freeeがフリーランス法に関する勉強会を開催 発注者も受注者も11月からの対応が必須
2024年9月25日、「freee会計」「freee業務委託」など自動会計クラウドシステムサービスを開発しているフリー株式会社が、2024年11月1日に施行されるフリーランス・事業者間取引適正化等法(略称:フリーランス法)の報道機関向けオンライン勉強会を実施した。会ではフリーランス協会の平田麻莉代表理事による法解説の後、フリー株式会社が同法の認知度などに関する受発注者へのアンケート結果を公表。11月から始まるフリーランス法への対応方法に迷う発注者、受注者はぜひ参考にされたい。
フリーランス法とは
勉強会では、最初にフリーランス協会の平田麻莉代表理事が登壇し、フリーランス法の概要と特に注目すべき点について解説した。
フリーランス法の対象範囲はBtoB取引
フリーランスといっても取引の形態はさまざまだ。今回のフリーランス法の取引範囲は、従業員を使用している事業者から、従業員を使用していないフリーランスへの業務委託であることが示された。
よって、事業者ではなく消費者からの委託である場合や、業務委託が発生しない売買取引、フリーランス側が従業員(短時間・短期間を除く)を雇っている場合はフリーランス法の対象にならない。売買契約やマネジメント契約、出版契約も、業務委託契約ではないため対象外となる。
画像出典:フリーランス法リーフレット(公正取引委員会)
フリーランス法は立場が弱くなりがちなフリーランスを守る法律
なぜフリーランス法の対象範囲がBtoB取引のみなのか。それは「報酬が未払いになってしまった」「業務が完了して長いのに支払いが遅延している」「一方的な減額、買いたたきにあった」など、発注元である事業者に対してどうしても立場が弱くなりがちなフリーランスを守るための法律だからである。
平田氏は「フリーランス・トラブル110番」における相談内容のデータを示し、今までフリーランスの問題を個別解決できる法律はなかったこと、下請法では資本金1000万円以下の事業者が対象にならなかったことなどを指摘した。そして2017年の協会発足から政府関係者に問題提起を行っており、法律の施行に至るまでさまざまな機関の尽力と綿密な調査があったことを振り返り、このたびの法案が「フリーランスが自分を守る盾や印籠になる」とした。
画像出典:フリーランス・トラブル110番の相談及び和解あっせん件数(厚生労働省)p.4
フリーランス法の主な内容と注意すべきポイント
フリーランス法では、書面やメール・チャットなどにより取引条件を明示すること、納品から60日以内のできる限り短い期間内に支払いを設定すること(再委託の場合、条件を満たせば元委託業務の支払期日から30日以内でも可)が義務づけられ、発注者側が禁止すべき7つの行為が示されている。また、募集情報の的確表示や、育児介護などと業務の両立に対する配慮、ハラスメント対策に関する体制整備、中途解除などの事前予告・理由開示についても義務化される。
平田氏は「書面などによる取引条件の明示はフリーランス同士の取引でも義務になる」「禁止行為は契約期間や発注から納期までの期間が1ヶ月以上の場合のみ」など、ポイントを明示した。
違反の場合には行政の介入が可能であり、公正取引委員会、中小企業庁長官または厚生労働大臣が事業者に助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令をすることができる。命令違反及び検査拒否等に対しては、50万円以下の罰金に処せられる。
準備は遅れている?フリーランス法に関する調査結果
次にフリー株式会社の政府渉外マネージャー、髙橋歩氏が登壇し、フリーランス新法に関する認知度・準備状況に関する調査結果を発表。現時点では認知度が上昇しつつあるものの、準備状況が芳しくないと分析した。
調査対象者はフリーのクラウドシステムのユーザーである624名。うち個人事業主が72%を占めた。フリーランス法の認知度は、法人で約6割、個人事業主で5割弱。2023年11月にも調査を行っており、「新法について聞いたことすらない」と答えていた法人が4割を占めていたことを考えると、1年弱で法人における認知度は確実に広がったとした。
ただし、新法対応を「する」もしくは「検討中」と回答したのは法人の約半数。そして、新法対応の準備状況は「何もしていない」が最多となった。そして、法対応が必要なことを知りつつも「具体的に何をすればよいのか分からない」状態にあるようにも⾒受けられるとした。
「freee業務委託管理」はフリーランス新法の各領域をカバー
勉強会では、続いてフリー株式会社のfreee業務委託管理事業部長、高澤真之介氏が登壇。「フリーランス新法対応のために具体的に何をすればよいのか分からない」に応えるサービスとして、煩雑になりがちな業務委託のフローを支援する「freee業務委託管理」を紹介した。
freee業務委託管理は、「フリーランスの方から請求書が送付されないので支払い漏れが起きてしまう」「忙しくて法令対応ができない」「法令遵守のための管理コストが膨大」といった、フリーランス法に関する良くある課題を解決。仕事の募集から発注、委託管理、就業環境整備、納品に至るまでの各種対応をクラウドシステムで支援するため、フリーランス法の各領域をカバー。施行まで2~3週間ほどしか期間がなくても対応可能とした。
新法理解に役立つリソースや必要な書面形式を解説
勉強会では再びフリーランス協会の平田氏が登壇し、高橋氏と現状や必要な対応について対談を行った。平田氏はまず「認知度が気になる。フリーランス法を全く知らない方も2割弱いらっしゃるということで、しっかり広報周知していくことが大事」と、調査への感想を述べた。
高橋氏から新法の概要を知るためにおすすめのリソースを尋ねられた平田氏は、公正取引委員会フリーランス法特設サイトを改めて紹介。「良くまとまっており、弁護士でなくても分かる平易な言葉で説明されている」とした。なおフリーランス協会の漫画解説ページ(【マンガ】「フリーランス法」ってなに? 11月1日の施行前に知っておこう!)を、人気が出た解説として取り上げた。
法律への対応というと「内容の難しい契約書を作らなければならないのではないか」といった懸念点がある。事業者はクラウドシステムなど支援ツールを導入できるが、受注者側であるフリーランスはなかなかそこまで経費を割けないこともある。平田氏は「条件の明示等はメールやSNSなども広く認められている。箇条書きでまとめて『間違いありませんか』とメールし、『間違いありません』と返信してもらっただけでも条件明示したことになる」と、簡便な方法でよいことを解説した。
さらに平田氏は「経費の扱いなど取引条件の打ち合わせで漏れがちな約束は契約書に入れておくと安心。自分用の契約書フォーマットを持っておきたい方向けに、無料の契約書作成ツールを開発している」と語り、11月1日の施行に合わせてリリースする予定とした。
まとめ
フリーランス法の施行は2024年の11月1日と、期日がすぐそこまで迫ってきている。このたびの新法の対象は、事業規模にかかわらず全ての事業者だ。しっかり対応できれば、ある日突然受注者側から「違法」と言われてしまうこともなく、また受注者の安心にもつながる。取引先であるフリーランスとの信頼関係が強化されるのは何よりのメリットだ。必要に応じて支援システムを利用するなどの工夫を行い、早めの対応を心がけよう。
参考:公正取引委員会フリーランス法特設サイト