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メタが「Threads API Summit」を日本初開催 Threadsの最新機能と企業の最新活用事例を紹介

2025.10.20
桑原 恵美子

テキストベースのソーシャルメディアとしては最も急速に成長している「Threads(以下「スレッズ」)」を運営する米Meta(以下、メタ)は、開発者・広告主・パートナー企業向けイベント「Threads API Summit」を2025年9月30日に、東京・虎ノ門ヒルズ内のメタ東京オフィスで開催した。昨年秋のロンドン、今年春のニューヨークに続いて、国内初開催。登壇したスピーカーのセッションの一部を紹介する。

スレッズは最も急速に成長しているテキストベースのソーシャルメディア

スレッズは2023年7月に米国で公開され、公開から5日間で1億のユーザーサインアップを達成。現在は4億のユーザーを抱えているという。

最初のセッションでは、Meta日本法人 Facebook Japanでグローバルパートナーシップスを担当する山谷道裕氏が、スレッズの基本機能と最新機能について紹介した。

2023年7月に米国で公開され、公開から5日間で1億のユーザーサインアップを達成

現在は4億のユーザーを有している

同じテキスト共有アプリの「X(旧Twitter)」の無料ユーザーの場合、1投稿につきテキスト投稿が最大140文字、画像投稿が4点までなのに対し、スレッズは500文字までテキスト投稿が可能で、動画を含む画像を最大10枚までを添付できる。さらに投票機能、音声投稿、返信、引用投稿、検索機能などが含まれ、日本では検索タブを開くと「話題のトピック」が表示される特別な機能が提供されているという。さらに、隠したいテキストや画像・動画にもやをかけて表示することができるネタバレ防止機能も搭載。現在、スレッズを使用するにはInstagramアカウントが必要だが、グローバルではFacebookアカウントやメールアドレス、電話番号でのアカウント作成も徐々にテストを開始しているとのこと。

Facebook Japan グローバルパートナーシップス担当の山谷道裕氏

山谷氏は基本機能に続き、導入されたばかりの最新機能も紹介。その一つが、2025年9月から導入されている投稿に最大10000文字の長文テキストを添付できる新機能。添付テキストはスレッズ上で表示され、外部ウェブサイトのリンクを含めることも可能だ。

またスレッズの投稿はInstagramやFacebookと連携しており、おすすめに表示されることで、より多くのユーザーにリーチできることもメリット。スレッズの投稿をInstagramのストーリーズやフィードに共有することも可能だという。

ユーザーの安全を確保するための機能として、他SNSのブロックとは異なる「制限」機能を導入。Instagramでも利用できる機能であり、ユーザーは自分の返信が相手に表示されていると思っているが、実際には他のユーザーには見えないというものだ。

テキストや画像・動画にもやをかけて表示するネタバレ防止機能も搭載(上の画像右端)

一方、Xにあってスレッズになかったのがダイレクトメッセージ(DM)機能だが、最近、スレッズに独自のDM機能が実装された。現在は相互フォローユーザー間での1対1のメッセージが可能で、今後はグループDMなどの機能拡張も予定されている。山谷氏は、最後に、スレッズのアルゴリズムについて解説。

「スレッズでは投稿頻度が高いアカウントほど一投稿あたりのインプレッションが増加する傾向があり、1日1回以上の投稿が推奨されています。また、会話を生み出す投稿はよりおすすめされやすく、全体の視聴のうち50%が返信コンテンツであることから、返信をもらうことと返信することの両方が重要です」(山谷氏)

使用事例① スレッズでエンタメや広告を双方向に(株式会社GENEROSITY)

続いてスレッズの導入事例として、「株式会社GENEROSITY(以下「ジェネロシティ」) 代表取締役 西垣雄太氏が、スレッズを活用したエンタメの提供サービスの取り組みを紹介した。

ジェネロシティはリアル×デジタルに特化した「ブランドを愛したくなる体験」を提供する広告代理店。映像プロダクションも含め、グループ全体で約100名規模のスタッフがおり、うち約20~30名がエンジニアで、インハウスでのサービス開発を行い、ロレアルのイベントプロモーションや、アウディのコンセプトストアのデザイン・運営など、世界的なハイブランドや有名企業の事例を多く手掛けている。

