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3社に2社が「賃上げ率5%」に届かず【<緊急調査>2024年度賃上げ実績と初任給の実態アンケート】

2024.04.19

帝国データバンク(以下:TDB)は、新年度の賃上げの実績および新入社員の初任給について企業へアンケートを行った。ここでは調査結果の概要を紹介する。

調査実施の背景

労働団体の連合が4月4日に発表した2024年春闘の第3回回答集計結果によると、全体の賃上げ率は平均で5.24%と33年ぶりの高水準となり、連合が掲げる「5%以上」の目標を超えたことが明らかになっている。

人手不足の深刻化や物価の高騰などに対して、より一層の賃上げが期待されるなかでスタートした新年度。大企業を中心に人材確保を目的とした初任給引き上げの動きも相次いでいる。一方、中小企業からは賃上げに対する厳しい声があがっており、政府・日銀が目指す「賃金と物価の好循環」が実現できるかが注目されている。そこで帝国データバンクは、本アンケート調査の実施に至った。

調査概要

調査期間:2024年4月5日~15日
有効回答企業数:1050社
調査方法:インターネット調査
調査機関:株式会社帝国データバンク
出典元:<緊急調査>2024年度賃上げ実績と初任給の実態アンケート(株式会社帝国データバンク)

3社に2社は「賃上げ率5%」に届かず 

3社に2社は「賃上げ率5%」に届かず 

TDBによると2024年4月の正社員給与の前年同月からの変化(見込み含む)について『賃上げ』する/した企業は77.0%となっている。内訳としては「3%増加(22.0%)」「5%増加(15.0%)」「2%増加(12.4%)」であった。

一方で『据え置き』は16.6%で『賃下げ』は0.6%であったことも報告されている。連合の目標である「賃上げ率5%以上」を実現した企業割合は26.5%にとどまった一方、5%未満は67.7%と3社に2社にのぼった。

また、規模別に『賃上げ』する/した企業の割合をみると「大企業(77.7%)」「中小企業(77.0%)」はほぼ同水準となっている。一方で、「小規模企業(65.2%)」は全体(77.0%)を11.8ポイント下回る結果となった。

新卒社員採用「大企業(76.2%)」「小規模企業(23.7%)」と二極化

新卒社員採用「大企業(76.2%)」「小規模企業(23.7%)」と二極化

また、TDBは2024年度入社における新卒社員の採用状況について調査しており『採用あり』は45.3%で『採用なし』は53.1%となったことを報告した。

規模別の『採用あり』の割合は「大企業(76.2%)」は全体(45.3%)を約30ポイント上回った一方で「中小企業(40.9%)」「小規模企業(23.7%)」は全体を大きく下回っている。

続いてTDBは、新卒社員の採用がある企業に対して、初任給の金額を尋ねた。その結果、上位は「20~24万円(57.4%)」「15~19万円(33.3%)」となり、初任給が『20万円未満』の企業の割合は35.2%と、3社に1社となった。

まとめ

本調査からは多くの企業が賃上げを実施することが明らかになっているが、賃上げ率が5%を下回る企業は3社に2社にのぼっている。TDBは中小企業では価格転嫁が十分にできないために、原資の確保が難しいことや資金的余裕が少ないことから、大企業並みの賃上げができていないという背景を指摘した。

賃上げ格差により、中小企業では人材確保がより難しくなる可能性がある。また、賃上げによる経済の好循環へも期待が薄まるだろう。TDBはこうした状況について「足元では円安の進行、エネルギー価格の上昇などコストアップにつながるリスクが高まっているが、中小企業はコストの上昇分を上手く見える化して価格改定の交渉を行うほか、自社商品の付加価値を上げるなど、価格転嫁を行いやすくする工夫が一策と言える。加えて、デジタル化・省人化を通して生産性の向上を図ることで賃上げ原資を確保するなど、さまざまな対策が必要となってくるであろう」とコメントした。