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資生堂、男性育休取得率増加 取得する上での課題と支援制度とは

2024.04.15
オフィスのミカタ編集部

株式会社資生堂は2023年末に国内資生堂グループ男性社員の育児休業取得率100%(※1)を達成したことを発表した。2014年に「資⽣堂ショック」と⼀部メディアで呼ばれ、社会で話題になった美容職社員の働き⽅改⾰にも注目が集まる中、今回の「男性社員の育児休業取得率100%」の持つ意味は大きそうだ。

※1: 男性社員の育児休業取得率は、「育児休業等の取得を開始した+資生堂独自の育児を目的とした休暇制度を利用した男性社員・契約社員の数」÷「配偶者が出産した男性社員・契約社員の数」×100で算出

男性の育休率24.2% 制度や周囲の理解得られず

株式会社資生堂(以下、資生堂)は、国内資生堂グループ男性社員の育児休業取得率100%を発表した。厚生労働省の調査によれば、2023年10月1日までの間に育児休業を開始した(申請者含む)男性がいた事業者の割合は24.2%(※2)。前年の18.9%に比べると取得率は向上しているものの、5割にも程遠い。資生堂の100%はまだまだ珍しいケースだ。

厚労省の調査では、男性(・正社員)が育児休業制度を利用しなかった理由として「収入を減らしたくない(41.4%)」「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから、または会社や上司、職場の育児休業取得への理解がなかったから(27.3%)」「会社で育児休業制度が整備されていなかったから(21.3%)」の順で多かった(※3)。制度が整っていないことや周りの理解を得られにくいことが男性の育休取得を妨げる一要因となっていることが考えられる。

※2 出典元:「令和4年度雇用均等基本調査」結果を公表します ~女性の管理職割合や育児休業取得率などに関する状況の公表~ p16(厚生労働省)
※3 出典元:育児・介護休業法の改正について(厚生労働省 雇用環境・均等局職業生活両立課)

男性育休取得率の増加 まずは環境構築から

2022年10月1日に改正された育児休業制度は、分割取得が可能になったことや1歳以降の延長について育休開始日を柔軟化、再取得に関しては特別な事情がある場合に限り再取得が可能になった(※3)。また育休とは別に「産後パパ育休」も取得可能になっている。

こうした中、資生堂は、男性が育休を取ることが当たり前となる風土の醸成と男性育休への理解を促進させる取り組みを実施。例えば、男性育休への理解促進するための動画配信、管理職向けイクボスセミナー(※4)。取得体験者による座談会などのイベントの開催や体験レポートの共有、子会社の事業所内保育サポートビジネスKODOMOLOGY株式会社(以下、KODOMOLOGY)を通じて新米パパ・ママに向けた体験型育児トレーニングの提供を行う。

※画像元:株式会社資生堂

あわせて、KODOMOLOGYでは2023年4月より、子育てする社員の保育ニーズに合わせて、乳幼児から小学生までを対象とする子育て支援サービス「KANGAROOM+(カンガルームプラス)」を開始。一時預かり(ベビーシッター事業)を中心に、小学校の長期休暇に対応したキッズプログラムや、産後の訪問育児サポートなどを提供し、子育て中の社員をサポートしているという。

※3 出典元:育児・介護休業法 改正ポイントのご案内令和4年4月1日から3段階で施行(厚生労働省)
※4 イクボスとは:部下の育休取得や短時間勤務などがあっても、業務を滞りなく進めるために業務効率を上げ、仕事と私生活を両立できるように配慮し、自らも仕事とプライベートを充実させている管理職
(出典元:【イクメンプロジェクト】男性の育休取得促進 研修資料

育児休業からの復職率は 92.3%に

出産後に復職する社員に対しても、育児と仕事の両立への不安を軽減するための「ウェルカムバックセミナー」などを実施。その結果、国内資生堂グループにおける育児休業からの復職率は 92.3%(※5)におよび、高い水準を維持し続けているという。他にも、フレックスタイム制度や在宅勤務(テレワーク)制度、パートタイム勤務オプション、独自の保育サービスや保育費・教育費の補助、男女ともに対象とする有給での育児を目的とした特別休暇(育児休暇)なども導入。家族とキャリアの両立を支援する取り組みで、すべての社員が自分らしく、それぞれのキャリアを自らがデザインすることのできる職場環境の実現を目指しているとした。

※5 復職率は、「当年度の育児休業からの復職者数」/「当年度の育児休業からの復職予定者数」×100で算出

まとめ

このニュースを読んで「大企業だからこそ、できたことでは……?」と思ったかもしれない。厚生労働省によれば男性の育休取得に関する中小企業への支援内容について、下記のように述べている(※6)。

・派遣等による代替要員確保や業務体制の整備等に関する事業主の取組への支援
・ハローワークにおける代替要員確保のための求人に対する積極的な支援
・わかりやすく活用しやすいポスター、リーフレットやパンフレット等の周知や環境整備に関する資料を国が提供
・事業主の取組への支援については、ノウハウが十分ではない中小企業からの相談対応や好事例の周知等も含めて行うこと

今回の事例を参考にしつつ、国の支援制度を活用しながら育休を取りやすい環境づくりに取り組む必要がある。また育休の取りやすい環境を作ることで、社内エンゲージメントが高まり、人材確保にもつながっていくだろう。

※6 出典元:育児・介護休業法の改正について(厚生労働省 雇用環境・均等局職業生活両立課)

【関連リンク】
・資生堂:「資⽣堂ショック」と呼ばれた美容職社員の働き⽅改⾰【前編】
・資生堂:「資⽣堂ショック」と呼ばれた美容職社員の働き⽅改⾰〜あれから10年〜 【後編】