約50%が新型コロナウイルスやインフル対策を「行っている」と回答。一方体調不良で無理をして出社した経験が「ある」人は80%以上。
中国武漢市から広がった新型コロナウイルスによる肺炎は世界中で7万人以上の感染者を出しており、今月13日には日本国内で初めて新型コロナウイルス感染者の死亡が確認された。日本感染症学会と日本環境感染学会は「市中において散発的な流行が起きていてもおかしくない状況である」と注意を呼びかけている。また、新型コロナウイルスに限らず例年通りインフルエンザやノロウイルスも蔓延し全国的にマスクが品薄になるなど、多くの人が感染症対策に敏感になっている。今後、日本では外国人が入国する機会も増えると予想されいるが、働き手は感染症対策についてどのように考えているのだろうか。
そこで、総合転職エージェントの株式会社ワークポート(所在地:東京都品川区)は、全国の転職希望者243人を対象に、「職場の感染症対策」についてアンケート調査を実施した。
更なる感染拡大が危惧されている新型コロナウイルス。アンケート結果から、企業は、安心して働ける職場環境づくりに早急に取り組む必要性があることみえてきた。
■会社での感染症対策
現在の会社(直近の会社)は感染症対策を行っているかを聞いたところ、「はい」と回答した人は46.5%、「わからない」と回答した人が13.2%、「いいえ」と回答した人が40.3%だった。
「はい」と回答した人にどのような対策が行われているか聞いたところ、ほとんどの働き手が「マスク着用の義務化」や「アルコール消毒液の設置」と回答。
「会社からマスクを1人20枚配布された」(20代・男性・接客販売)、「インフルエンザの予防接種が必須となり会社から補助費が出た」(30代・男性・教育)といった、企業側が働き手の感染症対策を促すために金銭的補助を行う取り組みも見られた。また、「リモートワークが推奨された」(40代・女性・管理)、「通勤ラッシュ時を避けて通勤するように指示された」(30代・男性・営業)といった、人との濃厚接触を避けるために一時的に働き方そのものを変更する動きのほか、医療や教育従事者からは「毎朝職員の検温を義務化」や「次亜塩素酸での消毒徹底」などの具体的な取り組みも挙がった。さらに、「社内で感染症対策についてのミーティングを行った」(30代・男性・システムエンジニア)、「社員向けの感染症対策研修が行われた」(30代・女性・医療福祉)といった、積極的に感染症対策についての話し合いや勉強の場を設ける企業のもあった。
一方で、半数以上は職場での感染症対策が行われていないと認識していることから、すでに企業間での対応に格差が出ているようだ。
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■90%以上が企業に感染症対策を「行ってほしい」と回答
企業には感染症対策を行ってほしいと思うか聞いたところ、「とても思う」が71.6%、「やや思う」が23%と、合わせて94.6%となり、「あまり思わない」が3.7%、「まったく思わない」1.6%と、合わせて5.3%となった。
働き手にとって生活時間の大部分を占める職場は集団感染が発生しやすい環境でもあるため、企業側の積極的な感染症対策の取り組みが期待されているのではないだろうか。
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■無理をして出社した経験「ある」が80%以上
体調が悪くても無理をして出社したことがあるかを聞いたところ、「ある」と回答した人が83.1%、「ない」と回答した人が16.9%だった。
体調が悪くても無理をして出社したことが「ある」人に理由を聞いたところ、以下のような意見がでた。
「ギリギリの人員でシフトを組んでいるため、自分が休むと本来休日である人が出勤することになり迷惑をかけるから」(20代・女性・接客販売)、「業務が属人化していて自分が休むと滞る業務があったから」(30代・男性・管理)、「開店作業が自分だけのシフトだったため」(20代・女性・接客販売)といった、人手不足や自身の業務を代わりに行える人がいなかったとする声が最も多く挙げられた。
特に、シフト制での勤務の場合は最少人数でシフトを組んでいることが多く、ひとりが欠勤すると仕事がストップしてしまうといった職場の実態がみえてきた。
また、「病気による有給取得が認められない職場だったため」(20代・男性・事務)、「体調不良での欠勤は人事考課に悪影響を及ぼすから」(40代・女性・事務)、「会社を休むことを上司に拒否されたため」(20代・男性・運輸交通)といった、体調不良で仕事を休めるシステムや環境が整っていないため、やむを得ず出勤しているようすもみられた。さらに、「仮病だと思われたくなかったため」(30代・女性・営業)、「休んでしまうと次の出勤時に気まずくなると感じたから」(20代・男性・建築土木)、「休んだら信用を失いそうだと思ったから」(20代・女性・クリエイター)といった、周囲の目や評価を気にして休むことを躊躇している人も少なからずいることがわかった。
