プロが教える新社会人のための印象力アップ講座 第1回:新社会人のための“信頼される”第一印象のつくり方
社会人としてのスタートは、期待と同時に緊張もつきもの。そんな日々にあって、自分を守る“武器”となるのが、正しいマナーや言葉遣いだ。本連載では、 “ディレクションもできるアナウンサー”として活躍しているフリーアナウンサーの井上智惠(いのうえ さとえ)氏が、新社会人が知っておくべきマナーの基本を5回にわたって指南。できる新人への第一歩を、頼もしく後押しする。第1回のテーマは「第一印象」。出会った瞬間に相手に好印象を与えるポイントを、さまざまな角度からわかりやすく解説する。
第一印象は「7秒」で決まる
第一印象について、よく知られているのがアメリカの心理学者アルバート・メラビアンが提唱したコミュニケーション理論「メラビアンの法則」です。これとは別に、第一印象は出会って「最初の7秒」で決まり、一度抱いた印象は半年間持続するとも言われています 。
ではたった7秒で、人は何を手掛かりに相手を判断するのでしょうか。メラビアンは視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%のウェイトで影響を与えるとも言っていて、第一印象形成の場面では、言葉以外の要素の影響が大きくなることが研究で示されています。ただし、すべてのコミュニケーションに当てはまるわけではありません。
最近は初回だけ対面で挨拶をし、あとはメールでのやり取りになることも多いので、初対面で残念な印象を与えると、挽回のチャンスもないままずっとその印象がついてまわることにもなりかねません。ですから、初対面でよい第一印象を抱いてもらうことが、非常に重要といえます。そう聞くとさらに不安になるかもしれませんが、大丈夫。「よい印象」は、実は事前にトレーニングしてつくることが可能なのです。以下、「見た目」「声」「心がまえ」とひとつずつ解説していきます。
姿勢と清潔感が印象を左右する
今はスマホを見ている時間が長いせいか、若い世代でも猫背で背中を丸めている方が多いのですが、ともすれば「自信がなさそう」「頼りなさそう」という印象を与えがちですのでご注意を。人と会う時だけでも意識して背筋を伸ばし、胸を軽く開くだけで、堂々とした印象になります。
また、姿勢と同じくらい重要なのが清潔感。高価な服は必要ありませんが、次の点は必ず確認しましょう。
・髪が乱れていないか
・服にシワや汚れはないか
・靴が汚れていないか
・服のサイズが合っているか
こうしただらしなさ、無頓着さによる見た目の乱れは、相手にとって必要のない雑情報であり、雑音(ノイズ)になります。こうしたノイズを減らすことで、あなたが相手に伝えたい印象がきちんと伝わるようになります。
感じのよい声と話し方は「準備」でつくれる
◎感じのよい声を出すトレーニング
感じのよい声は、生まれつきだとあきらめていませんか? もちろん生まれつきの声質もありますが、実はちょっとしたことで鍛えられます。アナウンサーの現場では、本番前に必ず腹式呼吸や、ハミング(話し声を鼻の奥にある「鼻腔」という空洞に響かせる発声技術)の練習、表情づくりを行います。これは、通りやすい声、あたたかみのある声を出す練習が自信につながり、心の余裕が落ち着いた話し方に結びつくからです。
アナウンサーの訓練を受けていない方が家庭で簡単にできる方法としておすすめなのが、口を大きく動かして「イ」と「ウ」を大げさに繰り返す方法です。これを5回ほど行うだけで、口周りが温まって筋肉が動きやすくなり、表情も明るくなります。
◎感じのいい話し方のトレーニング
「笑顔」と同じように、ポジティブな印象を与える「笑声(えごえ)」とでもいうべき声があります。そうした声を出すために意識したいポイントは次の3つです。
1.声のトーンを少し高めにする……アナウンサーの間でよく言われているのは、音階の「ソ」のその音が、人の耳に最も心地よく響くということ。でも絶対音感がないと「ソ」の音で声を出すのは難しいので、地声より10%ほど高くするのが効果的です。高すぎると不自然になるため、「少しだけ高く、少しだけ明るく」を意識しましょう。
2.早口にならない……緊張すると、自分の感覚よりも速く話してしまいます。緊張している時ほど「ゆっくり話そう」と意識することで、ちょうどよいスピードになります。
3.語尾をはっきり言い切る……「〜ですう」「〜なんですけどォ…」と語尾を伸ばすと、頼りなく子どもっぽい印象になります。「〜です」とはっきり言い切るだけで落ち着いた言い方に聞こえ、信頼できる印象になります。
また緊張すると、発言の前に「えーと」や「あのー」等意味を持たない言葉(「フィラー」といいます)が多くなります。これも相手にとってはノイズですので、ご注意を。沈黙を怖がらず、文の区切りで間を取ることも大切です。アナウンサーの間では、フィラーが多くなるよりは沈黙のほうがいい印象を与えるというのは、常識です。
このようにお伝えしても、「自分は早口ではないし、フィラーも少ないから大丈夫」と思っている方が多いかもしれません。そんな方には一度、自分が何かを説明している設定で話して、スマホで録音して聞いてみることをおすすめします。客観的に聞いてみると、自分が抱いていたイメージの話し方と大きな差があることに気付く方が多いと思います。
