ゆるブラック・ホワハラを防ぐ若手定着のポイントとは? リクルートMSメディア共有会
「早期離職」「ゆるブラック」「ホワイトハラスメント」「静かな退職」など、新たなキーワードが職場に広がっている。企業はハラスメント対策や残業削減に取り組んできたが、若手社員の側では「市場価値を高められるのか」「今の職場で成長できているのか」という不安が高まり、このギャップを埋めなければ早期離職は止まらない。株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(以下、リクルートMS)は、「新入社員意識調査2026」(新入社員対象)と「若手の離職実態調査2026」(社会人1~3年目対象)をもとに、若手が成長実感を得られる育成環境のあり方を解説する共有会を開催した。
新入社員の不安と成長への切迫感
リクルートMS調査から浮かび上がる2026年の新入社員像は、従来の傾向から一部変化が見られ、成長への願いの裏に潜む不安と焦りが、組織における育成のあり方を問い直す結果となった。新入社員の意識調査でまず注目すべき点は、「仕事・職場生活をするうえでの不安」において、「仕事についていけるか」が64.8%と、全項目中でも最高水準の選択率を示したことだ。
さらに、「失敗を恐れずにどんどん成長すること」を大切にしたいという声が過去最高の選択率を示した。また、複数のアンケートから見えるのが、例年よりも「成長」や「創造(昨年よりもポイントアップ)」を仕事上で重視する回答が目立つことだ。
この傾向について、同社サービス統括部 主任研究員の桑原正義氏は次のように指摘した。
「成長意欲の裏側に、不安と焦りが強く作用している構造が見て取れます。先行きの見えない時代への不安や、自分の仕事がAIに置き換わるのではないかという危機感、SNSを通じて同年代の成長を常に目撃する環境などが背景にあると考えられます」
「成長したい」という前向きな意識だけでなく、「成長しなければ」という気持ちが強いということだ。
職場への期待の変化「守られるだけでは不十分」
職場への期待については、「お互いに助け合う」という職場環境への期待が高い割合を占め、「ルールや決め事が明確」であることを求める声も過去最高を記録した。これは一見すると保守的に見えるかもしれない。しかし桑原氏は「コロナ禍では、守られる環境が重視されました。しかし現在は『守られるだけでは不安』『成長できる環境に身を置きたい』という意識へ転換しています」と分析した。
上司への期待も明確に変わった。「一人ひとりに対して丁寧に指導する」が首位となり、過去最高を記録。同時に、「言うべきことは言う指導」が3年連続で上昇している。
これらの調査結果から、桑原氏は「新入社員は『丁寧な指導』と『厳しい指導』の双方を求めており、基盤づくりと成長支援をセットで行う必要がある」と結論づけた。
育成施策の進化と新たな課題
続けて、「若手の離職実態調査」の結果も踏まえた分析結果が発表された。若手の離職調査でも、キーワードは「成長」そして「環境」だ。給与水準よりもむしろ、成長ややりがい、自分の能力が活かせるかが、課題感として強くなっている。「守られているだけでなく、成長できることが大事だ」という傾向は、新入社員調査と若手の離職調査の両方から見て取れる。若手は、自分の成長を実現してくれる職場や上司を期待しているのだ。
企業の新人育成施策は、この10年で大きく進化してきた。10年前には、OJT担当制度の導入や育成担当者の配置といった基盤整備が中心であった。その後、約5年前からはメンター制度の追加配置、パルスサーベイによるコンディション可視化、タイムリーな個別フォロー体制など、多面的な支援へと発展している。
こうした取り組みにより、不適切な労務管理による「メンタル不調」や「早期離職」といった問題は減少してきたと言える。しかし一方で、育成の最前線に立つ上司や先輩社員は、依然として困難な状況に置かれている。背景には、構造的に解決が難しい3つの壁が存在するという。
1. 世代間ギャップ
従来の指導方法が通用しにくく、工夫を凝らしても思うように伝わらないという悩みが生まれている。
2. コンプライアンス・パワハラ意識の高まり
「どこまで言ってよいのか」という迷いが指導の萎縮を招き、適切な関わりが難しくなっている。
3. 人手不足による多忙
業務量の増加により、育成に割ける時間が圧倒的に不足している。
これら3つの壁が重なることで、上司の心理には「新人に自分で頑張ってほしい」という期待と、「会社の施策で何とかして欲しい」という思いが同時に生じる。結果として、成長支援が前に進みにくい構造が生まれ、若手の成長を阻害するリスクが高まっているのだ。
今後求められる2つのアプローチ
若手の成長意識の高まりの背景には、不安と焦りがあることが分かった。その意識をしっかり受け止めて育成を進めるには、以下の2段階アプローチが求められる。
1. 安心環境の構築
いきなり成長を求めるのはプレッシャーとなる。まずは、失敗してもダメと思われない安心感や、上司との何でも話せる信頼関係など、心理的安全性を整えることが重要である。
2. 不安・焦りに応じた成長支援
安心の土台の上で、職場全体で支える成長支援へ移行する。上司だけに負担を集中させない仕組みづくりが不可欠である。
具体的な施策としては、以下の2点が示された。
1. 職場ぐるみの育成
上司だけではなく職場メンバー全体を巻き込んだ育成体制により、上司の負担軽減と新人の学習機会拡大が実現する。リクルートMSの支援実績においても、成長速度やチームワークの向上が確認されている。
2. アセスメントツールの活用
世代間ギャップや忙しさの中で新人の特徴を把握しづらいという課題に対しては、適性検査などの個人理解ツールやコンディションサーベイが有効である。新人は「理解されている」という安心感を得られ、上司は短時間で適切な関わり方のヒントを得ることができる。
アセスメントツールの活用について、同社測定技術研究所 主任研究員の松本洋平氏は次のように指摘した。
「新人を理解するには本人の性格や志向、モチベーション向上につながるヒントなどの事前情報が重要です。情報がないまま関わると、上司が的外れな対応をするリスクが高まり、新人も信頼できない相手には本心を話しません」
適性検査(SPI3 for Employees)で新人とメンターの相性を事前に判定し、最適な組み合わせを実現する企業もある。また、入社後のコンディション可視化ツール「インサイズ(INSIDES)」を導入した小売企業が、メンターの質向上と人事の迅速な対応を実現し、6カ月離職率をゼロにした事例も紹介された。
土台を整えて不安を取り除くのが大前提
若手の成長を支えるうえで欠かせないのは、まず「安心できる土壌」を整えることである。これは、育成される側と育成する側の双方を経験してきた、同社HRアセスメントソリューション統括部 研究員 辻真央氏が、強調したポイントだ。
辻氏は「新入社員にとって最も大切なのは、安心できる土壌です。この基盤がなければ、『怒られるかもしれない』『変に思われるかもしれない』という懸念が成長へのチャレンジを阻害してしまいます」と語る。不安を抱えたままでは、どれほど成長意欲があっても行動に移せず、結果として能力発揮の機会が失われてしまうという指摘だ。
さらに辻氏は、アセスメントツールの役割にも触れた。新人にとっては「自分が理解されている」という安心感につながり、上司や先輩からのアドバイスが受け取りやすくなる。一方、育成する側にとっても、新人の状態や特性が可視化されることで適切なフォローが可能となり、「見えない中での心配」が軽減される。
辻氏は「ツールは双方向の信頼構築を支える有効な手段なのです」とまとめ、安心の土台づくりとツール活用の相乗効果を強調した。










