【消費者庁】内部通報制度に関する就労者1万人アンケート調査の結果を発表
消費者庁は公益通報者保護法に基づく内部通報制度(※)について、15歳から79歳の就労者1万人を対象にしたアンケート調査を実施。およそ半数が制度そのものを理解できていない現状を明らかにした。本調査は、制度についての理解度や勤務先における窓口設置の認知状況、通報に対する意識を把握し、事業者の内部通報制度の実効性向上に向けた施策の参考とすることを目的に実施されたもの。調査結果の概要について紹介する。
※従業員等から勤務先の法令違反に関する相談・通報を受付け、調査を行い、是正する制度で、従業員数300人以下の事業者には努力義務がある
調査概要
調査時期:2023年11月
調査方法:インターネット調査
調査対象:常時使用する従業員が3名以上の事業者(公的機関を含む)に勤務する全国の15~79歳の就業者で、有効回答10000人。回答者の年齢層・勤務先地域は、総務省統計局の「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果」の構成比に合わせた。回答者の勤務先の従業員規模については、「従業員数300人以下」と「従業員数300人超」がほぼ同数となるように割り付けている。
内部通報制度の理解度「知らない」36.5%
本調査ではまず、内部通報制度の理解度について調査。「よく知っている(11.9%)」「ある程度知っている(26.7%)」「名前は聞いたことがある(24.9%)」「知らない(36.5%)」との回答になっている。
従業員規模別でみると、3人以上50人以下の企業では「名前は聞いたことがある(27.4%)」「知らない(49.0%)」と、約8割が理解していないことがわかった。一方で、5001人以上の企業では「よく知っている(19.9%)」「ある程度知っている(32.4%)」となっており、企業規模によって理解度に大きな差が出ている様子がうかがえる。
消費者庁によると、勤務先で通報を理由とする解雇等の不利益取扱いが禁止されていることを知っている人は、36.6%に。制度を「よく知っている」と回答した人が知ったきっかけは「勤務先等における研修・周知」が最多であった。
調査の結果からは、内部通報制度の理解度が高いほど、勤務先で重大な法令違反を目撃した場合の通報意欲が高くなる傾向も読み取れる。制度を「よく知っている」人は「相談・通報する」が53.7%と半数を超えるのに対して、制度を「知らない」人は「相談・通報する」がわずか9.2%となっている。
内部通報窓口「設置されているかわからない」約半数に
消費者庁は続いて、内部通報窓口の設置状況と認知度を調査。「設置されていることを知っている(30.2%)」「設置されていないことを知っている(20.5%)」「設置されているかわからない(49.2%)」との回答結果を公表した。
本調査では、勤務先で重大な法令違反を目撃しても相談・通報しない理由として「誰に相談・通報したらよいか分からないから」とする人が最も多いことから、窓口設置を周知することの重要性がわかる。なお、勤務先の窓口設置を知ったきっかけは「社内研修・説明会」が最多の59.3%であった。
内部通報の経験、制度の認知度により約10倍に
消費者庁によると、内部通報制度の理解度が通報経験に大きく影響しているという。制度を「知らない」とする人では通報経験が1.8%であるのに対して、制度を「よく知っている」とする人は18.3%と、約10倍に。また、目撃度にも大きな違いが出ており、勤務先において「法令違反行為や内部規程違反などを目撃したことはない」とする人は、制度を「知らない」人では70.6%だが、制度を「よく知っている」とする人では34.4%と約半数になっている。
また、消費者庁は「通報しやすい先」について、年代や制度の理解度で違いが見られる点についても報告。全体で最も多いのは「勤務先」となっているが、若い世代では「インターネット上のウェブサイト」を選択する比率が高く、15歳以上50歳未満と60歳以上では約2倍ほどの差があった。制度について「知らない」とする人も「インターネット上のウェブサイト」を選択する比率が高い。制度を「よく知っている」人ではわずか5.5%であるのに対して「知らない」人では22.2%と約4倍となった。