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正社員採用予定が3年ぶりに低下【2024年度の雇用動向に関する企業の意識調査】

2024.03.22

帝国データバンク(以下:TDB)は、2024年度の雇用動向(採用)に関する企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2024年2月調査とともに行ったもの。ここでは調査結果の概要を紹介する。

調査実施の背景

TDBによると、2023年の平均有効求人倍率は、社会・経済活動が新型コロナ禍から回復したことにともない、前年(1.28倍)から0.03ポイント増の1.31倍と2年連続で上昇。原材料価格の高騰などの影響もありコロナ前(2019年、1.60倍)に比べると十分に回復している状態とはいえないが、大きな落ち込みもなく推移しているという。また、TDBが実施した調査では、2024年2月における人手不足企業の割合は「正社員」が18カ月連続で5割、非正社員は3割と、いずれも高水準で推移していることが明らかになっている。TDBは、物価の上昇と人手不足の状況がさらに長期化すれば、企業は厳しい判断を迫られることになると予測されることから、本調査を実施した。

調査概要

調査期間:2024年2月15日~2月29日
調査対象:全国2万7443社
有効回答企業数:1万1267社(回答率41.1%)
調査機関:株式会社帝国データバンク
出典元:2024年度の雇用動向に関する企業の意識調査(帝国データバンク)

正社員の採用予定は3年連続で6割超えも3年ぶりに低下

正社員の採用予定は3年連続で6割超えも3年ぶりに低下

TDBは、2024年度(2024年4月~2025年3月入社)の正社員の採用状況について尋ねた。その結果『採用予定がある(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)』と考える企業は前回調査(2023年2月実施)から1.5ポイント減の61.5%となり、3年連続で6割を超えたものの、3年ぶりに前年を下回った。

また、採用予定がある企業の内訳は、採用人数が「増加する」企業が同2.0ポイント減の23.7%だった一方「減少する」企業は同1.5ポイント増の8.6%となり、雇用動向は前年度までの勢いがやや鈍化していることが読み取れる。

<規模別>
規模別に正社員の『採用予定がある』割合をみると「大企業」は84.9%と全体(61.5%)を大幅に上回っている。一方で「中小企業」は57.5%、うち「小規模企業」は39.9%となり、企業規模が小さいほど割合が低くなる傾向がみられる。

<業界別>
業界別の正社員の『採用予定がある』割合は「2024年問題」が懸念されている『運輸・倉庫』が69.7%で最も高く、同様に人手不足が深刻化している『建設』のほか『サービス』(ともに66.6%)も7割近くで続いている。

<業種別>
さらに細かい業種でみると、コロナの落ち着きによる人流の増加やインバウンドの好調で人手不足感が高まる「旅館・ホテル」が8割に。「2024年問題」が懸念される「医療・福祉・保健衛生(79.2%)」や「人材派遣・紹介(78.0%)」も8割に迫り、ITエンジニア不足が顕著な「情報サービス(73.3%)」も7割を超えた。また、「人材派遣・紹介」では採用が「増加する」企業は4割を超えている。

非正社員の採用予定がある企業は3年ぶりに低下し45.9%に

非正社員の採用予定がある企業は3年ぶりに低下し45.9%に

TDBは続いて、2024年度(2024年4月~2025年3月入社)の非正社員の採用状況について尋ねた。その結果『採用予定がある(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)』企業は45.9%(前年度比1.4ポイント減)と3年ぶりに低下したことがわかっている。

TDBによると、コロナ前の2018年度に52.4%の高い水準にあったが、2021年度には36.8%にまで低下。その後は需要の回復とともに上向いてきたというが、ここにきてペースダウンしている。

一方『採用予定はない』企業は同1.2ポイント増の40.4%となり、2年ぶりに4割を超えた。

<規模・業界別>
規模別に非正社員の『採用予定がある』割合をみると、正社員と同様に企業規模が小さいほど割合が低い。業界別では、『運輸・倉庫(54.7%)』が最も高く『サービス(54.0%)』『金融(52.6%)』なども5割台で続いている。

<業種別>
細かい業種別では「飲食店(88.1%)」や「旅館・ホテル(84.2%)」といった個人消費関連の業種で『採用予定がある』割合が高い傾向となっていることがわかった。

なかでも「飲食店」では採用人数が「増加する」企業が38.5%と、全体(11.9%)を26.6ポイント上回った。TDBは、割合は前年より低下したものの、インバウンドを含め人流の増加への対応で、採用が活発となっているとの見方を示した。

多様な人材の採用を強化予定の企業が約4割

多様な人材の採用を強化予定の企業が約4割

TDBは、将来的な労働力不足に対して多様な人材の活躍が期待されるなか、今後の「外国人」「高齢者」「女性」「障害者」の雇用および採用状況について尋ねている。その結果、いずれかの人材について『採用予定がある』企業は78.4%だった。なかでも「採用を拡大」する予定の企業は37.7%と、4割近くの企業で多様な人材の採用を強化する動きがみられた。

『採用予定がある』について人材別にみると「女性」は72.6%で最も高く「高齢者」が50.2%で続いた。「外国人(31.6%)」および「障害者(30.4%)」は3割台に。また、「採用を拡大」と回答した企業についても「女性(19.4%)」が最も高かった。「外国人(16.7%)」および「障害者(13.8%)」の割合は「高齢者(10.9%)」を上回り、特に「外国人」は「採用を拡大」する企業の割合が「変わらない」を上回っていることも明らかになった。

まとめ

TDBは本調査結果を受けて「今後、企業業績や収益性の良し悪しによって、人手不足の状況に対して採用の可否が分かれる状態が予想されている。こうしたなか、多様な人材の採用のほか、各種コストの上昇分の販売価格やサービス料金への十分な転嫁も必要不可欠と言える。外国人などの雇用に関する規制緩和や補助金制度などの拡充に加え、中小企業の価格転嫁を支援する制度のさらなる強化など多岐にわたる公的支援が求められよう」とコメントした。

TDBの調査では、2024年2月における人手不足企業の割合は「正社員」が18カ月連続で5割、非正社員は3割と、いずれも高水準で推移している。人手不足の長期化を防がなければ、企業はより苦しい状況を迎えることになるだろう。

TDBがコメントするように、春闘においても注目されている「価格交渉・転嫁対策」はひとつのキーと言える。中小企業がどこまで適正な価格転嫁、賃上げを実施できるかどうか、今後も注視したい。