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ゾンビ企業が 2011年度に次ぐ2番目の多さに|TDB「ゾンビ企業」の現状分析(2023年11月末時点の最新動向)

2024.01.22

実質的に経営がほぼ破たんしているにもかかわらず、金融機関や政府などの支援により市場から退出せずにとどまっている「ゾンビ企業」が、コロナ禍から増加しているという。これまで2022年7月、8月、12月、2023年1月と、ゾンビ企業の実態をレポートしてきた帝国データバンクが、最新動向をまとめた。
※ゾンビ企業の定義は、国際決済銀行(BIS)が定める「ゾンビ企業」の基準に準拠

ゾンビ企業率17.1%に急上昇、過去最大の上昇率

ゾンビ企業率17.1%に急上昇、過去最大の上昇率

帝国データバンクは、国際決済銀行(BIS)が定める「ゾンビ企業」の定義に基づき、2022年度のゾンビ企業率を算出したところ、17.1%にのぼることを明らかにした。

2007年度以降のゾンビ企業率の推移をみると、2019年度の10.0%から、コロナ禍で上昇傾向を示していることが分かる。2022年度の17.1%は過去10年間で最も高く、東日本大震災後の2012年度(17.0%)と同水準。この結果、日本企業全体の約6社に1社で“ゾンビ化”が進んでいるとの見方もできる。

収益力、借り入れ負担は依然厳しく、自己資本比率がさらに悪化

収益力、借り入れ負担は依然厳しく、自己資本比率がさらに悪化

続いて帝国データバンクは「第66版 全国企業財務諸表分析統計(帝国データバンク)」とゾンビ企業の財務状況を比較。

企業の収益力を示す「売上高経常利益率」をみると、2022年度のゾンビ企業平均は△4.04%で、全企業平均(2.75%)を6.79ポイント下回っている。さらに「有利子負債月商倍率」では、2022年度のゾンビ企業平均は9.87倍と、月商の約10倍の債務を抱えていることが分かる。

また、企業の安定性を示す「自己資本比率」をみると、2022年度のゾンビ企業平均は△5.36%となった。2021年度からさらに悪化しており、債務超過状態が続いている。全企業平均(28.29%)と比べると、ゾンビ企業は会社経営の安定性で大きく見劣りする状態にあることが分かる。

「経常赤字」「過剰債務」「債務超過」企業、4万1000社

「経常赤字」「過剰債務」「債務超過」企業、4万1000社

2022年度のゾンビ企業率17.1%を、帝国データバンクが保有する企業概要データベース「COSMOS2」収録の約147万社を母集団として当てはめると、2022年度のゾンビ企業数は約25万1000社と推計され、2011年度の約27万4000社に次いで2番目の推計社数(2010年度と同数)となった。

2022年度のゾンビ企業数を「収益力」「過剰債務」「資本力」の3項目から分析すると、収益力については、経常赤字企業は推計14万4000社で全体の57.4%にのぼる。過剰債務状況については、有利子負債が月商の8.5倍以上の企業が推計10万4000社で全体の41.5%。、資本力については、債務超過企業が推計9万5000社で全体の37.7%にのぼった。3項目すべてに該当する企業は推計4万1000社で、1年で推計8000社増加したことになる。

まとめ

帝国データバンクは政府が昨年11月に、金融機関による事業者支援の軸足を「コロナ禍の資金繰り支援」から「経営改善・事業再生支援」に移す姿勢を鮮明にしたことから、今後はこれまでの安易な返済猶予や借り換えを繰り返すことが事実上難しくなると予測している。物価高や人手不足、賃上げ等にともなうコスト増に苦しむ中小・零細企業には、厳しい状況が続きそうだ。

参考:金融庁事業者支援の促進及び金融の円滑化について