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コロナ融資の返済に13%の企業が不安を抱いていることが判明【新型コロナ関連融資に関する企業の意識調査(2024年2月)】

2024.03.29

帝国データバンク(TDB)は、TDB景気動向調査2024年2月調査とともに行った「新型コロナ関連融資に関する企業の意識調査(2024年2月)」の調査結果を発表した。ここでは調査結果の概要をお伝えする。

調査実施の背景

政府系金融機関と民間金融機関によるコロナ関連融資制度は新型コロナウイルスの感染拡大により業績が悪化した中小企業を支援するため、2020年から実施された。実質無利子・無担保で行われた「ゼロゼロ融資」は、2024年4月に最後の返済ピークを迎える。今後、政府は事業再生や経営改善に政策を転換していくとみられている。しかし、人手不足や物価高が続くなか、マイナス金利政策が解除されるなど、企業を取り巻く事業環境は大きな転換期にさしかかっている。

そこで、TDBは、新型コロナ関連融資に関する現在の状況や返済見通しなどについて調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2024年2月調査とともに行われたもの。新型コロナ関連融資に関する調査は、2022年2月、8月、2023年2月、8月に続いて5回目となる。

参考:金融政策決定会合における主な意見 (2024年3月18、19日開催分)(日本銀行)

調査概要

調査期間:2024年2月15日~2月29日
調査対象:全国2万7443社
有効回答企業数:1万1267社(回答率41.1%)
調査機関:株式会社帝国データバンク
出典元:新型コロナ関連融資に関する企業の意識調査(2024年2月)(帝国データバンク)

新型コロナ関連融資「未返済や今後返済開始」が大きく減少

新型コロナ関連融資「未返済や今後返済開始」が大きく減少

TDBによると、新型コロナ関連融資について「現在借りている」企業は41.9%となっている。「すでに全額返済」は11.4%となり、2022年2月に調査を開始してから初めて2桁台に。

また「現在借りている」企業のうち、2024年2月時点で返済が「3割未満」の企業は41.1%で「未返済や今後返済開始」の企業は10.5%。前回調査から7ポイント以上の減少となり、新型コロナ関連融資の返済が着実に進んでいる実態が明らかとなった。

「5割以上」を返済している企業は4.8ポイント増加の29.5%で「3割〜5割未満」を返済している企業は2.9ポイント増加の18.6%であった。

続いてTDBは「現在借りている」企業に対して、返済開始時期について尋ねた。その結果、88.0%が「すでに返済開始」と回答した。

また、新たに返済開始を迎える企業では「2024年6月末までに返済が始まる」が5.1%で「2024年7月以降に返済が始まる」が4.8%となった。

※『すでに返済開始』は、「条件通り返済している」「返済額の減額など条件緩和を受けながら返済している」「返済が滞っている(返済猶予を含む)」「信用保証協会が代位弁済した(一部自力返済を含む)」の合計

借入企業の1割超が今後の返済に不安

借入企業の1割超が今後の返済に不安

TDBが「現在借りている」企業に対して今後の返済見通しを尋ねたところ、85.0%は「条件通り、全額返済できる」と考えていることがわかった。

一方で返済に不安を抱いている企業は13.0%と1割を超えている。その内訳については「返済が遅れる恐れがある(5.0%)」や「金利減免や返済額の減額・猶予など条件緩和を受けないと返済は難しい(5.7%)」「返済のめどが立たないが、事業は継続できる(1.5%)」「返済のめどが立たず、事業を継続できなくなる恐れがある(0.7%)」となっている。

返済に不安感を抱く企業の割合を業種別でみると、コスト高に直面する「飲食料品小売」が32.3%で最も高い。さらに、中古自動車小売を含む「自動車・同部品小売(2023年2月時点14.9%→2023年8月時点9.3%→2024年2月時点25.4%)」が、急増している。また、「家具類小売(2023年2月時点0.0%→2023年8月時点26.7%→2024年2月時点25.0%)」も4社に1社の水準となっている。

一方で、新型コロナによる影響を大きく受けた「飲食店」は、前回より7.4ポイント減少。また「旅館・ホテル」は22.2%となり、低下傾向が続いている。

さらにTDBは、現時点で、自社における経営上の懸念材料について尋ねた。その結果「人手不足(53.2%)」「仕入価格の高騰(48.0%)」「人件費の高騰(40.2%)」が4割を超え、上位となった。

まとめ

TDBによると、国内景気は小幅ながら悪化傾向が続いているという。非伝統的な金融政策であるマイナス金利政策は解除され、経済の正常化に向けた動きが一段と加速。

こうした中、新型コロナ関連融資の返済も着実に進展していることが調査結果からもわかる。今後の返済に不安を感じている企業は1割を超えており、とりわけ「飲食料品小売」で高い水準が続くなど、業種による差異がよりはっきりと顕在化した。

TDBはこの実態について「返済に関して金融機関への相談が遅れたことにより、事業継続を断念する動きもみられる。企業だけでなく、行政府や金融機関によるいっそうの支援が重要となるだろう」とコメントした。