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入金消込業務平均170時間も大幅削減? Sansan、インボイス管理サービス「Bill One」に入金消込と経費精算の機能を追加

2024.05.28
大矢根翼

Sansan株式会社(以下:Sansan、本社:東京都渋谷区)は、5月21日、本社にて記者発表会を開催。同社代表取締役社長/CEO寺田親弘氏(写真左)、執行役員/Bill One事業部 事業部長 大西勝也氏が登壇し、インボイス管理サービス「Bill One」のサービス拡充を発表した。今回のアップデートにより、Bill Oneは請求書受領から請求書発行、経費精算まで、幅広い経理業務を自動化できるようになった。

経理の本業「経営への提案」に手が回らない!

経理担当者の本分は経営状況をリアルタイムで把握し、経営にまつわる次の一手を提案することだ。しかし、実際に経理の現場担当者は日々のルーティンに追われている。社員から月末に送られてくる立替経費の領収書や、請求書と入金内容の突合を済ませていると時間が過ぎていて、月次決算や提案書を制作する時間が圧迫される。

「特に入金消込業務に関する調査では企業平均170時間を要しており、経理担当者の7割以上が作業に課題を感じているとの回答を得ました」と大西氏。裏を返せば、消込作業を自動化できれば、各社1人月に相当する工数を捻出できる計算になる。さらに消込の突合作業は88%の担当者が目視で実施していると回答。入金は必ずしも請求書とイコールではない。「この入金者氏名はA社で、B社はまとめて入金してくるから……」と経理担当者の経験と運用でカバーしているケースが少なくない。

Bill Oneの成長

SansanはBill Oneを通して、過去に3つのステップで経理業務の効率化を進めてきた。社内実験段階の「Model 1」では経理担当者が紙の請求書をスキャンして、支払いに必要な情報をデータ化していた。同じく「Model 2」では現場担当者が請求書をアップロードしていた。しかし、いずれも紙の請求書を削減する効果は薄く、作業者の工数が顕在化するにとどまったという。

2020年には、あらゆる種類の請求書をAI-OCR(AIによるテキストのデータ化)とオペレーターの入力で99.9%正確にデータ化する「Model 3」をリリース。その後、電子帳簿保存法やインボイス制度にも対応し、請求書の受け取りにまつわる工数の削減に対するアンサーを提供し始めた。

以降、Bill Oneは2024年2月現在までに年間売上68億円、扱う請求の総額は年間35兆円へと成長した。4年間で売上を72倍にする、SaaSの大目標「T2D3(Triple×2、Double×3)」を上回るペースで利用事業者と売上を拡大した。

Bill One Bank発足でBill Oneが大幅進化

Bill One Model 3は請求書の受領にまつわる業務を効率化 したが、経理担当者のルーティン作業すべてをカバーしていたわけではない。 今回発表された「Model 4」には、請求書の発行と経費精算が盛り込まれたことで、経理のルーティン作業の多くが自動化される。請求書発行の領域では、請求書の作成・発行から入金消込までの会計業務全体が自動化されるようになった。

加えて経費精算が実装されたことで、担当者は月末に押し寄せる領収書をさばく業務から解放されるようになった。

そのDX全体を支えているのが、今回Sansanが住信SBIネット銀行と提携して提供開始する「Bill One Bank」と、Bill Oneに紐づけられるBill Oneビジネスカードだ。

一気通貫の会計事務

Bill One Bankとの連携により、売上確定後、請求書作成、請求書発行、入金確認、入金消込までの全行程がひとつのシステム上で完結するようになった。

経理担当者目線で見ると、たとえば営業部が請求書を作成しても、入金消込まで完了した状態から会計処理ができるようになる。効果は、企業平均で月間170時間を要していた消込業務が、勤務時間から棒引きできる計算だ。

Bill One Bankは既存の銀行口座を持つ企業から敬遠されないのかという記者からの質問に対し、寺田氏は「Bill One Bankの目的は経理担当者が抱えるルーティンワークの課題を解決することであり、既存銀行の業務シェアを奪うことではありません」と回答。

請求書作成から消込まで、経理業務を包括的に自動化する手段として銀行代理業の認可を得たことを強調した。「入金確認ができたら、資金はメインバンクの口座に移していただいても問題ありません」(寺田氏)。

立替経費をゼロにする経費精算機能

経理担当者を悩ませるもうひとつのルーティンワークが、毎月の立替経費精算だ。社員が出先で支払った料金を精算する業務は、Sansanの調査によれば各社毎月1500件以上発生し、時間にして100時間を要しているという。立替経費の精算業務は月末に集中するので、経理担当者の本分である月次決算を圧迫する工数となっている。

特に時間を要している作業がインボイス対応の確認と、不備発生時の差し戻しだ。立替経費を提出する側からも、入金までのタイムラグ、インボイス対応、手続きの煩雑さなどに課題の声が上がっていた。

Model 4の経費精算では、経費用のビジネスカードを全社員に支給。ビジネスカードで支払った会計の領収書を従業員がアップロードするだけで経費精算業務が完了する。請求書処理と同じく、領収書もAI-OCRとオペレーターにより99.9%の精度でデータ化される。「会社の裏紙に領収書を貼り付けて経理部に提出し、不備で差し戻される」という会社員の多くが経験したことのある不毛な作業から解放される仕組みだ。

これまで経理のDXをけん引してきたBill Oneは、Model 4の発表で新たなステージに入った。大西氏が「過去最大のアップデート」と語る今回の発表は、経理担当者のルーティン業務を自動化することで、「面倒なこと」から「やるべきこと」へ工数を振り向けやすい環境を生み出した。経費精算機能は6月頃、入金消込機能は8月以降に順次提供が開始される予定だ。