【全国企業倒産集計2024年2月報】企業倒産は22カ月連続で前年同月を上回る734件に 2月としては過去10年で最多
帝国データバンク(以下:TDB)は、2024年2月の企業倒産件数(負債1000万円以上の法的整理が対象)について集計し、分析。倒産件数は734件(前年同月574件、27.9%増)と、22カ月連続で前年同月を上回ったことを明らかにした。ここでは分析結果の概要をお伝えする。
調査概要
集計期間:2024年2月1日~2月29日
発表日:2024年3月8日
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
集計機関:株式会社帝国データバンク
出典元:倒産集計一覧(帝国データバンク)
7業種中5業種で前年同月を上回る、『製造業』は過去最長の増加期間
TDBによると、業種別では7業種中5業種で前年同月を上回っている。最も多いのは『サービス業(前年同月134件→165件、23.1%増)』で、次いで『小売業(同127件→164件、29.1%増)』『建設業(同111件→145件、30.6%増)』が続いた。増加率でみると『製造業(同49件→88件、79.6%増)』が最も高く、12カ月連続で前年同月を上回り過去最長に並んだ。『卸売業(同54件→93件、72.2%増)』は、2000年以降初めて70%超えの大幅増加となった。
さらに業種を細かくみると『小売業』では食品スーパーなど「飲食料品小売(前年同月19件→27件)」が1.4倍に増加。『建設業』ではとび工事など「職別工事(同42件→70件)」の増加が目立った。『製造業』では「出版・印刷・同関連産業(同5件→10件)」が前年同月から2倍に増加している。
倒産主因『不況型倒産』は596件、22カ月連続で前年同月を上回る
また、主因別では「販売不振」が583件(前年同月434件、34.3%増)で最も多く、全体の79.4%(対前年同月3.8ポイント増)を占めていることがわかった。内訳を業種別にみると「小売業(前年同月101件→138件、36.6%増)」が最も多く、次いで「サービス業(同99件→136件、37.4%増)」となっている。
なお「業界不振(同5件→6件、20.0%増)」などを含めた『不況型倒産』の合計は596件(同451件、32.2%増)となり、22カ月連続で前年同月を上回った。
TDBは「放漫経営(前年同月5件→12件、140.0%増)」が倍増した点にも注目。そのほか「設備投資の失敗(同0件→10件)」が、2月としては2009年(11件)以来、15年ぶりに2ケタの件数となったこと「その他の経営計画の失敗(同18件→23件、27.8%増)」が4カ月連続で前年同月を上回ったことも報告している。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
倒産態様『清算型』は712件、「特別清算」は3カ月連続で前年同月を上回る
倒産態様別の分析では『清算型』倒産は712件(前年同月561件、26.9%増)となり、全体の97.0%(対前年同月0.7ポイント減)を占めた。『再生型』倒産は22件(同13件、69.2%増)発生し、2カ月連続で20件台に。
『清算型』で最も多かったのは「破産」で687件(前年同月539件、27.5%増)となり、5カ月連続で前年同月を20%上回る水準だった。また「特別清算」は25件(同22件、13.6%増)発生し、3カ月連続で前年同月を上回っている。
『再生型』では「民事再生法」が22件(前年同月13件、69.2%増)発生。このうち法人が12件、個人が10件となった。
負債額規模別「5000万円未満」が最多 業歴別最多は「30年以上」
TDBによると、負債額規模別では「5000万円未満」が418件(前年同月350件、19.4%増)で最多となり「5億円未満」が152件(同101件、50.5%増)で続いている。また「100億円以上」が2件(同1件、100.0%増)と、4カ月ぶりに発生した。
資本金規模別にみると『個人+1000万円未満』の倒産が512件(前年同月404件、26.7%増)となり、全体の69.8%を占めている。
また、業歴別では「30年以上」が251件(前年同月193件、30.1%増)で最も多く、全体の34.2%(対前年同月0.6ポイント増)を占めたこともわかった。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は15件(同3件、400.0%増)発生し、7カ月連続で前年同月を上回っている。
地域別『東北』が大幅増加 39都道府県で2022年度超
地域別では、9地域中8地域で前年同月を上回った。最も増加率が高かったのは『東北(前年同月34件→59件、73.5%増)』で、4カ月連続で50%超えの大幅増加となった。次いで『中国(同22件→35件、59.1%増)』が続き、TDBは「広島(同11件→19件)」の増加が目立った点に注目した。
件数別では『関東(前年同月199件→246件、23.6%増)』がトップ。「東京(同96件→119件)」は13カ月連続で前年同月を上回った。『北陸(同21件→30件、42.9%増)』は「石川」が1件から8件と大幅に増加。『九州(同46件→69件、50.0%増)』は、2月としては、2009年(73件)以来の水準となっている。
TDBによると、2023年4月-2024年2月の累計では、39都道府県が2022年度の件数を超えた。
まとめ
2024年2月の企業倒産は734件発生し、前年同月(574件)を27.9%(160件)上回った。TDBは注目の倒産動向として「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」「人手不足倒産」「後継者難倒産」「物価高(インフレ)倒産」などを挙げている。今後の見通しとしては、例年3月は2月よりも倒産が増えることから、今年も800件前後が見込まれるとし、2023年度はコロナ禍直前の2019年度(8480件)の水準を上回ると予測。今後の発生状況次第で、1万件突破も視野に入るとの見方を示した。
また、負債数十億円クラスの倒産が各地で目立ち始めていることから、今後は倒産件数とともに「負債総額の増加」を注視する必要があるとしている。負債額の増加は、倒産企業に対する融資金の焦げ付きを通じて、金融機関の与信費用の増加につながる。TDBによれば、金融機関が「優良先」として融資していた先で粉飾決算が発覚し「突然死」する案件も昨年来相次いでおり、先行きへの警戒感は強いという。
さらに「力強い賃上げ」に、対応できない中小企業が一定数出てくるとの予測から、来年度以降、各種コスト増に耐えかねて「あきらめ倒産」や「あきらめ廃業」が続出するおそれが十分あるとの懸念を示した。