人手不足関連倒産、前年同期比110.7%増に TSR調査

株式会社東京商工リサーチ(以下:TSR)は、2024年1月-5月の全国企業倒産(負債1000万円以上)から「人手不足」関連倒産(求人難・従業員退職・人件費高騰)を抽出し、分析。「従業員退職」「求人難」の急増で初の100件超えとなった厳しい状況を明らかにした。
※後継者難は対象から除く
人手不足関連倒産は前年同期比110.7%増

TSRは、深刻な人手不足が企業活動の足かせになってきたと警鐘を鳴らす。2024年1月~5月の「人手不足」関連倒産は累計118件(前年同期比110.7%増)だった。調査を開始した2013年以降の1月~5月で最多であった2019年の65件を大きく上回り、初めての100件超えとなっている。
TSRの分析によれば、内訳は「求人難:50件(前年同期比127.2%増)」「人件費高騰:36件(同71.4%増)」「従業員退職:32件(同146.1%増)」で、すべての要因が過去最多を更新したという。
また、産業別では10産業のうち、卸売業、金融・保険業、情報通信業を除く7産業で前年同期を上回ったことが明らかに。最多は「サービス業他:38件(前年同期比153.3%増、前年同期15件)」で、3年連続で前年同期を上回っているという。次いで「建設業:30件(前年同期比150.0%増)」「運輸業:25件(同66.6%増)」と、2024年問題に直面する業種が続いており、建設業は前年同期比2.5倍増、運輸業は同1.6倍増と急増したことがわかった。
形態別にみると「破産:102件(前年同期比88.8%増)」が最多で、2年連続で前年同期を上回り、1-5月で初めて100件を超えている。
TSRは本結果について 「安定雇用と退職防止には、福利厚生と賃金の充実が必要だ。これを実現するには収益向上が前提だが、コロナ禍を経て大手企業と中小企業の格差は拡大しており、中小企業の人手不足の解消は容易ではない」との見解を示した。
出典元:2024年1-5月「人手不足」関連倒産 118件 「従業員退職」「求人難」の急増で初の100件超(株式会社東京商工リサーチ)
まとめ
TSRの発表により、人手不足関連の倒産が急増している実態が明らかになった。TSRは今後も人手不足関連倒産は増勢をたどると予測しているが、原材料、エネルギー価格などの上昇に加え、賃上げの影響も大きいだろう。賃上げの原資を確保できなければ、離職の要因となるほか、新たな人材確保においても障壁となる。かと言って無理に賃上げを行えば資金繰り悪化に直結する可能性も高い。
人手不足解消に求められる福利厚生と賃金の充実を実現できる中小企業は、どれほどあるだろうか。賃金引き上げに取り組む中小企業・小規模事業者に対しては、税制や各種補助金等での支援策がとられている。併せて参考にしていただきたい。
ビジネスQ&A賃金引上げに活用できる国の支援制度について教えてください。(J-Net21/独立行政法人中小企業基盤整備機構)