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Amazonのビジネスカンファレンスで発覚! DXを成功させるキーとは

2023.08.10
オフィスのミカタ編集部

Amazonが提供する法人向けのEコマース事業「Amazonビジネス」は、2023年7月27日、4回目となるビジネスカンファレンス「Amazon Business Exchange 2023」を開催した。組織の経営・購買改革のリーダーが集い、ビジネス変革を議論する同イベントでは、4つのプログラムの中から、バックオフィスDXを推進する企業の購買改革のリーダーに、その進め方を聞くカスタマーパネルを紹介する。
(写真はビジネスカンファレンス「Amazon Business Exchange 2023」での一幕。一人おいて左から、大日本印刷株式会社 購買本部 購買管理部 副部長 上尾哲也氏、北海電気工事株式会社 企画部 部長代理 笹森貴恭氏、国立大学法人三重大学 財務部財務管理チーム 調達室 調達室長/業務運営DX作業部会 エキスパート部会員 平山亮氏)

パネラーは、印刷会社、電気工事会社、国立大学法人勤務の3人

「Amazon Business Exchange 2023」の2番目のプログラムとなるカスタマーパネル、「バックオフィスDX最前線~今から実現する業務改革の進め方~」では、大日本印刷株式会社、北海電気工事株式会社、国立大学法人三重大学という、異なる3業種の成功例が紹介された。

「大日本印刷株式会社は名前のとおり印刷会社だが、その足元ではさまざまなことを手掛けており、私の部署ではそれに関わる資材を購買させていただいている」(大日本印刷株式会社 購買本部 購買管理部 副部長 上尾哲也氏)。

「北海電気工事株式会社は北海道電力グループの一員として、電力流通設備の建設や再生エネルギー関連工事をしている。私が所属している企画部は、様々な経営諸課題に対し、部門を横断しながら活動を展開している部署であり、DX推進もその一つ」(北海電気工事株式会社 企画部 部長代理 笹森貴恭氏)。

「私は大学で調達業務をするかたわら、業務運営DX作業部会というワーキング(グループ)に所属し、大学内のDXの推進も行っている」(国立大学法人三重大学 財務部財務管理チーム 調達室 調達室長/業務運営DX作業部会 エキスパート部会員 平山亮氏)。

DXをする必要があった課題とは?

ここからは、前もって聞いていた質問にパネルで答えてもらい、それについて解説してもらうという方式で進んでいく。第一問目は、「DXをする必要があった課題とは?」

北海電気工事株式会社の笹森氏があげた課題は、「競争力の維持・強化」。


「デジタル技術の進展によりビジネス環境が大きく変化しており、競争力を維持するにはさまざまなデジタル情報を活用して、新たなサービスを創出したり、多様な顧客のニーズに対応することが重要。競合他社もDXへの取り組みが加速している中で、遅れをとらないために迅速な行動が要求されている」(笹森氏)

国立大学法人三重大学の平山氏があげた課題は「教員に寄り添う時間が足りない」ということ。

「この課題は国立大学法人全体に言えることでは。これからの時代は、事務スタッフも教員の教育活動の支援が大事な業務になってくるが、一方で、日々の通常業務も増加傾向にある。私が所属している調達室も大量の原料作成処理に追われているので、この業務量をいかに軽減できるかが、私の課題」(北海電気工事株式会社 笹森氏)。

大日本印刷株式会社の上尾氏があげた課題は「レガシーからの脱却」。

「われわれはブランドステートメントとして“未来の当たり前を作る”ということを掲げていて、DXが進んでいる企業というイメージを抱かれているが、購買本部の調達業務自体は、自前の古いシステムを使い、アナログでちょっと手間のかかる作業している。しかし調達購買部門の役割が大きく変わり、やることが多岐にわたっているため、ずっとやってきた方法を変え一歩を踏み出す必要がある」(大日本印刷株式会社 上尾氏)

その課題に対する解決方法は?

その課題に対する解決方法を、現場で使われていた資料をもとに解説してもらった。

北海電気工事株式会社では、最終的には企業価値の向上につなげていくことが、DXの取り組みのゴールだということを改めて明確化した上で進めていくことで「競争力の維持・強化」という課題に取り組んでいる。「まずステップ1では、いわゆるデジタル化から始めつつ、ステップ2で競争力をつけ、ステップ3で企業価値を向上させる、ステップバイステップで進めていくという方針を定めた」(北海電気工事株式会社 笹森氏)。

三重大学では、課題解決手段としてRPA(ロボティックプロセスオートメーション:パソコンで行っている事務作業を自動化できるソフトウェアロボット技術)を用いた。平山氏はプログラミングの知識は皆無だったが、「チャレンジしてみるとプログラミングのようにコードを覚える必要もなく、単に日々やっている業務を、RPAのソフトウェアからアクションを選択していくだけで、いつの間にかフローができていた」(平山氏)。それまで伝票作成処理は、システムに手入力でやっていたため、何十回も同じ情報を入れなければならないことも多かったが、必要最低限の情報だけExcelに入力すれば自動化できるようになった。2022年(令和4年)度の伝票の適用件数、4万件で、業務削減時間は2000時間以上の実績が見込まれている。

大日本印刷株式会社では、間接材DXを導入するための社内説明の資料を公開した。

「弊社では長く使ってきた自社開発のシステムがあったが、選びづらい、購買部門を全て経由するので時間がかかる、比較購買できないといったことが課題で、現場からも不満の声があがってきている。資料の右側にあるように、外部のカタログを使うことで品名情報の追加による利便性の向上や、登録依頼時の時間削減、請求から納品までのリードタイムの短縮、比較購買の実現による利便性の向上、購入単価ダウン、紙伝票の削減による作業軽減などができることを社内的に説明するところから取り組んだ」(大日本印刷株式会社 平山氏)

Amazonビジネスを一言であらわすと

「Amazonビジネスを一言であらわすと」という質問には、ユニークな回答が多かった。

「導入して3年半になるが、本当に『一番無駄がない』ということを実感している。ウェブで発注すれば請求書が一括で届くし、AmazonビジネスとRPAは親和性が高いと感じている。特にそれは、大学法人ではすごく有益。大学では研究予算の種類が多く、予算ごとに伝票を分類しなければならないので、予算が混在することなく伝票処理できるのは重要」(平山氏)

北海電気工事株式会社 笹森氏は「業務工数の大幅削減」。同社ではAmazonビジネス導入後に、業務フロー全体を書き出して実際に作業する時間をストップウォッチで一つ一つの計測し、導入後の削減効果を見える化する取り組みをした。

北海電気工事株式会社による、業務工数削減検証のモデル図

その結果、発注1件当たりの作業工程はこれまで20工程あったが、7工程まで減り、時間も1件あたり約20分から約4分と5分の1になった。年間ベースに換算すると相当し、そこに購買コストや配送料の低減を加えると年間最大800万ほどの負担減を見込んでいるという。

大日本印刷株式会社の上尾氏は「説明いらず」。導入してまだ3カ月だが、導入時、個人のアカウントで立替払い用に使用していた大日本印刷(DNP)関連の名義のアカウントが多数あることがわかった。それを公式アカウントに一本化すれば立替払いの作業も減ることになり、「導入しない理由がない」と歓迎されたという。

DXを成功させるキーとは

最後の質問は「DXを成功させるキー」。上尾氏は「危機感、数字、情熱」。笹尾氏は「目的の共有、スモールスタート、近道はない」、平山氏は「自立型DX人財の育成」をそれぞれあげて、その理由を熱く語ってカスタマーパネルを終えた。

平山氏による、「自立型」DX人財育成のイメージ図資料