【ゾンビ企業に関するアンケート調査】36.2%が市場への悪影響「感じる」79.4%が「適正利益が取りにくい」と回答
東京商工リサーチは、財務面の定義でなく、一般的なイメージで語られる「ゾンビ企業」(不健全な経営にもかかわらず融資や補助・助成金によって市場からの退場を免れている企業)について、2月1~8日にインターネットによるアンケート調査(※有効回答4584社を集計・分析)を実施。それによると、いわゆる「ゾンビ企業」が市場環境を歪めていると感じる企業は36.2%で、3社に1社にのぼることがわかった。同社は「日本の名目GDPが世界4位に転落し、企業の生産性や稼ぐ力の向上が再びテーマに上がることが必至な状況下で、企業向け支援のあり方にも一石を投じそうだ」として、調査レポートを発表した。
※本調査では資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義
3社に1社が感じているゾンビ企業の悪影響
本調査ではまず、ゾンビ企業の自社業界への悪影響について聞いており「感じる」は36.2%(4152社中、1503社)「感じない」は63.8%(2649社)となっている。
さらに各回答を業種別で分析(中分類、回答母数10以上)。「感じる」では「政治・経済・文化団体」の69.5%(23社中、16社)が最多で、次いで「倉庫業」が66.6%(12社中、8社)。一方「感じない」では最多が「協同組合」の87.5%(24社中、21社)、次いで「電気機械器具製造業」が78.4%(93社中、73社)となった。
また、悪影響を「感じる」とした企業を対象とした「どのような点で市場環境が歪められていると感じるか」との問いでは、79.4%(1217社中、967社)が「ゾンビ企業が不当に安い単価で受注(販売)し、適正利益が取りにくい」と回答。「ゾンビ企業が業容よりも過大に人材を抱え、業界内の採用難に拍車をかけている(24.8%(302社))」「ゾンビ企業の幹部が業界団体で幅を利かせている(15.5%(189社))」が続いた。
各回答を産業別で分析した結果では「適正利益が取りにくい」は「不動産業」が55.1%と低位だったのに対し「運輸業」では95.3%にのぼっている。
31.2%が「融資や資金的支援がないと存続が難しい」
続いて本調査では、融資や補助・助成金への依存について尋ねている。これらがないと事業の継続が難しい状況であると「非常に感じる」との回答は10.7%(4584社中、491社)で「少し感じる」の20.5%(943社)を含めると、合計31.2%の企業が融資や資金的支援がないと存続が難しいと回答している。規模別では、大企業で「感じる」は18.4%(439社中、81社)なのに対し、中小企業では32.6%(4145社中、1353社)と10pt以上の差となった。
さらに本調査では、各回答を業種別で分析(中分類、回答母数10以上)。「感じる」のトップは「社会保険・社会福祉・介護事業」の68.1%(22社中、15社)「感じない」(全く感じない+あまり感じない)では「保険業」の100.0%(12社中、12社)が最多となった。
まとめ
本調査では「健全な経営状態ではないにもかかわらず、融資や補助・助成金などにより倒産や廃業を免れている企業」をゾンビ企業の定義としているが、同社は「ゾンビ企業の定義は様々で、ひとつの基準でゾンビ企業を切って捨てたり、支援の是非を問うことは難しい」としている。
また、本調査にて「全体から吸い上げて補助・助成金を配分するのではなく、吸い上げる税金を少なくするべき(電気機械器具卸売、資本金1億円未満)」との意見も寄せられたことに触れ「市場原理にどこまで介入するのが全体最適となるのか「ゾンビ企業論」は社会のあり方も問いかけている」とまとめた。
帝国データバンクが2024年1月に発表したゾンビ企業(※定義は国際決済銀行(BIS)が定める「ゾンビ企業」の基準に準拠)の最新動向では、該当する企業は2011年度に次ぐ2番目の多さという結果も出ている。今後も中小・零細企業には厳しい状況が続くと予想される中で、各種支援の是非の判断には、より慎重さが求められるのではないだろうか。
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