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2023年度倒産件数が9年ぶり高水準の8881件に 過去30年で最も高い増加率を記録

2024.04.09

帝国データバンク(以下:TDB)は、2023年度の企業倒産件数(負債1000万円以上の法的整理が対象)について集計し、分析。倒産件数は前年比30.6%増の8881件で、負債総額は2兆4344億7400万円となったことを明らかにした。ここでは分析結果の概要をお伝えする。

調査概要

集計期間:2023年4月1日~2024年3月31日
発表日:2024年4月8日
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
集計機関:株式会社帝国データバンク
出典元:倒産集計 2023年報 2023年(令和5年)1月1日〜12月31日(株式会社帝国データバンク)

2023年度倒産集計概況

2023年度倒産集計概況

TDBによると、2023年度の倒産件数は8881件(前年度6799件、30.6%増)と、前年度から2082件増加。2年連続で前年度を上回り、2014年度(9044件)に迫る9年ぶりの高水準となったことが明らかになった。前年度からの増加率は30.6%で、過去30年で最も高い。

負債総額は2兆4344億7400万円(前年度2兆3385億9100万円、4.1%増)。パナソニック液晶ディスプレイ株式会社やユニゾホールディングス株式会社など、負債100億円以上の大型倒産が19件(同12件)発生し、10年ぶりに2年連続で2兆円を超えたことが明らかになっている。

全7業種が2年連続の前年比増「飲食店」は2000年度以降で最多

全7業種が2年連続の前年比増「飲食店」は2000年度以降で最多

TDBの分析によると、業種別では全7業種において2年連続で前年度を上回ったことが明らかになっている。上位には『サービス業(前年度1699件→2187件、28.7%増)』『小売業(同1315件→1874件、42.5%増)』『建設業(同1291件→1749件、35.5%増)』が並んだ。最多となった『サービス業』では2011年度(2193件)以来12年ぶりに2000件を超える倒産件数になっている。

TDBは、2010年度(455件)以来13年ぶりに450件を上回った『運輸・通信業(同371件→456件、22.9%増)』に着目。ドライバー不足や燃料高に直面している「道路貨物運送」(同256件→317件)の大幅増も影響したとみている。

TDBは本調査結果レポートで、2000年度以降で最多となった『小売業』の「飲食店」(前年度514件→802件)や、2013年度(785件)以来の水準となった『建設業』の「職別工事」(同553件→806件)についても触れた。

主因別最多は「販売不振」全体の約8割に

主因別最多は「販売不振」全体の約8割に

TDBによれば、主因別の最多は「販売不振」の7027件(前年度5148件、36.5%増)で、全体の79.1%(対前年度3.4ポイント増)を占めたという。「売掛金回収難」(前年度30件→44件、46.7%増)などを含めた『不況型倒産(※)』の合計が7155件(同5249件、36.3%増)となり、前年度からの増加率は2000年度以降で最も高くなった。

また「その他の経営計画の失敗(前年度262件→312件、19.1%増)」は4年ぶりに前年度を上回り「経営者の病気、死亡(同277件→285件、2.9%増)」は、2000年度以降で最多だった前年度を超え、最多を更新している。

※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

倒産態様別「破産」は8333件で9年ぶりの高水準

倒産態様別「破産」は8333件で9年ぶりの高水準

続いてTDBは倒産態様別の分析結果を報告。『清算型』倒産の合計が8630件(前年度6590件、31.0%増)となり、全体の97.1%(対前年度0.2ポイント増)を占めたことを明らかにした。『再生型』倒産は251件(同209件、20.1%増)発生し、2年連続で前年度を上回っている。

なお『清算型』では「破産」が8333件(前年度6341件、31.4%増)で最多。2014年度(8440件)以来9年ぶりの高水準となった。また「特別清算」は297件(同249件、19.3%増)で、3年ぶりに前年度を上回った。

『再生型』では「民事再生法」が250件(前年度206件、21.4%増)発生し、個人事業主(154件)が2年連続で前年度を上回る結果となっている。

負債「5000万円未満」は5237件に「100億円以上」は過去10年で最多の19件

負債「5000万円未満」は5237件に「100億円以上」は過去10年で最多の19件

TDBの分析結果からは負債額「5000万円未満」の倒産が5237件(前年度3927件、33.4%増)で構成比59.0%(対前年度1.2ポイント増)となり、負債額規模別での最多となったことがわかる。「100億円以上」は19件(同12件、58.3%増)発生し、年度としては過去10年で最多であった。

また、資本金規模別では『1000万円未満(個人事業主含む)』の倒産が6169件(前年度4623件、33.4%増)発生しており、構成比69.5%と2000年度以降で最も大きかったことも明らかになった。

業歴別と地域別分析

業歴別と地域別分析

業歴別では「30年以上」が全体の31.9%(対前年度1.3ポイント減)を占める2836件(前年度2259件、25.5%増)で最多に。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は108件(同71件、52.1%増)発生し、2年連続で前年度を上回った。

また、業歴10年未満の『新興企業』は2702件(前年度2009件、34.5%増)と、12年ぶりに2700件を超える高水準になっている。

TDBは15年ぶりに全9地域で前年度を上回ったことも報告している。全地域でコロナ禍前の水準を超えており、中でも『東北』(前年度336件→493件、46.7%増)は、2010年度(553件)以来の高水準だった。

注目の倒産動向

注目の倒産動向

ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産
2023年度は699件発生し、前年度比54.3%増で過去最多を更新。実際の融資額が判明した約440社のゼロゼロ融資借入額の平均は約5800万円となり「不良債権(焦げ付き)」に相当するゼロゼロ融資喪失総額は推計で約823億2200万円にのぼったことが明らかになった。

人手不足倒産
2023年度は313件発生し、前年度比114.4%増で年間で初の300件台に。過去最多を大幅に更新した。業種別では『建設業(94件)』『サービス業(75件)『運輸・通信業(63件)』が上位に並んだ。

後継者難倒産
2023年度は586件発生、前年度比20.3%増で初の年間500件超えとなった。TDBは後継者難倒産のうち「経営者の病気・死亡」による倒産が、過去最高の22年度(47.8%)に比べると大幅に低下したことから、後継者不在を最後のきっかけとして、事業継続をあきらめるケースが増加していると指摘した。

物価高(インフレ)倒産
2023年度は837件発生し、前年度比80.8%増で過去最多を更新。業種別では『建設業(209件、前年度比2.2倍)』『小売業(120件、前年度比2.1倍)』『製造業(180件、前年度比1.9倍)』の増加が目立っている。

まとめ

TDBは今後の見通しとして「2024年度の倒産件数は1万件突破も視野に、引き続き増加が見込まれるが、今すぐ経済危機につながる状況にはない」との見方を示している。コロナ禍で事実上猶予されていた「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画(実抜計画)」の策定促進や、今後引き上げがあると予想される「短期プライムレート」などで大きな影響を受けるのは、低金利下におけるリスケ等の支援策を受けながらも収益改善が進まず、本業の利益で借入金の利払いができない状態に陥っている「ゾンビ企業」とみているからだ。

TDBはゾンビ企業の淘汰が進むことについて「産業の『新陳代謝』を進めるうえで必要なプロセスともいえる。むしろ、生産性の低いビジネスモデルや企業を温存させることによる弊害の方が問題だろう」とコメント。倒産には「悪」以外の側面もあると、認識し直すべきだと提言した。

参考:「再生支援の総合的対策」の公表および事業者支援の徹底等について(金融庁)