◎笑顔が苦手な人のための簡単トレーニング
視覚情報のひとつとして、表情も重要です。自然な笑顔が一番ですが、緊張すると笑顔をつくるのが難しくなる方や、そもそも笑顔が苦手な人もいます、そんな人は無理して笑顔をつくろうとしなくても大丈夫です。次の2点を意識するだけで、やさしい表情になります。
・前歯が6本ほど見えるように笑う……無理に大きく笑う必要はありません。軽く口角を上げるだけでも、印象は大きく変わります。
・目を下向きの三日月型にする……難しいと思うかもしれませんが、心がけるだけでも大きく印象が変わります。
ハキハキとしたあいさつは「心を開いています」のサイン
あいさつは単なるマナーではなく、「あなたに心を開いています」という意思表示でもあり、あいさつひとつで、その場の空気を和らげることができます。基本は、「〇〇株式会社の〇〇〇〇と申します」とフルネームで名乗ること。下の名前が素敵で印象深かったりすると、その名前で話がはずんだり、その名前で呼びかけてもらえたりすることもあるので、フルネームで伝えることはとても大事だと思っています。もしできれば、鼻の付け根のあたりにちょっと響くように意識して声を出しましょう。
もうひとつ大切なのは、名前を伝える時には相手の目をまっすぐに見ること。一番いけないのは、話ながら目が泳いでしまうことで、落ち着かない視線が相手にとってノイズになります。目を見るのが苦手な場合は、相手の眉間を見るのがおすすめです。
第一印象に失敗してもやり直せる
第一印象は大切ですが、いい印象を与えるのに失敗したらそれで終わりではありません。初対面でなにか失敗したとしても、その後の対応でむしろ印象がよくなる場合もあります。おすすめなのは「自己開示」です。「前回は緊張してうまく話せず、申し訳ありませんでした」と素直に伝えることで、相手も安心して心を開くことができます。また完璧に見せようとするより、人間らしさを見せたほうが心の距離が縮まることもあります。
新社会人に失敗はつきものであり、誰もが大なり小なり経験してきたはず。失敗を自己開示して距離を縮めることができるのはある意味、新社会人ならではの強みともいえるでしょう。
信頼される人は「聞き上手」
最後に一番大切なアドバイスを。長く信頼される人ほど、話し上手ではなく聞き上手です。第一印象で最も大切なのは、実はこの「聞く姿勢」なのです。
➀相手の話を遮らない
②相手の目を見てうなずく
③タイミングよく相づちを打つ
この3つを心がけるだけで「この人は自分の話を真剣に聞いてくれている」という印象を持ってもらうことができます。
いかがでしたか? 「準備しておけることがこれだけある」ということだけでも、不安が軽くなったのでは。重要なのは、相手にとって必要のない「ノイズ」を消し、伝えたい内容に集中できるようにすること。今回お話した基本を押さえることは、円滑な人間関係づくりにもつながります。
以下、初出勤の日に自信を持って人と会うことができるよう、チェックリストを作成してみました。ぜひ参考になさってください。
第2回は「怖がらずに使いこなす!プロが教える「おもてなしの敬語」の基本です。
<初出勤の日のチェックリスト>
【身だしなみ】見た目のノイズを消せている?
高価な服である必要はありません。「気になる部分をなくす」ことが大切です。
□ 髪が乱れていない?
□ 寝ぐせ・ハネがない?
□ 服にシワや汚れがない?
□ サイズの合った服を着ている?
□ 靴が汚れていない?
□ だらしなく見える部分がない?
【姿勢】自信がなさそうに見えていない?
姿勢が整うだけで、印象は大きく変わります。
□ 猫背になっていない?
□ 胸を軽く開いて立っている?
□ 首が前に出ていない?
【表情】無表情・怖い顔になっていない?
「自然に笑おう」とせず、形を意識すると作りやすくなります。
□ 口角は少し上がっている?
□ 目が「下向きの三日月型」になっている?
□ 笑いすぎて不自然になっていない?
【声】暗く聞こえていない?
目安は「いつもよりプラス10%明るく」。
□ いつもより少し高めの声を出している?
【話し方】早口になっていない?
緊張すると自分が思う以上に早口になります。
□ ゆっくり話す意識をしている?
□ 語尾まできちんと話している?
□ 間(沈黙)を怖がっていない?
【視線】落ち着いて見えている?
目を見るのが苦手なら「眉間」でOK。
□ 相手の目、または眉間を見ている?
□ 目がキョロキョロ動いていない?
プロフィール
井上 智惠(いのうえ さとえ)
大学卒業後、NHK徳島にてニュース番組、情報番組のキャスター他、ラジオニュース、中継など幅広く担当。2012年からはNHK水戸に移り、観覧者を巻き込んだ公開生放送番組のメインキャスターを5年間務める。その他「おはよう日本」ローカルパートのキャスターや渋谷の放送センターにて首都圏枠の「ひるまえほっと」にリポーター兼ディレクターとして出演。NHKに在籍した10年間でディレクター業務を含め複数の賞を受賞。現在はディレクションのできるアナウンサーとして活動を行う一方、株式会社トークナビの女子アナ広報室に所属し、企業のメディアプロモーションを行っている。