■半数は38℃以上の高熱が出なければ出社すると回答
次に、平熱が36.0℃と仮定してどの程度の体調不良ならば会社を休む判断をするか聞いたところ、「38℃の高熱が出た」が53.5%と最多となった。次に多かった回答が「37℃の微熱が出た」が21%、「発熱していないが、悪寒や倦怠感がある」14.8%、「39℃以上の高熱が出た」5.8%、「休まない」4.9%と続いた。
60%以上が38℃以上の高熱が出なければ会社を休まない、またはそもそも会社を休まないと回答しており、80%以上が無理をして出社した経験があるという結果を裏付けている。
■60%以上が現在の会社は体調不良のときに仕事を休める環境で「ある」と回答
「現在の会社(直近の会社)は体調不良のときに仕事を休める環境か」を聞いたところ、「とてもそうである」が31.3%、「ややそうである」が32.9%と合わせて64.2%となり、「あまりそうではない」は26.3%、「まったくそうではない」が9.5%とする人は合わせて35.8%となった。
60%以上が体調不良で会社を休める環境だと回答している一方で、どの程度の体調不良ならば会社を休む判断をするかという質問では半数の働き手は高熱が出なければ休まないと回答している。
たとえ休める環境であったとしても前項で挙がったような理由から自己判断で出社してしまう働き手も多いようだ。また、体調不良で会社を休める環境ではないと感じている人が約40%という結果になり、職場での感染症の流行につながりかねない状況下で働く人も一定数いることがわかる。
新型コロナウイルスなどが危険視されているなか、企業側と働き手側双方の感染症に対する意識改革が必要となってくるのではないだろうか。
■ほぼ100%が体調不良なら会社を「休むべき」と回答。周りの目を気にする働き手も多いなかで意外な結果
ともに働く人が体調不良で仕事を休むことについてどう思うか聞いたところ、79.4%が「体調不良なら休むべき」と回答し、20.2%が「どちらかというと体調不良なら休むべき」と回答した。一方、「体調不良で休むべきではない」と回答した人は0.4%で243人中1人のみだった。
前項では体調不良でも無理をして出社すると回答した人が多くいるなかで、ほとんどの人はともに働く人が体調不良を理由に会社を休むことについて肯定的でありギャップが生じていることがわかる。
熱があっても無理をして出社した社員が実はインフルエンザを発症しており、そこから社内で感染が広がってしまったというケースなどもみられる。感染症が猛威をふるうなかで、改めて働き手一人ひとりが体調不良の際の適切な対応を考え直しているのかもしれない。
■個人的に行っている感染症対策
新型コロナウイルスの広がりにより、これまで以上に感染症対策を行う人が増えている。今回の調査で個人的に行っている感染症対策があるか聞いたところ、マスクの常時着用や手洗いうがいの徹底、アルコール消毒などが挙げられたほか、「知らない人との濃厚接触をできるだけ避けている」(20代・女性・クリエイター)、「マスクを4時間に1回取り替えている」(30代・男性・システムエンジニア)、「外出時はおにぎりやサンドイッチなどの手掴みで食べるものを食べないようにしている」(30代・女性・営業)など、できる限りウイルスへの感染を防ごうとする働き手の動きがみられた。
■まとめ
働き手にとって多くの時間を過ごす職場での感染症対策は個人の対策だけでは限界がある。本調査では体調不良でも無理をして出社した理由として、熱が出たとしても「そもそも会社を休むという概念がなかった」というような意見がみられ、感染症に対する予防意識には個人差があることがわかる。
多くの人がひとつの空間に集まる職場は、集団感染が起きやすい場であるといえる。
企業側は体調不良の際の対応に明確なルールを設けたり新たに対策を練ったりするなど、安心して働ける職場環境づくりに取り組む必要があるのではないだろうか。また、働き手側も個人でできる感染症対策を行ったり、自身が体調不良の際は周囲に移さないよう配慮したりするなど、職場で感染を拡大させないよう意識することが大切になってくる。
長期化が予想される新型コロナウイルスなどの感染症に対し、企業側も働き手側も今後適切な対応がとれるかが大きな課題となってきている。
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