株式会社GENEROSITY 代表取締役 西垣雄太氏

「オフラインとオンラインの制作機能を特化させていることが他社との差別化ポイントで、特にコロナ禍以降は、予約管理システムやユーザーIDの活用、SNS拡散を通したメディアエクスポージャーなどに注力しています。また、CGI制作チームや映像チームを活用し、マーケティング企画から実装までをワンストップで提供していることも特徴です」(西垣氏)

続いて西垣氏はInstagramとスレッズの違いについて解説。Instagramの機能には、写真や動画を投稿する「フィード」、短尺動画を投稿できる「リール」、24時間で消える「ストーリーズ」、リアルタイムで配信できる「ライブ配信」、そしてユーザー同士がやり取りする「DM」など、多彩な機能が備わっている。「私たちの視点から見ると、フィードはブランドや企業の“整えられたショーケース”のような存在です。投稿がアーカイブとして残るため、ブランドの世界観を継続的に構築する資産として機能します。リールは映像を通じて、ブランドの魅力をよりダイナミックに伝えたり、新たなトレンドを創出したりするための場です。ストーリーズは、ブランドのPRイベントや日常の一瞬など、“今この瞬間”を気軽に共有するためのカジュアルなタッチポイント。そしてライブ配信は、まさにイベントそのものであり、リアルタイムの熱量や臨場感をそのまま世界に届けられる強力なツールです」(西垣氏)

それに対してスレッズは、テキストがベースなので、トピックに興味を持ったファンコミュニティの中での会話が形成されやすい。より親密で参加型のSNSとしてのポジションであることから、今注目しているツールだという。「スレッズでは、オフラインとオンラインを伴った体験をうまく活用することで、リアルとバーチャルを往復する体験が作れます。また消費者が飽き飽きしている一方的な情報広告ではなく、双方的な共創へと広告をシフトしていけることを確信しています」(西垣氏)

スレッズが持つ「より親密で参加型なSNS」としてのポジション

スレッズ上でファンダム・推し活が伸びそうなカテゴリや試みの一例

その一例として西垣氏は、ジェネロシティがSUMMER SONIC 2025でスレッズ APIを活用した事例を詳細に紹介。「トピックウォール」機能で特定のトピックタグやキーワードに関連する投稿をステージのビジョンに表示したり、ファンがアーティストに質問を投げかけてアーティスト本人が回答する交流を実現。また、会場内のQRコードを読み取って特別なフレームで写真を撮り直接スレッズに投稿できる「シェアモーメント」機能や、スレッズを活用したブースをバックステージに設置しアーティストとファンの交流を促進する試みなどを紹介した。

西垣氏はスレッズの今後の可能性について、XRやAIを組み合わせたクリエイティブな表現、AIを活用したファンとアーティストの交流、メタのAIグラス(メタ レイバン/Meta Ray-Ban Display)との連携、インスタントウィンキャンペーン、ソーシャルリスニング、テレビ局やライブ配信との連携など、様々なアイデアを提示し、「まだ始まったばかりで可能性が無限大であり、メタ社と共に『One True Experience(唯一無二の体験)』を作っていきたい」と締めくくった。

使用事例② 顧客とつながる統合プラットフォームをスレッズで(Sprinklr Japan株式会社)

続いて登壇したのは、Sprinklr Japan株式会社(以下「スプリンクラー」)のシニア・サクセス・マネージャー、岩崎多聞氏。同社が提供する「Sprinklr」は、複数のソーシャルメディアを統合し、投稿・広告の運用からデータ分析までを一括管理できるシングルソースプラットフォーム。米国で開発され、日本国内ではスプリンクラー・ジャパンが販売、サポート、コンサルティングを手がけている。

