業務を押し付けてしまうとバックオフィス部門のモチベーション低下につながり、本末転倒な結果となってしまいます。そのため人的負荷の高い業務はもちろんのこと、専門業務も含めてアウトソーシングを活用して、業務に余力をつくることが大切です。生まれた余力によって、企業価値を高めるための環境づくり、人材の採用、育成に注力してほしいです」(根岸氏)
PROSRVが大切にしているアウトソーシングのカタチとは
三菱総研DCSが提供する人事給与BPOサービス「PROSRV(プロサーブ)」はクラウドサービスと業務のアウトソーシングの良いところ取りができるサービスだ。
「類似するサービスは多いですが、システムだけを渡して終わりというサービスも多く存在します。私たちはシステムだけでなく、アウトソーシングにも力を入れており、業務量を減らしたいバックオフィス部門の悩みを総合的に解決できることが強みといえます」(東海林氏)
業種業態や企業規模によって、抱える課題やサービス導入の費用対効果は変わります。よって「お客様が一番解決したいポイントは何か、私たちがどのように付加価値を与えられるのかを考えながらコンサルとして入ることもあります」(根岸氏)
三菱総研DCSは2000社もの事例を持つ。つまりそれだけあらゆる業種業態の企業にサービス提供をしてきたノウハウを持っている。だからこそ、バックオフィス部門の業務負荷削減が実現できるのだという。
現在の業務を手順化するところから伴走により業務効率&円滑化
「PROSRV」導入希望企業の傾向として、従来は古いシステムの切り替えやコスト削減のニーズが強かったが、最近は業務に余力をつくりたいというニーズも多いという。
「私たちは現在の業務を手順化するところから始めています。その結果、より効率的に業務を運用できるようになります。一例として、近年M&Aやホールディングス化等により、子会社を多く持つ企業が増えています。子会社ごとにさまざまな背景があることから、業務オペレーションがバラバラということが多々あります。実際に30社ほどのグループ会社の業務を手順化したところ、すべて同じ進め方となり、業務効率化と人材ローテーションが円滑に進むようになりました」(東海林氏)
「他社の人事システムを利用していたお客様のケースでは、システムの管理と日々の保守作業に10名程度の人員を割いていました。ですが当社の場合、システムの保守自体もお任せいただけることが強みです。独自開発のシステムを独自のデータセンターで運用しているため、保守にかかる人員をなくすことができました。他の重要な業務に配置転換が実現したそうです」(根岸氏)
結果として、システム部門の工数削減に加え、バックオフィス部門が社内制度の構築などを含め、価値創造業務に対応することができるようになり、しかも従業員情報の一元管理や人材の保有スキルを可視化できるようになるので、この事例では新規事業立ち上げ時に適切な人材をアサインするなどの柔軟な対応も可能になった。また、これらの取り組みを整理し、自社の魅力をしっかりと発信することで、求職者の売り手市場となっている採用市場においても、優位な立場をつくることができているという。
バックオフィス部門から価値創造部門へ
最後に今後のバックオフィス部門の役割について聞いた。
「バックオフィス部門はどこよりもデータを見て、社内状況を把握するべきです。そのデータを基に企業価値をどう高めていくのかという領域は、伸びしろがあります。ぜひアウトソーシングを適切に活用する事で定型業務に余裕を生み出して価値創造部門への変革に取り組んでいただきたいです」(根岸氏)
「人的資本開示によって、これまで以上に経営と人事の連動が大切になります。バックオフィス部門が企業課題の解決に対し、より柔軟に取り組める環境を整えるサポートをこれからも続けていきたいです」(東海林氏)
「PROSRV」が生み出すのは、単なる「時間」ではない。ぜひ世の中の人事部さんに「PROSRV」を活用いただくことで「余力」を生み出し、価値創造業務へ取り組んでいただきたい。
関連リンク:三菱総研DCS株式会社