Sprinklr Japan株式会社 シニア・サクセス・マネージャーの岩崎多聞氏

岩崎氏は過去20年間にわたり、3つの変化によって企業が消費者との関係を築くことが困難になっていると指摘。一つは、変化し続けるデジタルチャネル。SNSだけではなくLINEやフォーラムブログレビュー、ニュースレター、Podcastなど多種多様のタッチポイントがあり、受け取るデータ量が爆発的に増えている。

それに伴って起こっているのが、かつてない量の非構造化公開データの発生だ。「お客様同士がソーシャルメディアでつながり、顔は見えなくてもお互いを信頼している状態が当たり前になっています。ですからブランドがメディアプランに基づき、莫大な広告費を使って露出しても、SNSで誰かが否定的なコメントを出せば消費者が背を向けてしまいます。広告に置いても、会話の所有者がもうブランドではなくなっているという大変な時代になっています」(岩崎氏)

3つ目の変化がつながっているお客様の期待値の変化。「今のお客様は、パーソナライズされたいんです。なぜなら、SNSなどでは自分の特性を出してコミュニケーションしており、それが当たり前の感覚になっているからです。ですからブランドが例えば新色を出しても、それが自分に全く関係がないものだったら興味を持ちません。ですからその人に刺さるもの、共感するものとしてコミュニケーションする必要があります。昔は価格重視で安ければ購入してもらえましたが、今はエクスペリエンス重視。価格が高くても、エクスペリエンスさえ良ければ、買う時代になっています」。さらに求められているのが、課題の迅速な解決。店舗に問い合わせても即答されないとすぐに興味を失い、ソーシャルメディアを通して、顧客がブランドに直接問い合わせることが増えていると語った。

岩崎氏は、カスタマージャーニー(顧客が商品・サービスを認知してから購入、そして継続的な関係に至るまでの、一連の行動と心理の変化)の複雑化についても指摘。「マーケティング、販売、サービス、リテンションなど様々な段階があり、店舗、ビデオ、コミュニティ、メールなど多数のタッチポイントが存在するため、すべてを管理することがいよいよ困難になっています。企業は様々な便利なテクノロジーを持っているものの、それらが分断されていることでカオスが生じているのです」

カスタマージャーニーが複雑化し、企業は全てを管理することが困難になっている

岩崎氏はその解決策として、どのチャネルからのコミュニケーションも統合的に管理できるプラットフォームである「Sprinklr」を提案。「Sprinklrは顧客を知ってつながるための統合CXM(カスタマーエクスペリエンスマネジメント)プラットフォームです。顧客理解のためにさまざまなチャネルからデータを収集し、AIを使って分類・分析した後、パーソナライズされたコミュニケーション、広告配信、エンゲージメント、カスタマーサポートなどのアクションにつなげていきます。またスプリンクラーのAIは膨大なソーシャルメディアデータで学習しているため、非常に高性能であり、生成AIとの連携も可能です。世界の企業価値トップ10社中9社がSprinklrを利用し、150カ国の1200を超える企業がSprinklrで顧客満足度を改善しています。広告収益は年間約60億ドル(約8700億円)で、前年比26%と成長し続けています」(岩崎氏)

多くの上位企業がSprinklrを利用している

スプリンクラーはスレッズを展開しているメタ社のビジネスパートナーであり、メタのすべてのAPIとユースケースをサポートしている。このパートナーシップにより、最新のアルファ版・ベータ版APIへのアクセス権を持ち、新機能をいち早く取り入れることができるという。最後に岩崎氏は、スレッズとメタが提供しているメッセージアプリWhatsAppとの連携の可能性について言及。現在、スプリンクラーが展開しているWhatsAppへの統合広告、アウトバウンドマーケティング、会話型コマース、販売などのサービスをスレッズに置き換えられる可能性があるという。

2025年9月26日は、スレッズがモバイル端末における世界の日間アクティブユーザー数(DAU)でX(旧ツイッター)を上回ったことが、調査会社Similarwebのデータで明らかになった。今回の「Threads API Summit」で紹介された企業の活用事例はごく一部に過ぎないが、今後、さらに多様な用途へと広がっていく可能性を感じさせた。